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【第12回】矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン【もみじかえで研究所】

株式会社もみじかえで研究所
代表取締役 本間篤史氏

多治見を「世界一のもみじの街」に

 株式会社もみじかえで研究所は、機能性食品研究から発見されたもみじを岐阜県多治見市の自社農場で栽培して世界初、オンリーワンのもみじ商品を展開する企業だ。今回ゲストでお迎えした同社・代表取締役の本間篤史氏は、本企画・ホストを務める矢澤一良博士(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長)の東京海洋大学時代の教え子でもある。師弟対談とも言える本稿では、矢澤博士が、本間代表の心中で醸成された研究者魂・ベンチャー魂に迫る。

「0を1にするという姿勢が好き」

矢澤一良博士(以下、矢澤博士):私が東京海洋大学におりました時に、大学院講座を持っていました。実は、その時の教え子の一人が本間君でした。ここに彼の学位論文があるのですけれど、この論文を改めて見せていただくと、やはり、しっかりまとまっており、今更ながら褒めざるを得ないぐらいしっかりした論文になっていると感心しました。

矢澤一良博士

 本間君は2010年に学位を取られたわけですが、学位を取るのはそう簡単ではありません。アカデミアの方はわかるのですけれども、インパクトファクターという論文にありまして、論文の価値の高さというのはあるのですが、結構インパクトファクターの高い論文に投稿されて、受理されているというようなことで、おそらく、興味を持っている海外の人もいるのではないかというふうに思います。

 本間君に聞きたいのですが、なぜ私の講座を受けようと思ったのですか。きっかけを聞かせてください。

本間篤史代表取締役(以下、本間氏):学生の時に授業に受けさせていただいて、とても面白かったっていうのと、やはり宝探し的なワクワクがあったので、すごく興味を持ったというのが経緯です。

矢澤博士:なるほど。今、本間君が言ったように探索ですね。

 難しい言葉では、スクリーニングというもので、まさに宝物探しなのですが、それが人によって、学生によって何を求めるかということは異なっていたわけなのですけれども、色々な動物、生活習慣病一般の、例えば、血糖値が高い人、中性脂肪が高い人、骨粗鬆症で悩みそうな人というようなところがターゲットになって、各学生がその動物を飼育するところから始める。
 本間君も血糖値というテーマを一つ選んで、血糖値が下がるような宝がないだろうかという我々のスクリーニング、探索という研究の手法を取ったわけです。

本間篤史代表取締役

 当時、ちょうど20年前ぐらいから、スクリーニング、探索、宝物探しをしていた。それも血糖値が下がる新しいものを、誰もやってないようなものを探そうではないかという志を持ってくれたのが本間君でした。

 それはヘルスフード科学講座というのも、初めて作った講座ですし、今そこでの講義を聞いていただいて、興味を持っていただいたということだと思うのですが、その当時の学生さんがこうやって現在卒業して、数年後にベンチャーとして起業しました。

 本間君の学位論文は「カエデ属植物の血糖値上昇抑制作用とその応用に関する研究」というテーマで、まさにこれを20年間追い求めてきて、自分でベンチャーを起業して、今日のもみじかえで研究所という会社になったということですね。その頃の意気込みはどうでしたか。

本間氏:自分でやりたいという気持ちが強くありました。やはり0を1にするという姿勢が好きなのです。

矢澤博士:素晴らしい。教授は1を2にするのだけど、0を1にするというのは素晴らしい発想です。

本間氏:人と同じことをするのが嫌いなのかもしれないですけれど、自分で見つけたものを育てていくためのシーズを探す。自分だけのものを探すということがちょっと好きなのです。

矢澤博士:それはなぜ好きになったのでしょうか。

本間氏:やはり人と同じのが嫌いだったというのはあります。

矢澤博士:そうですね、研究者というのは人の後追いではなくて、新しいことをやりたいというのはあると思いますし、企業から言えば、他の会社がやっていないものを探そうとしますね。食品であっても医薬品でも同じです。

 それはそう簡単ではなく、本間君以外に学生さんがたくさんいて、それぞれ10種類ぐらいの生活習慣病も、病態モデルのマウスを使って研究したわけですけれども、当たらない人はなかなか当たらない。つまり、経口投与して食べさせてみて、「確かに血糖値が下がる」というようなものは、そう簡単に見つかるものでもないし、特に他の人がやったことではないものを探すということはとても大変だったと思います。

 例えば、その頃からすでにあったと思うのですけれども、バナバ茶や桑の葉茶などもあったと思うので、それと同じことをやっても面白くないなということですね。

本間氏:矢澤先生がおっしゃる通りです。

矢澤博士:私が学生さんたちに指示を出したのは、「とにかく自分で何か原料を探してこい」と。探す場としては、例えば奄美大島も随分学生と一緒に行きましたし、色々なところに行って、その地方独特の植物、キノコ、海藻などを探しに行きました。その思い出はありますか。

