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フェムケアトレンドで女性の漢方市場が伸長

発想の製品・サービスも続々monthly ウーマンズラボ

女性特有の不調をケアする手段として、漢方を選択する女性が増えている。健康意識の高まりや体に優しいイメージから、漢方は女性たちにこれまでも支持されてきたが、ここ数年でようやく広く市民権を得た印象だ。コロナ禍におけるセルフケア需要と同時に、近年のナチュラル志向の高まりや、フェムテック・フェムケアのブームを契機に、不調に積極的に向き合う女性が増えてきたことが大きい。漢方のオンライン診療やオンライン相談も充実し、漢方が多くの人にとって身近な存在になっていることも追い風だ。需要拡大に伴い、多様な切り口で漢方と生活者をつなげる動きも出てきた。漢方市場の”今”がわかる記事(①〜④)をピックアップ。(ウーマンズラボ編集部)



①女性向け漢方処方市場、フェムケアトレンドで成長

クラシエ薬品では、フェムテック・フェムケアが社会的に話題になり始めた2019年前後から、女性疾患処方の伸長が顕著に表れているという。女性たちに支持されている大きな理由は、PMS・月経・更年期など女性特有の多種多様な悩みと漢方薬の親和性が高いことだという。

クラシエ薬品が一昨年に発表した漢方薬市場の動向によれば、2019年頃から始まったフェムケアのトレンドが追い風となり、女性向けの処方が順調に伸びているという。漢方薬ユーザーが20〜30代の若年層に広がり始めたことも2023年の特徴的な動きで、今後のさらなる市場拡大が期待される。別の民間調査によれば、女性が「今後取り入れてみたいと思うフェムケアアイテム」の1位は「女性特有の症状に合う漢方・サプリ(※)」。2024年のフェムケアアイテムの代表格に、”漢方薬”が一気に躍り出る兆しだ。(※)健康・美容・テックアイテムにもタイパの流れ、女性2万人の意識調査「OZ勢調査2023」発表

薬局やドラッグストアで販売される、国内の一般用漢方薬の市場規模は、直近6年で増加傾向にあり堅実に成長している。2021年度はコロナ禍における漢方風邪薬の落ち込みにより減少したが、昨年から回復に転じ、2023年は前年比113%で730億円の見込み。医療用漢方薬市場も継続的に成長しており、2023年度は前年比103%で1,860億円を見込んでいる。

【出典】クラシエ薬品(一般用漢方薬の市場規模推移)
【出典】クラシエ薬品(医療用漢方薬の市場規模推移)

2023年の国内の一般用漢方薬市場では、20代・30代の需要増加が見られた。購入個数と来店者数を基に算出した購買指数(PI値)を年代ごとに比較すると、20代・30代ではいずれも前年比110%以上の高い伸長率となった。年代が上がるほど伸長率は低下するが、中高年層は購買指数がもとより高いことから、漢方薬の需要が幅広い年代に広がっていることを読み取れる結果となった。

【出典】クラシエ薬品(年代別の購入指数変化)

2023年は耳鳴りに対応する「七物降下湯(しちもつこうかとう)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が昨年に続き大きく伸長した。高齢化社会による患者数の増加をベースに、一般用漢方薬による対処という選択が広がっていることが背景にあり、メーカー各社による投資効果も相まって、国内で今後さらに伸長するカテゴリーと見ている。

耳鳴りの原因はストレス、疲れ、気圧の変化、加齢や高血圧などさまざまで、対応する漢方薬も複数処方あることから、症状や自身のタイプに合わせた選択ができる点も、耳鳴りへの対処に漢方薬が選ばれる要因だと見ている。

【出典】クラシエ薬品(耳鳴り関連処方の実績推移)

耳鳴りの原因はストレス、疲れ、気圧の変化、加齢や高血圧などさまざまで、対応する漢方薬も複数処方あることから、症状や自身のタイプに合わせた選択ができる点も、耳鳴りへの対処に漢方薬が選ばれる要因だと見ている。

【出典】クラシエ薬品

漢方薬市場の昨今の注目トレンドが、フェムケアカテゴリーの伸長。PMS・月経・更年期など女性特有の多種多様な悩みと漢方薬の親和性が高いことが強みとなり、同社では、フェムテック・フェムケアが広がり始めた2019年前後より女性疾患処方の伸長が顕著に表れているという。年平均11.7%の成長率で拡大しており、フェムケア関連市場の拡大も後押しとなり、2024年以降も継続的に拡大する見込み。

