大木ヘルスケアホールディングスの「2025OHKI秋冬用カテゴリー提案商談会」が6月17日(火)、18日(水)の2日間、TRC東京流通センターで開催された。今回の提案商談会は、1グループに大木の営業マンが付き、提案をしながら会場を周る「フルアテンド方式」をさらに発展させ、商品軸から〝提案軸〟を強化した商談が繰り広げられた。ドラッグストア・薬局、ひいては日本が抱える課題と市場動向を導入に据え、対話しながら各社にあった提案を行う。大木の提案商談会は、営業マンのコミュニケーション強化による濃密な意識共有と、中長期的な発展を目指した提案、そして業界が一丸となって社会課題に臨む活気に包まれた会場となった。(参考記事:事前説明会で提案の肝を一挙紹介)(取材=中西陽治)
大木ヘルスケアHDの提案商談会は、生活者の多種多様な潜在ニーズを発掘し、「医薬品スタンディングの美と健康と快適な生活にウィングをもつ需要創造型の新しい中間流通業」の実現を目指し、考え方を共有する小売店とパートナーシップを組み、医薬品、健康食品、化粧品、衛生医療用品、日用雑貨品にまで生活者が満足し購入してもらえるカテゴリー提案を目的として開催されている。
2025年秋冬の棚構築をメインに行われた提案商談会は、2日間で約1,800人の来場者(主催予定人数:6月18日午前時点)、実施提案数68提案、共同提案出展メーカー87社、商品協力メーカー延べ282社が集った。
大木の提案商談会では導入に「市場動向」を掲出し、ドラッグストアおよびヘルスケア産業を取り巻く環境変化、またどう変わっていくべきかのヒントがちりばめられている。フルアテンドで案内する大木の営業マンは、人口減から消費・財源の減少、国内/インバウンドの需要変容、日本および海外のビジネスモデルの変換までを丁寧に説明し、「なぜ今これが重要なのか」「取り組むべきは何なのか」を後に続く具体的な提案へとつなぐ。
大木の松井秀正社長は「すべてをご説明すると2時間はかかるボリューム。しかしこの課題と環境を丁寧に説明し、われわれは従来のモデルから変わらなければならない、という危機感を共有することが大事だと考えている」と導入部に熱を込める。
取材中も営業マンと来場者の間に「百貨店・デパートの購入率が復活傾向にある。ディスカウントストアの伸長も見過ごせない。これからどんどん業態の垣根がなくなっていくだろうね」「同じ商品を展開していては競合に勝てない。わが社ならではの差別化提案ができれば」といった会話が繰り広げられていた。
導入の先にはウェルアップ社を中心とした健康体験チェック機器が並ぶ「快適生活」カテゴリー提案が始まる。
これらは店舗機能強化に資する「健康イベント」が中心で「体組成」「血管・ストレス」「血圧」「骨健康度」「肺年齢」などのチェック機器から、新たに登場する「MCI(軽度認知)チェック」、また「ノルディックウォーキング」「シナプソロジー」「脳トレ手芸キット」といった大木独自の取り組みが展開されている。
「認知機能測定」「視覚トレーニング」などのチェック機器と、機能性表示食品「ブレインアシスト」(大木製薬)とのクロス展開では、チェック結果からセルフケアのアクションへとつなげるクロス展開が紹介されていた。
続いて家庭用ヘルスケア機器がメーカー横断で繰り広げられる。体温計や温湿度計、お薬アラームなどが提案されており、アテンドしてくれた大木の社員は「商品軸での提案ですとメーカー競合となっていまいますが、大木は提案軸なので、各メーカーが持ち味を生かした提案ができるのです」と語ってくれた。
また出展社によると「秋冬は体温計の購入が伸びます。新型コロナ流行で〝一家に一台〟となりましたが、今はパーソナルユースにシフトし〝家族でも一人に一つ〟〝オフィス用に一つ〟といった購入につながり売上は伸びています」と説明してくれた。こういった消費動向や裏話が聞けるのが、大木のフルアテンド提案の強みだと感じた。
「快適生活」のカテゴリーではオーラルケアのサブカテゴリーを活性化させる「モフらし」シリーズや舌クリーナーといった展開で生活者に新習慣を促す差別化提案が行われていた。
また災害対策の提案では、従来の商品棚に「備蓄推奨品」や「ローリングストック推奨品」といったPOPを付けることで需要を喚起。もちろんポータブルトイレや圧縮衣料など小さなスペースでも展開できる画期的な商品が訴求された。
メンズケアでは「尿漏れ問題」に提案の軸を置き、〝恥ずかしくて買えない〟といった男性生活者の声から、グレーやブラックを基調としたシックなアンダーウェア、尿漏れシートを展開。シェービングや男性向け消臭剤とクロスすることで日常に溶け込む商品として掘り起こしを行った。
続いて「園芸・ペット」のカテゴリー提案のゾーンが登場。ペットカテゴリーでは「冬のヘルスケア」と題し、水分補給(アース・ペット社「PET SWEAT」)、スキンケア(愛犬用炭酸入浴剤)、肉球ケア(肉球ケアクリーム&肉球保湿ケアジェル)といった乾燥対策および保湿の商品が展開された。「ペットの虫ケア」では、ノミ・ダニ・蚊のケア商材が猫において未使用率が73%であること、猫が通院しづらいことから、ショットオンタイプの提案を行っている。