本間氏:やはり自分で素材を採取して、それを実験に繋げるのはなかなかできないことです。もともとあるソースの抽出物を買うことはできますけれど、やはり、自分で採取した植物を見ることで、愛が生まれるというか、そういうのはすごく感じます。「これは僕が取ってきた」と愛着が湧きます。その取ったものを最終試験に持っていけるというのは、やはり心持ちは全く違います。

「アメリカに負けない」研究姿勢

矢澤博士:今回、もみじかえで研究所という会社を作り、その20年前から研究の対象としていたモミジが、しかもそれが「血糖値の上昇を抑制します」というようなことでの、モミジに突き当たったと思うのですけれど、その他にいろいろ探索という意味ではモミジ以外に何かやりましたか。

本間氏:東京海洋大学(当時は東京水産大学)に在学していましたので、例えば、かまぼこの原料に使われるスケソウダラの魚肉エキス、あと、それを酵素で分解した分解物などがあります。

矢澤博士:実はかまぼこはホットな話題で、かまぼこも結構健康に関して単に美味しいだけではなく、あるいは料理に使うだけではなくて、「健康に良い」という話が広がっていったのは、おそらく本間君による、「動物実験で血糖値が下がりました」というデータによるものだと思います。

 今、かまぼこの老舗・鈴廣かまぼこさんが、タンパク質の吸収が良くなるという話と、その他の機能性に関して注目し、盛んにチャレンジしています。

 本間君のこの仕事というのも、ある意味自分がやらなかっただけで、企業さんにとっては、すごくインパクトのある仕事になったのではないかなというふうに思います。本当にそういう意味では結構先駆的だったと思っております。

本間氏:かまぼこと並行し、赤塚植物園のソースを使って、数個ヒットが出たので、それを学部生の頃に追っていました。ある程度いいものが見つかったとともに、手技を学ぶことができたので、インビトロからインビボに持ってくるような。それで、プレートを用いて、効く・効かないというスクリーニングを網羅的に行い、見つけて特許も取ったりしています。

矢澤博士:本間君から特許の話が出ましたけど、彼が学生だった6年間の実験ノートがあります。これを見ていただいたらわかるのですけれども、まず、保存性が高いのです。ちょっとした火事でも表面が焼けないように厚手になっています。

6年間の実験ノート

 しかも、「絶対に研究室から持ち出さない」と書いており、なおかつ中身は全部こういうデータか、もしくはこれを見たらわかりますけど、鉛筆ではなくボールペンで書かれており、これも消さないように、「訂正があれば横棒を引いて上から横に書きなさい」というやり方なのです。

 これに関しては、「チェックしました」という指導官のサインが必ず書いてあります。つまり、「間違いなくこの日に彼はこの実験をやった」という証拠になります。
 これはなぜかというと、「アメリカと競争しよう」「アメリカに負けない」というのは、こういうのを見た途端に、「それより前に俺が発見した」と言われたら、証拠がなく負けてしまうわけです。この日にこういったデータを出したのは自分であり、しかも上官がサインしているということを証明する。これは、アメリカの特許戦略に絶対負けない、世界中の特許に負けないというつもりで、実験ノートを必ず学生全員に書かせているわけです。それはとても大変なことです。

本間氏:それも、実験を行った後に書かなければならず、データ処理して、その後に書かなければいけないので、かなり大変でした。

本間氏の前に並ぶ「もみじ商品」

矢澤博士:しかし、それが自分の研究に誇りを持って、世界に負けないようにやっていくという手法です。もちろん研究を論文にするのは大切ですが、論文にしてしまうと公知の事実になってしまうため、先に特許申請するのが、私たちの研究室のやり方でした。

当時、私が東京海洋大学に行った時にも、まだ学生は「特許って何?」みたいな感じで、教員でも「特許申請する必要があるのですか?まずは発表でしょう」のような風潮がありました。しかし発表してしまうと、公知の事実になってしまうので、教員の指導で明細書を作理、特許庁に持っていくというのを学生の頃からやりましたね。

本間氏:「もみじ茶」という商標も学生時代に出しに行って結果的に取れたのですけれど、その学びがあって、今も実は「もみじラボラトリー」や「もゆるは」という商標があります。その昔の杵柄があって、今もこう自分でやれるようになったので、そこは大きいですね。

矢澤博士:研究をどう役に立たせたいかと言ったときにやはり「商品がないとダメでしょう」という話も学生さんにした記憶があるのですけれど、それは忠実に守ってくれたという感じですかね。

 起業するにあたって、大起業に就職すると会社の中の仕事しかできないというのはあったでしょう。

本間氏:先生にこういうのもあるのですけれど、人から指示をされるのがあまり好きではありません。ですので、やはり自分で何でもやりたいというか、自分の考えで進めたいというのがあるので、やはり個人的にも大きな会社には自分は向いてないというのは感じていました。

もみじに“どっぷりはまる”きっかけ

矢澤博士:なるほど。こうした背景もあって本間君は、自分で見つけてきた、他に誰もやってない「もみじ」を選びました。まあ、自分のやりたいことは血糖値の上昇抑制、糖尿病の予防ということで、動物実験を通じて検索し、そして最終的にはその構造決定までやりましたね。