【出典】クラシエ薬品(女性向け漢方処方 市場推移)


小売店パネル調査から見る女性向け漢方の伸長

医療・ヘルスケア専門の調査会社インテージヘルスケアによる小売店パネル調査(※)でも、漢方の伸長を明らかにしている。商品の販売データを分析したところ、フェムケア領域で特に伸長が見られるのは、「漢方薬」と「健康食品」。生理痛や更年期症状に対処する女性が以前より増えていることと、人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代が更年期世代に突入したことが背景にあると見ている。(※)全国約6,000店舗の販売実績を継続的に収集

一言でフェムケアといっても、年代によって悩みも対処方法も様々です。今回は、全国約6,000店舗の販売実績を継続的に収集している当社の小売店販売データSRI+®(全国小売店パネル調査)と、全国5万人を超える生活者の日々の買い物データであるSCI®(全国消費者パネル調査)を用いて、実際の販売・購買データを元にした分析をお届けします。フェムケア市場の定義には明確なものがありませんが、今回は、「OTC医薬品(女性用保健薬、皮膚用薬の一部、漢方薬の一部処方、妊娠検査薬、排卵日検査薬、膣カンジダ再発治療薬、尿トラブル改善薬、貧血改善薬)」+「健康食品(成分:葉酸、大豆イソフラボン、エクオール、等)」と定義しました。

フェムケア市場はここ7年で順調に拡大している。カテゴリー別にみると、「漢方薬」「健康食品」が伸長している。人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代の多くが更年期世代に突入していることに加え、フェムケア症状(生理痛・更年期症状など)の対処率の伸びが市場を押し上げてきていると推察される。

【出典】インテージSRI+®(全国小売店パネル調査)。国内最大6,000店舗の販売状況から推計。2018年1月度〜2024年12月度のドラッグストア、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンターでの推計販売金額。ECを含まない。「漢方薬」は加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸など。「女性用保健薬」は更年期症状や生理痛・PMSの改善薬、貧血改善薬など。「皮膚用薬」は女性向けデリケートゾーン用。「検査薬」は排卵日や妊娠の検査薬。「その他の医薬品」は尿トラブル改善薬、膣カンジダ再発治療薬など。「健康食品」は葉酸、大豆イソフラボン、エクオールなど

全国の5万人を超える生活者の日々の買い物データであるSCI®(全国消費者パネル調査)データを用いてフェムケア市場の購買状況を確認した。最も購入率(フェムケアカテゴリーの何かを買う人の割合)が高いのは女性30代。4年前と比較して購入率が伸びているのは女性50~70代の年代高めの層である

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)。全国15歳~79歳の男女53,600人の日々の買い物データのうち、グラフは女性のデータのみを集計して作成

20~30代では妊活関連が多いと思われ、検査薬(妊娠検査薬)の割合が他年代よりも高い。全年代で健康食品の割合が高く、特に70代を除き、年代が高くなるほど割合が高くなる傾向。

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)

以下は上記グラフの縦横が逆で、各カテゴリーがどの年代に支えられているかを示している。皮膚用薬は各年代での需要あり。健康食品は年代高めの層の割合が非常に高い。

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)、2024年1月度~12月度

フェムケア関連のカテゴリーはECでの購入割合が高い。健康食品は75%が通販(インターネット)と非常に高い割合になっている。

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)、2024年1月度~12月度

主に女性向けの訴求が多いと思われる各成分のうち、「エクオール」成分が大きく伸長しており、5年前と比較すると倍になっている。

【出典】インテージSRI+®(全国小売店パネル調査)、2020年1月度〜2024年12月度

インテージヘルスケアが発行している、「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート2024」では、消費者の利用目的(ヘルスベネフィット)別に健食サプリ市場を把握している。2023年の「更年期障害対策」市場規模は、「顕在市場」が248億円、2018年より約61億円市場が拡大した。また将来のポテンシャルを表す「潜在市場(※)」は498億円。顕在市場・潜在市場とも伸長しており、市場の引き続きの拡大が期待される。また、この目的で使用される原料シェア1位は「エクオール」。このエクオールの割合も大きく伸びている。※潜在市場とは、この目的で今後健食サプリを利用したいという意向の金額から推計したもの。顕在市場を含む。

【出典】インテージヘルスケア「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」

「エクオール」の使用者の性年代を見ると、2023年では50代以上の割合が大半を占める。2018年と比較して、60代、70代女性の割合が伸びている。「エクオール」の利用目的をみると、「更年期障害対策」だけでなく、「関節の健康」の割合が増加している。

