
金切り声:金属を切る時に出る音のような、鋭くかん高い声。きいきい声。
私自身、自分の声は高い方だと思っていますので、患者さんと話す際は、地声より低く…と、心がけるようにしています。それはある方に言われた、「このアナウンサー、金切り声で気に障るんだよね。」という一言がきっかけでした。確かに、言われてみれば…。
かん高い声は、人(特に男性?)を不愉快にさせる事があり、怒っている、または急かされているように聞こえてしまうことがあるようです。
逆に、男性の低い声は、耳が遠くなってきたお年寄りには聞き取りにくいように感じます。以前、私の祖母が「同年代でいる時は、みんな耳が遠くなってきたから声も大きくて普通に会話が出来るのに、パパ(私の父)の声は聞こえにくいわ。何を言っているのか、わからない時がある」と話した事がありました。祖母は、男性の低い声が、聞き取りにくくなっていたようです。
投薬時、患者さんが聞こえにくいからと言って大きな声で話すと、周りに丸聞こえとなり、不快に思われる方もいらっしゃるでしょう。また、最近では新型コロナウイルス感染症の流行によって投薬台に仕切りが設けられ声を遮ってしまうため、お互いの声が聞こえづらいといったこともあるかもしれません。
声の大きさ、高さ、スピード…
聞こえ方は何を基準に判断すればいいのか、正直わかりません。ただ、相手を不愉快にさせてしまう話し方は避けたいものです。薬剤師は出来るだけ聞き取りやすく、こちらの意図がしっかり伝わるように相手に話しかけることが大切だと思います。
私が薬剤師になりたての時、投薬時、話しかけても頷くだけで、聞いているのか聞いていないのかもわからない患者さんがいました。何かを尋ねても頷くだけ。「あまり話しかけて欲しくないのかな?話したくないのかな?」と思いながら、「まっ、いつもと同じお薬だし大丈夫かな?」と、特に何も行動を変えることなく対応してしまいました。
その数ヶ月後、またその方の投薬にあたった際、「耳が不自由です。筆記で対応して下さい」というメモが薬歴に挟まれていました。そのメモを見た時の衝撃と自分の情けなさ。15年経った今でも私は忘れることが出来ません。「聞いているのか聞いていないのかわからない。」ではなく、聞こえていなかったのです。当時、そのメモを挟んだ先輩薬剤師に、なぜ聞こえていない事に気が付いたのか尋ねると「勘」と言われてしまいました。新人薬剤師ではなくなった今の私に、その「勘」は備わっているのか不安になります。
先輩薬剤師の勘によってその後、筆談対応となった患者さんは投薬時に使用した筆記のメモを毎回「ください」といって嬉しそうに大切に持って帰っていくようになりました。そして時には「今日は補聴器付けているから、少しは聞こえるのよ!」なんて笑ってくれる事も。
外見からはわからない、配慮や手助けを必要としている人が必要な援助を得やすくなるようにと、2012年(平成24年)に東京都が作成したヘルプマーク。現在は日本各地で普及してきており、見た目ではわからない障害をお持ちの方が自ら何かしらのサインを出してくれることも増えてきたように思います。しかし、自分からはなかなか言い出せないけれど、本当は何かに困っている方も決して少なくはありません。
聞こえにくいのかな?見えにくいのかな?尋ね方は難しいけれど、そんな方のちょっとしたサインを見逃すことなく、その方その方に合ったお薬の渡し方が出来るような薬剤師になりたいと思っています。
私に物心がついた頃、母は「ラジオ日経」のパーソナリティーを務めていました。母が亡くなった今、いつからパーソナリティーを務めていたのかを調べてみると、1995年、今から30年もの間お世話になっていたようです。
母は昔、アナウンサーへの憧れから発声を習ったことがあります。その際に習ったのでしょうか。母は、自分の声を自分の意思でコントロールし、周りに伝える際、自分の声、話し方にとても気を使っていたように思います。
講演会などをはじめ、人前で話す際、どのようなスピードで、どのようなトーンで話したら、より思いが伝わるのか、感情によって変化する声について、また言葉のチョイスについても考え、それらのことを常に意識して母は人前に立っていたのかもしれません。
生前、母はたくさんの音声を残してくれました。その一つに、Voicy(音声プラットフォーム)があります。アプリを開けば、今でも簡単に母の声を聞くことが出来ます。まるで、まだそこに存在しているかのように話しかけてくれる母の声が、ただただ愛おしい今日この頃。
大好きなママへ愛を込めて…
三浦 紗耶華