「ペット用サプリメント」では、猫の診療費において泌尿器疾患と消化器疾患が2トップであることを示し、また犬においては白内障のリスクが高いことからDHC社の「DHCのペット用健康食品(猫用/犬用)」を積極展開。事前説明会(参照)で「ペット用サプリは台湾・中国の訪日外客が売上の約60%」と紹介されたとおり、多言語対応のPOPでニーズに合致した売り場提案が盛り込まれている。
「園芸」では〝緑視率〟を切り口とした訴求が光った。
緑視率は、視界に占める緑の量を指し、約15%でオフィスでの集中力アップ、25%で安心感が得られる、30%が市街地において確保するべき緑の割合(国土交通省)とされており、緑が多いほど癒し・効率化が図れるとされている。ゾーンでは手軽な観葉植物を提案し、生活者の〝緑視率〟向上を売場で啓発するとともに、「店頭・店内の心地よさにもつながり、店舗スタッフの効率向上に」「店内POPなどを緑ベースに」といった労働環境改善の観点も紹介している。
「医薬品」カテゴリー提案では「推し活サポート」を軸に「トイレ悩み」「こどものお薬箱」「風呂キャン解消!」「ドライシンドローム」といった先取り提案を行った。
「推し活サポート医薬品」では、〝直前のアイケアに〟と題し、目薬・アイケアドリンク、ブルーベリーやルテインのサプリメントの新しい売り方を披露。〝推しへの愛を叫んだノドに〟で喉枯れ対策アイテムに新価値を付与している。また〝推し活前から後にお悩みの方に〟を切り口に、ニキビ治療薬や肌荒れ対策、むくみ解消のドリンクをクロス展開、推し活のアフターフォロー分野では「遠征に」をフックに湿布薬やビタミン剤を展開した。
「トイレ悩み提案医薬品」では〝残尿感・排尿時の違和感〟〝尿漏れ〟〝頻尿〟〝尿意切迫感〟〝下痢〟〝便秘〟〝整腸〟〝デリケートゾーン&おしりケア〟と、およそ排泄に関わる悩みを網羅し、生活者に刺さるフレーズでの展開見本を出した。
「健康食品」カテゴリーでは〝なんとなく不調〟の棚訴求を細胞チェックから導き出す手法、〝おうちでできる冷え性対策〟から「生しぼり糖質30%OFFしょうが湯」(あさの)、〝血圧サポート〟の健康茶および「マイサイズ」、〝睡眠サポート〟では機能性表示食品を柱に快眠グッズをクロス展開、〝リバウンドしにくいダイエット提案〟ではプロテインとサプリメントを同時展示し、「たんぱく質とアミノ酸」といった切り口で訴求を行った。
「コンタクト&補聴器」カテゴリーでは〝きこえ対策〟として「音量調節がワンタッチ 耳かけ集音機」「耳にすっぽり収まる小型の軽量集音機」などを展開。
新商品「きこえアシストPRO」を一足先に体験できるコーナーでは、ハウリングしにくい商品特長の説明に、来場者は耳を傾けていた。
また、OTC専売のコンタクトレンズやコンタクトケア棚割も展開。ドラッグストアへのコンタクトレンズ導入のノウハウを伝えるとともに、若年層をターゲットにしたカラーコンタクトレンズのPOP実例が披露された。
その他、「機能性シニアグラス」や「耳年齢チェック」など、高齢者向けの体験ブースも設けられている。
「C&B」カテゴリーでは導入部に「フェムケアグッズ touch&try」のコーナーが登場。「ドラッグストアには解決商品あります」と題し、店頭がフェムケアの伝道師になることをアピール。SNSで共感を促す「miguちゃんの「#生理あるある」」から、具体的な棚提案「更年期世代ニーズには季節ごとの啓発がカギ」「企業が変える日本のプレコンセプションケア」といった女性に向けた訴求から、フェムケアから性差ケアまで拡大させた「男性更年期への理解」まで、幅広いテーマで店頭のフェムケアカテゴリーを深耕してみせた。
「コスメ&バラエティ」では多くのトレンドキーワードがちりばめられている。「薄肌」「ロンジェビティ」「診断チャート」「ジェンダーニュートラル」「動物診断×ビューティー」「節約志向提案」「お風呂場保湿」「韓国コスメ」など生活者が気になる/気にしている角度から商品を掘り下げ、斬新な提案から掘り起こすべき潜在需要までをアップデートしている。
大木の提案商談会は、松井社長が「フルアテンド型」と強調するように、盛沢山の提案に時間を忘れてしまうほどの気づきにあふれている。
ヘルスケア産業に関わる小売業に即したカスタマイズ、方向性別に合わせた提案には常に変化があり、大木の営業マンも自身に満ちた姿勢で顧客を案内していたのが印象的だった。
取材で驚いたのが、そこかしこで来場者が営業マンと「今後のドラッグストア・薬局」について熱く語っている姿だ。その熱量こそがヘルスケア産業を一歩先に進め、真に社会課題解決に貢献し、成長し続けられる小売業を生み出すだろう。
今後の健康寿命延伸社会を共に創り上げるツアー型提案に、参加者は何度も足を止めて聞き入っていた。