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実装段階に入った「フェムケア」
エバグリーン廣甚×明治 対談企画

 エバグリーン廣甚代表取締役社長
米原 まき 氏 (右)
明治 グローバルニュートリション事業本部 乳幼児・フェムニケアマーケティング部
        吉田 菜々絵 氏
エバグリーン廣甚・米原氏

――米原さんは、さる8月に開催された第23回JAPANドラッグストアショーで、初企画となった「フェムケアゾーン」を担当されました。その狙いと成果をお聞かせください。

米原氏 開催報告書のアンケート結果を見ても、「フェムケアゾーン」はビジネス来場者の「関心が高かったゾーン」の第3位に選ばれており、ビジネスシーンにおいて「フェムケア」が認知されてきたと感じます。また一般来場者へのアンケートでも、印象に残った項目に「フェムケア」を挙げてくださる方が多く、雲を掴む状態だったフェムケアの売場づくりに、光が差していると思いました。

第23回JAPANドラッグストアショーの「フェムケアゾーン」に出展した明治のブースにて

ショーの出展募集をかけた当初は、「(フェムケアの言葉が)店頭と乖離している」「ショーで何を表現できるかわからない」といった理由で躊躇されていた企業もありました。その中で明治さんがいち早く手を上げてくださり、それに呼応して他企業の出展が増えていったのは嬉しいことでした。

――ゾーンに掲げたテーマ(生理・月経、妊娠・出産、高齢期、セクシャルウェルネス)が理解を得たことも、出展を後押ししたという印象です。

米原氏 ショーに関わる以前は私自身もフェムケアの認識が曖昧でしたが、それは多くのバイヤーさんも、また一般生活者も同じだったはずです。わかりやすい言葉を用い、関連する悩みを紐解きながら、それを売場に落とし込んでいくというストーリーを描いて臨みました。


――セクシャルウェルネスというテーマが発信された意義も大きいと思います。

米原氏 日本の社会は性に対してまだまだクローズドで、年配の関係者に理解をいただけない部分もありました。ただ、人間の三大欲求の1つを満たすことが、人々の幸福につながるのは事実です。当テーマの発信を通じ、オープンな社会と意義ある売場を実現したいと考えました。私もショーの中で発した言葉に恥ずかしさを覚えましたが、実はそうした感情も、おかしなことではないかと思うのです。

――同じ女性として共感される部分が吉田さんもあると思います。

明治・吉田氏

明治・吉田氏 近年は「女性のエンパワーメント」が声高に叫ばれますが、実際にはタブー視されている「女性の〇〇」は数多く存在します。これらのタブーを払拭し、女性のQOLを向上させたい、そのためにも積極的に声を上げていかないといけない、という想いが根幹にあります。

今もっとも大切なことは、「フェムケア」をより身近に感じていただき、皆で行動を起こすことだと考えています。何より私たち明治は、生活者にもっとも身近な「食」を提供している企業です。当社の強みを最大限に活かして、女性の悩みを受け止め、手軽に応援できる商品を提供できる企業になりたいと考えています。

先のドラッグストアショーでは、そうした想いを持った多くの企業が出展していました。中でも当社の向かいに出展されていた大木様のブースはフェムケア関連商品の棚割を提案しており、多くの関係者で賑わっていました。フェムケアの売場に対するぼんやりとしたイメージを、具体的な事例で示してくれたことは、大きな一歩だと思いました。

――とは言え、緒に付いたばかりのフェムケア売場は、まだ正解が見えていません。売場づくりに必要な要件、課題は何でしょうか?

米原氏 大きなハードルの1つが、フェムケア関連の商品が、雑貨、医薬品、化粧品といった複数の部門を跨いで存在することです。ドラッグストアのバイイングは部門ごとに別れており、共通言語を導きにくいのだと思います。

例えば明治さんの「アルファルナ」は食品ですが、パッケージに「生理」を掲げており、ナプキンあるいは医薬品の売場との連動も考えられます。それを実現するには、部門間のベクトルを合わせ、会社の総意として売場を構築する必要があるでしょう。

また、これは弊社だけではないと思いますが、ドラッグストアのバイヤーの多くが男性であることも課題です。この領域の売場づくりは、女性目線で切り込まないと難しいと感じます。部門の壁を取り払い、女性のお客様の悩みに寄り添って、用途機能の観点で訴求することが重要です。


――課題が見えてきました。どこから切り込むべきか、アイディアがありますか?

