衛生・環境・健康をテーマに、ビジネスを通じ世の中の課題解決を目指しているサラヤ(更家悠介社長)。医療品質の手指消毒剤や、植物由来の洗剤あるいは甘味料など、明確に差別化されたものづくりが、多くの小売チャネルから評価されている。先ごろ同社は、大阪・東京を合わせ330人の取引先を集め、コンシューマ事業本部の「2024年方針発表」を行った。衛生領域では「介護」「オーラルケア」、環境では「化粧品」、また健康では「腸活」や「低栄養問題」を切り口に新たな展開をスタートさせる。特に健康領域では、「創業時から徹底してこだわってきたプラントベースに磨きをかけ、幅広い生活者の様々な課題を解決していきたい」と語っている。
「2024年方針発表会」は、11月9日に大阪、同月16日に東京の2カ所で催され、大阪は137人、東京は193人の、計330人の取引先が参集した。このような大規模の説明会は初の試みで、来年に向けた同社の意気込みが伝わってくる。
冒頭に更家悠介社長が同社の活動を報告したのに続き、取締役コンシューマー事業本部本部長の山田哲氏が同事業の活動方針を、ブランド統括部長の濱口慎治氏が新製品・リニューアル品を発表し、最後に取締役コミュニケーション事業本部長の代島裕世氏が、同社が参画する海洋汚染防止プロジェクト「BLUE OCEAN PROJECTS」の活動などを紹介した。
サラヤは創業から70余年に渡り、衛生・環境・健康をテーマにして世の中の課題解決を目指してきた。戦後に蔓延した赤痢の解決に向け、日本初となる「液体石けん液」(1952〜)を発売し、くり返される院内感染と感染症の解決に「アルコール消毒剤」(1973〜)を、河川汚染の解決に「植物系洗剤」(1971〜)をいち早く提供してきた。また、糖尿病の予防を目的に1995年に植物系甘味料「ラカント」(1999年から「ラカントS」)を開発して食品市場にも参入している。
「世の中の問題をビジネスで解決する」という企業姿勢は国内にとどまらない。ウガンダでは「液体石鹸液」や「手指消毒剤」を用いて衛生環境を改善し、ボルネオでは「植物系洗剤」の原料生産農場の拡大で伐採された森とそこで暮らす動物を守る活動を進めている。さらに「ラカントS」は、北米やASEAN諸国のヘルスケア市場を牽引する存在となっている。
その同社が将来ビジョンとして掲げるのが、「未来を切り開くSDGs イノベイティブカンパニー」である。培ってきた知見をもとにさらなるイノベーションを起こし、国内外の問題を解決する企業になる、という決意を表している。
コンシューマー事業本部もこの将来ビジョンに沿って、「すべてのお客様に驚きと感動を提供」するという方針を定めた。衛生では「ウイルス・細菌に対する最先端のソリューション」、環境では「人と地球にやさしい製品を通じた快適と幸せ」、また健康では「お客様の健康とおいしさと笑顔」の提供に努めていく。
衛生では、エビデンスベースの感染対策商品の提供を強化する。その1つとして、手洗い・ハンドソープや手指消毒剤で培った知見を活かして「介護」の領域を開拓する。介護をする側、される側双方の感染予防に役立つ製品を提供するという。
合わせて「除菌シート」カテゴリーにも挑戦し、「市場に未だ少ないエビデンスベースの製品を投入していく」(山田本部長)。このほか「オーラルケア」カテゴリーでは、口腔内の感染症である歯周病の予防に向けたリニューアル品を、来年3月に発売する。
環境では現在、「地球にやさしい自然派」をうたう5ブランド・5カテゴリーを展開している。全ブランド共通の特徴は石油不使用、防腐剤や合成添加物不使用で、今回この知見を用いた「化粧品」カテゴリーに本格参入する。具体的に、人間の皮脂に近い「ホホバオイル」をエジプトで生産し自社工場で抽出した「スキンオイル」を展開していく。
健康では、植物系甘味料「ラカントS」から派生したラインアップを拡大する。具体的に、健康系菓子カテゴリーから「血糖値」と「美容」にフォーカスした製品をそれぞれ出す。また調味料カテゴリーからは、「腸活」をテーマにした製品を機能性表示食品として3月に発売する。
このほか機能性甘味料カテゴリーに、「カロリー」と「糖質」にこだわった従来品に加え、若者の「低栄養問題」を解決するスムージーや植物系プロテインも提供する。プロテインの素材として、米国子会社が製造するマッシュルームプロテインも活用していく考えである。
ここまで紹介した製品の一部は説明会の中で具体的に示されているが、ニュースリリースの開示前につき紹介は控えた。同社の了解を得た後に改めてHoitto!に掲載する。
更家悠介氏が社長に就任した1998年から、サラヤの業績は右肩上がりが続き、2020年度には大台の1000億円を突破している。成長の背景には、時代のニーズに合わせたマーケティング活動と、それをエビデンスに基づいて形にする研究力の強化、製造能力の強化がある。
衛生の領域では、10年に1度繰り返されるパンデミックに備えた研究・製造施設の増強を繰り返し、今年は日本最大級の手指消毒剤工場を茨城県に竣工した。またコロナ禍には、産学連携で実際のウイルスを用いた製品の効果検証をおこない、昨年に厚労省・消費者庁の了解を得て、具体的なウイルス・細菌の名称を掲げた手指消毒剤の販促を国内で初めて実現した。このほか、東北大学とジェイ・シスと共同でAIを活用したエリア内の感染症拡大を予測するシステムを構築し、近く取引先等にも紹介していく計画である。
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環境では、2008年の教育要綱の変更で「環境教育」が加わったことで、それを学んだ若者が同社製品の購買層となってきたことを指摘する。環境意識の高まりを受け今回、詰め替え製品の剤型をプラスチックから紙パックに変更することも発表した。従来容器と比べて34%のプラスチック削減ができるほか、自立可能で横幅が狭いことから、店頭の陳列効率も改善できるという。
健康では、プラントベース食品市場と植物系甘味料市場の国際的な拡大に伴い、やはり若者を含めた購入者の裾野が広がっていることを指摘する。「健康意識が高いほど素材の安全性を求める傾向があり、植物系甘味料のニーズは今後も伸びると考えられる。創業時から徹底してこだわってきたプラントベースに磨きをかけて、今後も幅広い生活者の様々な課題を解決していきたい」(山田本部長)という。