2024年6月4日(火)曇りのち晴れ 紀元前781年6月4日に史上最古の日食が観測されたそうである。
「せっかく入院して検査してくれるというのでタクシーで病院に行ったんですけど、長い間待たされて最後は入院できないと断られて帰ってきました。気が動転していて何か落ち度があったのかもしれませんが、あまりにも理不尽なのでお電話しまた。」
電話の先から、それこそ「悲痛な」声が響いてくる。
お話をお聞きすると、「この1か月の間に2回も救急車で病院にかかり、心不全や呼吸不全の兆候があると聞かされ心配で心配で夜も眠れなくて…」と。
電話の先のご婦人は、一つ一つ言葉を選びながら、ゆっくりではあるが「きちんと」お話をしてくれた。
「できれば病院に問い合わせていただいてご返事を聞かせてください」とのご依頼で、早速件の病院へ問い合わせをする。
電話口では「申し訳ありません。 色々調べましたが本日は外来へはお出でになっておりません。ただ、1週間前にも同じようなことがあり、お帰り願ったことになっています。もう一度明日外来事務に確認をいたしまして、ご返事させていただきます。」と、これまた丁寧な返答であった。
なんともはっきりしないので娘さんにご連絡すると、
「えっ、昨日も母と電話で話をしたばかりなんですが…」と驚いたようなご様子で、「母親の話を真に受けていましたが、本当はそうではなかったんですね。 てっきり病院が不親切なんだと思ってました。 年のせいでとは思っていましたが…つい先週も同じことがあって注意したばかりなんです」と、ようやくその経緯が判明した。そして、遠方に住む子供たちで話をして、何とか急いで両親のことを相談することとなった。
こうしたご家族にとっての予想外の認知症の事例は、私たち地域包括支援センターでは「よくある話」である。そしてその事態に遭遇してご家族は、 「慌てて対策を考える」ことになる。
確かに私たちのような介護の専門職や専門機関が整備され、その対応には十分とはいかないまでもフォローできる体制はできてきた。とはいえ、 「もっと早く」その対応が取れないものか…。ご家族のみならず私自身も感じるところである。
このケースのように高齢者のほとんどの方が「医療機関」にかかっている。そこに認知症の知識を持つ専門職も少なからずいる筈である。 後日談になるが、件の病院からの返信では「これは余計なことかもしれませんが…」と前置きして、 「救急対応した先生も少し尿臭がしたとおっしゃっていました」とのことであった。
高齢者にとっての認知症の症状は、現場の私たちからすると「緊急事態」である。
表面的にはさほど困っていない、「単なる物忘れ」に見えている。が、その最初期こそ「最高のチャンス」でもある。最近開発された認知症薬も「最初期に効果がある」とされている。
我々医療職に「早期発見の仕組み」や「通報の仕組み」が求められていると同時に、病院の窓口ばかりでなく、薬局やドラッグストア、コンビニなどの「高齢者が利用する場所」での早期発見のネットワーク作りが求められている。
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