 物質的には全て既知でしたが、それでも特許からすれば用途特許というのがあります。物質は珍しくないのだけども、こういう用途があることを初めて見つける。それが今回の論文にもなりましたし、機能性表示食品というのに、登録できるという快挙になったわけです。

本間氏:発見は矢澤先生の研究室で、私が研究をしていて、窓をちょっと覗いたらモミジの木がありました。「あれも効くかもしれない」と思って、持ち帰って分析すると、「どうもこれは効果がある」と手応えを感じ、その話を矢澤先生に居酒屋で報告した覚えがあります。
 後で文献を調べると、誰もやっていなかったことがわかりました。

 それから、先生から「モミジに限らずカエデ属の植物も全部当たってみなさい」というお達しをいただいて、結果的には良い方向に進んでいきました。
 例えば、論文にも書いたサトウカエデであったり、愛知県の県木・ハナノキだったり、色々なものを見つけて、そこからカエデにどっぷりはまってしまって、論文にまとめたという経緯です。

 機能性を見出し、今度は構造決定までというルールでしたので、全部1人で対応しましたので本当苦労しました。徹頭徹尾、スクリーニングからインビトロ、インビボの試験やって、その後に化合物を精製し、NMRで同定するという全部をやらなければならないので、非常に勉強になりました。

しかし、一つのパートだけしかやっていなければ、起業してなかったかもしれないですし、自分で世の中に出していきたいという気持ちが強くありました。他のカエデの効果のあるものを結構見つけていたのですけれど、まだ誰もやってないものもありますし、そこにもチャレンジしたいと思っています。

矢澤博士:本間君の大変さというのは、モミジは通常は観光用・観賞用なので、それを入手することです。

本間氏:起業した頃は「どこかでとらせてもらおう」と安易な気持ちでいたのですけれど、やはり農薬の問題、誰がいつどうやって育てているのかなど、そもそも見るために植えているので、それを食べるために取るというのは難しい。ですので、やはり自分で管理できる畑的なものが必要になってきます。

 それで色々なところを訪ね歩きました。福島県にも行きました。ですが、やはり知らない人に農地を貸してくれる方はいらっしゃらないので、原点回帰して地元の近くであれば、地の利もありますし、多治見市に自治体が運営している企業支援センターというのがあり、そこにお世話になることになりました。

 そうすると市の方が一緒になってプッシュしてくれるので、その方の後押しで農地を借りることができました。ですので、多治見に恩がありますし、どうせなら多治見を「世界一のもみじの街」にしようという、ミッションのもと仕事をしています。

矢澤博士:最近では、私の教え子が随所で活躍している姿を目にしたり、耳に入ったりしますが、自分で会社を作って、機能性表示まで持っていったというのは、本間君が初めてです。機能表示を取るところでも苦労があったのではないですか。

本間氏:ありました。モミジにはエラグ酸という関与成分があるのですけれど、由来はアフリカマンゴノキ、もしくはザクロぐらいでした。それをもみじで取れるのかという、まずそこですね。特に消費者庁とのやり取りがやはり一筋縄ではいきませんでした。機能性表示食品の製造上の事件もありましたし、いろいろ制度が変わっていく渦中に申請を出したりしていたので、やり直し・差し戻しをされたり、位置が違うとか途中で変わったりなど。そういったなんてことのないやり取りが続いたのが苦労でしたし、時間がかかってしまいました。

矢澤博士:やはり諦めないで対応していくことが大切ですね。まあ消費者庁も人が変わることもありますし、その時とまた判断が違う時もありますし、それをいちいち目くじら立てるのではなくて、少し落ち着いて、「最終目的はなんだ」ということを考えた場合には、粛々と対応するということが肝要ですね。

本間氏:やり取りが論文の投稿に似ていたのを見ていたので、ポストしてアクセプトされるまでレビュワーの意見を参考にというのが似ていました。そこは論文を書いて良かったと思いました。

矢澤博士:私は教え子を息子たち娘たちと思っていますから、その方々が活躍しているということがすごく嬉しく思っています。しかも本間君の場合は、大会社ではなくて、ベンチャーを立ち上げて、製品が世の中に役に立つものであり、自力で製品化まで辿り着いた。そこも本当に嬉しい。本間君が、私のヘルスフード科学講座を通じて、ヘルスフードに目覚めてくれたことが何よりも嬉しい。

 一つの通過点としては製品ができて、二つ目の通過点としては機能性表示を取った。今後のビジョンはどうでしょうか。

本間氏:私のようにシーズから立ち上げて、こういうふうにやってもらえる人が、私をきっかけに増えてほしいと思っています。

矢澤博士:この記事を見て「こういう人もいる!やればできる!」ということを皆さんに知っていただきたいですね。

本間氏:まだモミジが食べられること、そしてその効果に対しての認知度は低い現状にあります。モミジの食文化とヘルスケアに対する可能性を広げていきたいと考えています。

矢澤博士:今日は本間君とお話しできたこと、本当にありがとうございました。