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【帝国データバンク】事業存続型倒産実態調査で「医薬品小売」の存続目立つ

事業存続型倒産は161件 3年連続の増加

 帝国データバンクでは、2024年度で発生した負債5億円以上の倒産(法的整理)を分析。倒産前後や手続き内での事業譲渡や自主再建等によって、法的整理後も当該企業の「事業」が存続したものを「事業存続型倒産」と定義し集計した。経営が行き詰まって倒産しても、何らかの形で「事業」が存続した「事業存続型倒産(※)」は、2024年度で161件判明。3年連続の増加も、倒産全体に占める割合(事業存続率)は32.9%と前年度比0.2ポイント低下した。業種別では人手不足を背景に「建設業」が増加したほか、「医薬品小売」の存続率が100%となった。調査を踏まえ、帝国データバンクでは2026年12月の「早期事業再生法」施行を前に、私的整理など事業存続スキームの浸透と支援体制強化が課題と指摘している。

「会社更生法」「民事再生法」:自主再建型(会社も事業も存続)や事業譲渡型(事業のみが存続)等が確認できたもの。更生・再生計画が遂行できず事業が存続できなかったケースは該当しない
 「破産」:会社の清算を前提とした法的申請前の事業譲渡等が確認できたもの
 「特別清算」:会社の清算を前提とした事業譲渡、第二会社方式等が確認できたもの


件数は3年連続増加も、倒産総数に占める割合は微減

 2024年度の事業存続型倒産(負債5億円以上)は、前年度を4件上回る161件判明し、3年連続の増加となった。一方で、全倒産(負債5億円以上)に占める事業存続型の割合(事業存続率)は32.9%と、前年度から0.2ポイントの微減。概ね3社に1社が事業を存続している状況に変わりはなかった。

「事業存続型倒産」の動向

 業種別では「サービス業」が43件(存続率42.2%)で最多となった。また、以前から事業存続型が少ない傾向にあった「建設業」では、人手不足に伴う施工能力の確保に向けたロールアップの動きなどを背景として、件数、存続率ともに上昇した。

 業種細分類でみると、主に調剤薬局を営む「医薬品小売」が最多の7件で存続率100%。これは、2つの企業グループで、それぞれまとめて事業譲渡が成立した事例で、以前からM&Aが活発な業界であり、比較的事業存続がしやすい環境にあると推察される。
 また、金融債務が重荷ながらも、インバウンド需要を背景に収益確保が見込める「旅館・ホテル」も7件で最多タイとなった。地域雇用の維持という点でも、積極的な事業存続が図られているとみられる。一方で、事業そのものの差別化や価値を強調しづらい「生鮮魚介類卸」や「投資業」では、存続率が0%だった。

地域別では関東が最多 九州・北海道が増加傾向に

 地域別では、「関東」が71件で最多となった。また、負債5億円規模の倒産が前年に比べて多かったこともあるが、「九州」(17件)や「北海道」(10件)が大きく増加。地方圏でも事業存続の動きが出始めた。

「経営判断の遅さが事業存続型倒産の弊害に。早期着手の意識醸成や支援体制・スキル強化が今後の課題」

 調査結果を踏まえ、帝国データバンクは「政府は、私的整理スキームを活用しながら、地域企業の事業存続を図る制度づくりを進めており、『早期事業再生法』の施行もその一環と言える。気運が高まる一方で、公租公課の滞納などによる再建困難な事例や、経営者の判断の遅さから既に“手遅れ”となっている事例も多く、事業存続型倒産の件数は伸びを欠いている。本業での収益力向上が見込めなければ、債務カットなどの私的整理があったとしても抜本的な事業再生は困難だ。立て直しに早期着手する経営者の意識醸成やスキームの浸透はもとより、弁護士や金融機関、コンサルタントといった支援者の体制、スキル強化もまた課題となるだろう」と分析している。