カリフォルニア在住 Dr.グレイス前田のヘルスケア・トーク
第2回 ダイエタリーサプリメントと薬剤師
アメリカのドラッグストアには、OTC薬をはじめダイエタリーサプリメント、化粧品等々多くのヘルスケア関連商品が販売されています。日本のように国民皆保険下にないだけに、もし何らかの疾病にかかった場合、特に手術を要する事態となったら、莫大な治療費を支払わなければなりません。ですから、アメリカの国民の多くは、フィットネスやダイエットセンター、日々のウオーキングやランニングに汗を流している光景は当たり前のように見ることができます。そして万一の事態に備え、勤務先が加入している民間保険にたよらざるを得ないのがアメリカの医療制度の仕組みです。つまり国民は、自らの健康を自らが守るセルフ意識が高いからこそ、ヘルスケア関連商品の需要が増えているのです。薬剤師として医薬品や化粧品、ダイエタリーサプリメント開発に携わってきた一人として、日本の国民の皆様が、ドラッグストアや薬局店頭を通じセルフケア、セルフプリベンションニーズ意識をさらに高めて、“未病と予防”に目覚めてほしいと願いつつ、今回は、『ダイエタリーサプリメントと薬剤師』をテーマにトークすることにします。
――「ドラッグストアや薬局に、お客様が来店されダイエタリーサプリメントやコスメを買うときに迷っていたら適切なアドバイスができますか?」――
むろん薬科大学に入学し薬剤師を目指した学生さんは、在学中、医薬品に関することはしっかりと学ばれてきたでしょう。かつては4年制でしたが今は6年制。薬剤師となってからの勤務先といえば、かつては製薬メーカーの研究所や病院が多かったのです。
ところが、厚労省から「国立病院は完全分業へ」の指導が出されたことで、医薬分業のスピードに拍車がかかり今や分業率は80%。「処方箋調剤こそは、薬剤師のメインの仕事」として、こぞってドラッグストアや調剤主力型薬局へ勤務するケースが相次ぎましたが、果たしてそれで良いのでしょうか?私は、そうではないと思っています。
ドラッグストアの店頭はヘルスケア最前線であり、薬剤師の業務は決して処方箋調剤だけではありません。調剤をする以外に、店頭で来店客の悩み解消、セルフメディケーション(自己治療)・ニーズに応えてきたことで、今や地域住民は、健康寿命延伸へのアドバイザーとして期待するようになり、そのための武器の一つとしてダイエタリーサプリメントは欠かせません。
現行の医療制度を堅持しつつ、自らの体は自身で守るヘルスケア意識が向上し、薬剤師から医薬品だけでなくダイエタリーサプリメントを使用する際のサポートが不可欠になってきたからです。このことを、しっかりと認識して欲しいですね。
私が在住のカリフォルニアでは、処方箋調剤はドラッグストアだけでなく世界一の小売業であるウォルマートやスーパーマーケットでも薬剤師を雇用して対応してくれますが、カウンセリング力はなかなかのものです。その最先端をゆくのが、予防注射、処方変更、栄養相談、医薬説明相談、相互作用、拮抗作用、ダイエタリーサプリメント選び補助などができる薬剤師であり、コンパウンド・ファーマシスト(https://hoitto-hc.com/16291/)と呼ばれています。
日本では予防注射はできませんが、そのほかのことは当然、研鑽しておかねばなりませんし、日本の薬剤師は、これから食品、特に栄養学を学ぶべきです。この分野はアメリカのコンパウンド・ファーマシストのように、日本ではヘルスケア・ファーマシストとして必須の課題といえましょう。
1984年頃でしたが、アメリカでICAN(国際栄養医学会)があり、私は日本から出席した際に、多くの医師・医療関係者が質疑応答して熱心に臨床栄養学を勉強していました.この頃から、ノーベル賞受賞者の提案のダイエタリーサプリメントがアメリカで開発されたのです。
近年では、調剤を経営の柱としてきたアメリカのドラッグストア業界の不振がマスコミに取り上げられています。隆盛を誇ったウォルグリーンもその一つで、大量の閉店を余儀なくされているそうです。その要因は、調剤部門がスーパーマーケットなど異業種業態にラインロビングされているからでしょう。こうした状況は、やがて日本のドラッグストア業界にも押し寄せてくるかもしれません。
ましてやコロナ禍によって、日本のドラッグストアでは、オンラインによる診療や服薬指導が始まり、電子処方箋も発行され、しかも調剤に不可欠な処方薬のピッキング作業も薬剤師でなくとも可能になり、ロボット調剤、受付業務もAIアシスタントのロボットが対応する時代が到来しています。
