“サイレントキラー”高血圧に「まず測る」習慣づくり

5 月 26 日、「健康ハートの日“血圧測ろうぜ”キャンペーン」のプレス発表会が開催され、一般社団法人日本循環器協会、一般社団法人日本循環器学会、公益社団法人日本薬剤師会、一般社団法人日本保険薬局協会、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会、日本病院薬剤師会が参加した。7 月 1 日からの 2 カ月間、全国の薬局、ドラッグストア、病院などが連携し、血圧測定や循環器病予防の啓発活動を展開する。昨年は約 1 万 4 千拠点が参加したが、今年は全国 3 万拠点への拡大を目標に掲げる。
今回の発表会で繰り返し強調されたのが、「なぜ今、⾎圧なのか」という点だ。⾼⾎圧は、⾃覚症状がほとんどないまま進⾏し、⼼筋梗塞、脳卒中、⼼不全など命に関わる循環器病につながる。そのため“サイレントキラー”とも呼ばれている。⼀⽅で、⾎圧は⽇常的に測定できる数少ない健康指標でもあり、「測る」という⼩さな⾏動が、重⼤疾患の予防につながると期待されている。発表会では、「⾎圧 130mmHg 以上は注意が必要」という意識を地域住⺠へ広げていく重要性についても共有された。
⾼⾎圧というと「かなり⾼い数値になってから問題になる」というイメージを持つ⼈も多い。しかし、近年の⾼⾎圧治療ガイドラインでは、診察室⾎圧で 130/80mmHg 以上は“正常⾼値⾎圧”や“⾼値⾎圧”として注意が必要な⽔準とされており、早い段階から⽣活習慣を⾒直す重要性が指摘されている。特に循環器領域では、「130 を超えたら⼀度⽣活を⾒直す」という意識づけが、将来の⼼⾎管イベント予防につながるとされる。
⽇本循環器協会代表理事の⼩室⼀成⽒は、「循環器病は予防できる病気」と強調。循環器病は、⼼臓病や脳卒中などを含む疾患群で、国の循環器病対策推進基本計画でも重点領域として位置付けられている。⾼齢化が進む⽇本では、脳卒中が介護が必要となる主要原因の⼀つとなっているほか、⼥性の死亡原因でも循環器病の割合は⾼い。また、近年は「⼼不全パンデミック」と呼ばれるほど⼼不全患者が増加しており、社会課題として深刻化している。

その最⼤の危険因⼦の⼀つが⾼⾎圧だ。国内には約 4300 万⼈の⾼⾎圧患者がいるとされるが、未治療者や、治療中でも⼗分にコントロールできていない⼈は少なくない。発表会では、「⾎圧を測るだけで健康状態が“⾒える化”できる」という点が繰り返し語られた。
今年のキャンペーンでは、昨年に引き続き薬局やドラッグストア、病院など、⽣活動線上で⾃然に⾎圧測定へアクセスできる環境づくりを進める。買い物や通院のついでに⾎圧を測ることで、⾃⾝の健康状態に気づき、必要に応じて受診や⽣活改善につなげてもらう狙いだ。また、⼈気漫画とのコラボポスターなども展開し、“まず測ってみる”という⾏動を後押しする。
今年のキャンペーンでは、昨年に引き続き薬剤師関連 4 団体が参加。薬局、ドラッグストア、病院が⼀体となり、地域住⺠への啓発を進める。
⽇本薬剤師会の岩⽉進会⻑は、「⾎圧は⾝体侵襲なく、その場で数値として確認できる。セルフケアの⼊⼝として⾮常に優れている」と説明。「薬局本来の役割は“気づきの場”を提供すること」と強調し、 OTC 医薬品購⼊時や⽇常の健康相談を通じ、 継続的に地域住⺠へ声をかけていく重要性を語った。 薬局やドラッグストアは、病院のように“病気になってから⾏く場所”ではなく、⽇常⽣活の中で⾃然に⽴ち寄れる場所であることが⼤きな特徴だ。

⽇本チェーンドラッグストア協会の塚本厚志会⻑も、「攻めの予防医療」をキーワードに、⾎圧測定機会の拡⼤を訴えた。「⾎圧に触れる機会をどれだけ増やせるかが重要。測定が⾏動変容につながる」とし、ドラッグストア業界として 1 万店舗規模での参加を⽬指す⽅針を⽰した。また、「⾎圧は未来の病気を防ぎ、⾃分や家族の命を守る⾏動につながる」とし、健康寿命延伸やウェルビーイング社会への貢献を掲げた。

さらに、⽇本保険薬局協会の藤井江美会⻑は、「健康ハートの⽇は、⼼臓や⾎管の病気を予防する⼤切さを、⽣活習慣の⾒直しや早期発⾒・早期対応につなげる⼤変意義深い取り組み」と説明した。

⾼齢化が進む中で循環器疾患は依然として⽇本の主要な健康課題の⼀つである⼀⽅、「⽇々の⽣活習慣の積み重ねによって予防や改善が可能であり、⽇常の中での気づきと継続した⾏動が鍵になる」と強調した。その上で、「薬局は地域住⺠にとって⾝近な医療機関の⼀つとして、薬剤提供だけでなく、健康相談や服薬⽀援、⽣活習慣改善のアドバイスを通じて継続的に健康を⽀えている」と説明。健康サポート薬局やかかりつけ薬局として、地域で健康啓発活動を積極的に展開していると紹介した。特に、「処⽅箋がなくても気軽に⽴ち寄り、⾎圧を測定しながら薬剤師に相談できる薬局機能をさらに全国へ広げていきたい」と語った点は印象的だった。
また、今年から病院も活動を展開する。外来待合スペースでの⾎圧測定に加え、退院患者への家庭⾎圧測定指導なども想定されている。特に⼼不全患者は退院後の再⼊院リスクが⾼く、家庭での継続的な⾎圧管理が重要になるという。
発表会では、循環器病に関する知識を学ぶ「循環器病アドバイザー制度」や、薬剤師向けの「エキスパートアドバイザー制度」など、⼈材育成の取り組みについても紹介された。循環器病は⾼⾎圧だけでなく、⼼筋梗塞、不整脈、弁膜症、脳卒中、⼼不全など幅広い。患者ごとに背景も異なるため、薬剤師には“⼀⼈ひとりに合わせた⽀援”が求められているという。⾼⾎圧は症状がないまま進⾏する。しかし、その先には重⼤疾患が待っている可能性がある。だからこそ、「130mmHg を超えたら注意する」「まず⾎圧を測る」という意識を、地域全体へどう広げていくかが重要になる。
薬局、ドラッグストア、病院という⾝近な場所を通じた今回の取り組みは、治療中⼼から予防重視へとシフトする⽇本の医療において、新たな地域連携モデルとして注⽬されそうだ。

血圧測ろうぜ公式サイト:https://hakarouze.com/