【出典】インテージヘルスケア「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」

【提供元】 株式会社インテージヘルスケア
幅広い疾患領域における実績、医療やヘルスケアに特化した専門性の高さ、豊富なアセットを活かし、お客様の意思決定につながるインサイトをご提供します。

「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」は2012年度意向毎年発刊し、延べ370社以上に提供実績があります。生活者13万人以上に大規模調査を行い、「健康食品・サプリメント市場」「ヘルスケアフーズ市場」「セルフヘルスケア市場」の市場規模推計や利用者の分析結果をまとめました。詳細はこちら。画面右の申込画面からサンプルレポートを無償ダウンロードいただけます。他にも様々なサンプルレポートをご用意しております。インテージヘルスケアのHPホーム画面>メニュー>資料ダウンロード



1,100円均一の漢方ブランド(日本調剤)

ワンプライス戦略で漢方ブームに乗ったのは、日本調剤。今年4月に、ワンプライスのプライベートブランド「10COINSKAMPO」を立ち上げた。1,100円均一のOTC漢方薬ブランドで、更年期症状やストレス、虚弱など、15品目で幅広い症状や健康課題に対応する。「価格面でのハードルを下げ、個々に必要な漢方薬を選んでほしい」との考えから、手頃な価格のOTC漢方薬ブランドを実現した。

【詳細】
日本調剤、1,100円均一の漢方ブランドを法人向けに販売 
更年期・ストレス・虚弱カテゴリーで15品目

日本調剤は、1,100円均一のOTC漢方薬ブラン「10COINSKAMPO」の法人向け外部販売を開始している。対象は薬局やドラッグストアなどの小売企業で、これまでは自社の店舗とECサイトのみで展開していたが、販売網を拡大する。

【出典】日本調剤

「10COINSKAMPO」は、今年4月に立ち上げたプライベートブランド。以下15品目で、幅広い症状や健康課題に対応する。

■更年期の症状
 精神不安/冷え性/月経不順
■ストレス
 のどのつかえ感/のぼせぎみ/じんましん
■虚弱
 虚弱体質/胃腸虚弱
■からだ
 頭痛、むくみ/足がつる/排尿困難
■かぜ
 かぜのひきはじめ/さむけ、発熱/強く咳き込む、からぜき/鼻水


同社は2023年に、業界初の550円均一のOTC医薬品プライベートブランド「5COINS PHARMA」を立ち上げ、30品目の販売を開始した。今回は、それに続くワンプライスのプライベートブランド。近年、セルフメディケーションや未病の概念の浸透に伴い、漢方薬の需要が増加しており、特に女性は、女性特有の健康課題をケアする方法として、漢方薬を選択する傾向が強まっている。「価格面でのハードルを下げ、個々に必要な漢方薬を選んでほしい」という想いから、手頃な価格のOTC漢方薬ブランドを立ち上げた。



漢方発想の住宅を開発(再春館製薬所×Lib Work)

漢方の考え方を住宅開発に取り入れた、新発想の事例も登場。化粧品ブランドのドモホルンリンクルで知られる再春館製薬所と住宅メーカーのLib Workが共同で開発したもので、今年4月に販売を開始した。漢方の製薬企業ならではの発想で、コンセプトは「住むだけで自己回復力が育まれる人生100年時代の健康住宅」。既存の住宅メーカー各社がテクノロジーを駆使した健康住宅の開発を進める中、2社はテクノロジーの過剰な活用を避け、体にやさしい住環境づくりを目指した。

再春館製薬所(熊本・上益城)と住宅メーカーのLib Work(熊本・山鹿)は先月末、住むだけで自己回復力が育まれる人生100年時代の健康住宅「再春館製薬所の家(Positive Age House)」の販売開始にあたり、モデルハウスを公開した。既存の住宅メーカー各社がテクノロジーを駆使した健康住宅の開発を進める中、どのような独自戦略で差別化を図ったのか?再春館製薬所の担当者に話を聞いた。

再春館製薬所の家」は、「健康寿命延伸」「生体リズム」「自然との共生」を軸に、漢方とテクノロジーの考えを融合させて設計した住宅。人が本来持つ回復力や自然な健康を引き出すため、テクノロジーの過剰な活用は避け、生体リズムを自然の力で整えることができる住環境づくりを意識した。