確かに医療DXの波紋は、とてつもない勢いで広がっていますが、私自身は、いくらデジタルの世界が広がっていても、ドラッグストアや調剤薬局主力型薬局、カウンセリング力に長けた薬局の薬剤師の存在は国民にとって必要不可欠であり、最終的には人が関与しなければならないと思っています。
ヘルスケア最前線で活躍するドラッグストアに関する最新の情報を配信している『ドラッグストアジャーナル』(ヘルスケアワークスデザイン社発行)によれば、処方箋調剤ビジネス市場は、2023年度1年間に医療機関から発行された処方箋枚数は実に8億枚到達が間近であり、調剤報酬額は7兆円を超すまでに成長しています。
しかし、この額は国民が医療保険で支払われる薬剤費ということになりますから、厚生労働省は高騰する医療費にブレーキをかけ、処方箋枚数、調剤報酬額の伸びは鈍化する傾向にあります。むろん来店客のニーズは処方箋調剤だけでなく、より健康に、より美しくなるためストレス解消、免疫力を高めるための食品を求めるだけでなく、心のケアに対する相談も増え、薬剤師は多くの知識が必要になってきています。
ニーズの高い様々なダイエタリーサプリメント、化粧品は医薬品の周囲に位置するものですから、成分、効用、副作用、購入者の希望と体や肌が必要としているものの成分をあらかじめ勉強する必要があります。ですから私は冒頭で、「ドラッグストアや薬局に、お客様が来店されダイエタリーサプリメントやコスメを買うときに迷っていたら適切なアドバイスができますか?」と申し上げました。
私は、かつて資生堂の全国販社で講演し、様々な相談を受けていたことがあり、そのために医学、薬学、皮膚科学、食品栄養学などを研鑽しました。口から入った栄養は胃、腸、心臓から血液となって酸素、水と共に全身に送られます。従って小さい重量の脳には、かなりの血液栄養が運ばれます。
ところが人間が生きるために重要な酸素の中には、約2%もの活性酸素が含まれています。Oxymater(オキシメータ)でチェックすると、吸い込んだ酸素のパーセンテージ数字が表示されます。体調の悪い時は活性酸素が多く、酸素の量は90%以下になったりします.理想は96%以上ですが、私は98%が健康状態であると思います。
活性酸素は、人の体内に侵入したウイルスを攻撃する働きがある一方、過剰な状態になると、健康な細胞を傷つけ人の体に悪さをします。病気になる原因の多くは過剰に活性酸素が関与しており、“万病”のもととも言われています
活性酸素が過剰にできる原因には、加工食品の摂取過剰や古い油の摂取、ストレス、飲酒や喫煙、夏の過剰な紫外線を避けなければなりません。その対策には、ポリフェノールをはじめ抗酸化作用の高い食品、ダイエタリーサプリメントの摂取を心がけることです。
食物は、毎日欠かさず必要な栄養ですから、食べ物を考えずに好きな物だけ大食い早食いすれば、太るだけでなくメタボ、糖尿病、高脂血症などになります。ですから基本は日々の食生活にあり、病気がある場合は疾患に悪い食べ物を控え、不足しがちな栄養素を補えるダイエタリーサプリメントを摂取するように、アドバイスしてください。そのためにも薬剤師は、しっかりと栄養学を学びダイエタリーサプリメントについても研鑽し知識を修得しなければなりません。
<Dr.グレイス前田・プロフィール>
慶應義塾大学薬学部卒、慶應義塾大学医学部大学院、米国PW Univ.doctor cosrse終了 Ph.D Health Science。米国の大手ドクター向けサプリメント会社(Metagenics)の招聘で、研究開発ディレクターとして1991年に渡米。ビタミンCでノーベル化学賞とノーベル平和賞を受賞したライナス・ポーリング博士に師事。
2007年にヘルス&ビューティミニトーク、脳と体のアンチエージング、予防医学、健康長寿をテーマに、8年間にわたりハリウッドの日本語放送テレビ、ラジオに出演。日本在住時はアレルギー予防研究所長、総合健康推進財団を立ち上げる。サプリメント、コスメティックの成分・処方スペシャリストとして活躍中。医療系ビジネス向け講演、教育。著書多数。
所属学会:Alzheimer’s Association (USA)、American Academy of Anti Aging Medicine USA、LPI(Oregon State Univ)USA、International personalized Medicine(国際顧問日本)、World Academy of Anti Aging & Regenerative Medicine(国際抗老化再生医療学会 国際顧問日本)。