米原氏 生理中の症状は実に様々ですが、その症状を言葉で認識していても、自分がどれに当てはまるのか、ピンときていない方もいると思います。

そうした方々へ、自分がどの症状に悩んでいるのかを理解させる情報と、解決に導く商品を合わせて売場をつくるのが理想です。その意味でも、パッケージに「生理」を表記した明治さんの「アルファルナ」は、悩みに気づいてもらう「きっかけ」になると考えています。

――「アルファルナ」も発売2年目に突入し、徐々に認知度が高まってきましたね。

吉田氏 当商品は今から7年前に発案したものですが、当時は社内でも「ニッチな市場だから難しい」と言われてきました。しかし調べていくうちに、日本人女性の多くが生理で悩んでおり、その大半が対策を講じていない、つまり、「我慢している」ことを突き止め、潜在的な市場があると確信しました。

食を扱う会社として、その悩みに真摯に向き合い、応援をしたいという想いで開発したのが「アルファルナ」です。当商品を通じて自分と向き合い、心身ともに豊かな生活を送る女性が1人でも増えていけば、こんなに嬉しいことはありません。

一方、当商品は食の分野でも新しい切り口のため、「発売すれば自然に売れていくもの」ではないことも、わかっています。購入してくださる方が、この商品で何を得られるのかを想像させ、理解させるための活動が、何より大事になってきます。

日本社会は性に対する教育が不完全であるので、現在はその啓発に力を入れています。具体的に、健康経営に取り組む企業様、あるいは中高生から大学生に至る若者に向けた啓発セミナーなどを開催しています。特に次代を担う若者には、「生理は我慢するものではない」「様々な選択肢がある」ことを、知ってもらいたいですね。

――メーカーの想いを、ドラッグストアもしっかりと受け止めるべきです。

米原氏 先のドラッグストアショーでフェムケア関連のプロジェクトに参加し、様々な意見を聞くほどに、「なるほど」と腑に落ちるようになりましたが、これも私が女性だからと言う点があります。

ドラッグストア企業はまだまだ男性社会で、それ故お客様のニーズと合致していない部分もあると考えています。男性が悪いと言う訳ではなく、性差の根本的な違いを、互いに理解し合う努力が必要です。

また、私たちは日々、「健康への奉仕」をお題目として唱えていますが、その追求には終わりがなく、生理に関する売場も、改革の余地があります。実際の現場で何が求められているのかをもっと深く知り、ニーズに沿った商品とサービスを磨き続けなければなりません。


――その旗振り役となる商品の1つが「アルファルナ」です。今後明治として、どのような形で売場を、さらにその先にいる生活者をサポートしていきますか?

吉田氏 フェムケアの中に、「食品と言う選択肢もある」ことを、もっと強く発信していかなければならないと考えています。生活者の行動変容を促す啓発活動を、今後も継続していく所存です。

――「アルファルナ」のラインアップも充実してきましたよね。

吉田氏 シリーズの中でもウケが良いのが「チョコレート」です。生理時期に甘いものを欲する方は多いのですが、一口サイズで場所を気にせず気軽に食べられると好評を得ています。

展示会ではパウダータイプにも関心が集まりました。同タイプはノンフレーバーのため、好みの飲み物や料理に入れて食することができます。食習慣に影響を与えない仕様が、評価されたのだと考えられます。

米原氏 チョコレートを摘んで食べるのはストレス解消にも良いですね!

吉田氏 「生理前は胃袋が宇宙になる」と言われ、ついつい食べ過ぎて罪悪感を感じる方も多いのです。そんな時のお供に活用していただき、ほっと一息ついてもらえればと思います。

余談ですが、「チョコレート」のパッケージにはちょっとした工夫があります。店頭では「生理」の文字を目立たせ手にとりやすいようにしていますが、開封するとその文字が切り離され、オフィスの机上に置いても目立たないのです。このアイディアは、弊社の男性社員に出してもらいました。


――商品開発に男性が参加していることは興味深いです。

吉田氏 社内で男性を含めた勉強会を開いた効果もあるでしょう。「甘いものを欲する」や「胃袋が宇宙」などなど、こういった事象が生じることを男性に知ってもらうだけでも、性差の壁や生理に対する誤解がなくなっていくと思います。


――良いお話を聞けました。最後にお互いへの期待を込めて、エールを交換してください!

吉田氏 ドラッグストアは健康を軸にしてお客様と密接に関わる業態です。エバグリーンさんをはじめとするドラッグストア各社には、フェムケアをさらに盛り上げる新しい売場を創造していただき、日本の女性の暮らしをより豊かにしていただきたいと願っております。

米原氏 今はまだ認知度の低いフェムケアですが、その市場は確実に大きくなると認識しています。現在明治さんがおこなっている啓発活動も、明るい未来を示すための投資と捉え、継続していただきたいと思います。

一方の私たちドラッグストアは、メーカーだけでは伝えきれない情報を店頭で積極的に発信すべく努力して参ります。販促の部分では他メーカーにも連携を促し、魅力的な売場づくりを追求していきますので、この部分でもお力添えをお願いします!


――ありがとうございました!


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