生体リズムに合わせて照明の色温度や明るさが変化する「サーカディアン照明」や、自然の力を活かして快適な住環境をつくる「パッシブデザイン」の採用が、その一例。例えば南側の窓周辺に植えた落葉樹は、夏には茂った葉が強い日差しを遮り、秋冬は葉が落ちることで日光を室内に取り込みやすくする。室内の風の通り道にも配慮し、自然な通風が室内環境を快適に保つ。

【出典】再春館製薬所

また、日常生活の中で「視・聴・嗅 ・味・触」の5感を刺激することで心身を活性化させたりリラックスできるよう、外気浴ができる浴室、ヒノキ材を使ったバルコニー、凹凸のあるなぐり加工の床や畳、ボロン床など多様な素材を用いるなどして、触覚への刺激を意識的に設計した。暖炉の炎のゆらぎや木漏れ日、そよ風など、自然界の「1/fゆらぎ」も取り入れた。それにより、”規則的すぎず不規則すぎない”心地よいリズムが生まれ、心身をリラックスさせる効果が期待できるという。暮らしの中で四季の移ろいを楽しめるよう、庭木には、実がなる木や香りを感じる木、紅葉する木などを植えた。

【出典】再春館製薬所(凹凸のある「なぐり床」が足裏を刺激する。触覚を刺激しながら、健康づくりにも)

日々の暮らしの中で健康づくりを促すため、生活導線の随所に仕掛けも散りばめた。狙いは、「日常生活の中で無意識に“さぼり筋”が目覚めるような、自然な動きを促すこと」だという。例えばダイニングには、掘りごたつのような構造を採用。「座ったまま横に移動することで、筋肉を刺激する動作が自然と生まれます」。中2階に設けた”座りたくなる”読書スペースも、階段の昇り降りの機会を自然と生み出す仕掛けだ。家の中でさまざまな場所に移動したくなる仕掛けを取り入れることで目指すのは、「住む人が毎日何気なく体を動かし、長い年月の中でその積み重ねが大きな健康効果となって返ってくること」だという。

【出典】再春館製薬所(段差を設けることで、ちょっとした運動の機会に)
【出典】再春館製薬所(座り姿勢で横に移動するこで、筋肉を刺激する動作が自然と生まれるダイニング)
【出典】再春館製薬所(「そこで読者したくなるスペース」を中2階に設けることで、階段の昇降の機会が生まれる)

今回公開したモデルハウスでは、「要介護状態になることなく人生100年を生き抜く住まいのあり方や暮らし方」を提案していることから、身体に不自由がない住人を想定した設計となっているが、今後は、要介護状態になるなど身体状況の変化に対応した可変性ある間取りの設計についても、検討していくとのこと。「安心して長く暮らせるよう、コンセプトに基づきながら、個々の健康状態や将来の計画に合わせて柔軟に設計していきたい」としている。

住む人にとって自宅が「養生の拠点」となるような住宅を目指して開発したというが、既存の住宅メーカー各社が健康訴求をした住宅開発・販売を進めている中、どのような独自戦略をとったのか?最大の差別化ポイントは、「人と自然との関係性」に対する根本的な捉え方だという。

「多くの住宅が、外界から完全に人を隔て、室内に人工的な快適環境をつくることを目指してきました。しかし、それは本来自然の一部である人間にとって、不自然な関係を生み出しかねません。私たちは創業以来、漢方理念に基づき“自己回復力”の研究・製品開発を重ねてきた製薬会社として、『自己回復力』を高めるには“自然との共生”が不可欠であると考えてきました。平衡感覚を不要とする完全に平らな空間は、自然界にはありません。外の庭や窓からは四季の移ろいが感じられ、自然の光や風が家の中を巡る。こうした設計により、住む人は自然を避けるのではなく、自然と共生しながら健康を育むことができます。『自然を遮断して健康を守る』のではなく、『自然とつながり、共生することで自己回復力を引き出す』。それが、他にはない本質的な差別化ポイントだと考えています」。

再春館製薬所は今年4月に、2032年の創業100周年に向けた挑戦として「ポジティブエイジカンパニー宣言」を発表した。原点である漢方理念に立ち返り、自己回復力に着目した研究・製品開発を通じ、全ての人にとって「明日が楽しみと思える毎日をつくりたい」という考えを示したもので、住宅販売はその取り組みの第一弾。今後は、九州各県から全国エリアへの展開を目指すとしている。

【執筆】ウーマンズラボ(https://womanslabo.com/)

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