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DgS各トップがOTC供給状況にコメント/JACDS

医療用と同じくOTCも〝不足傾向〟に

 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は10月20日(金)に都内で記者会見を開催。主に医療用医薬品の鎮咳去痰薬が不足している現状で、各事業主にOTC医薬品の状況を聞いた。各ドラッグストア企業のトップは声をそろえて「医療用医薬品ほどではないがOTCの鎮咳去痰薬および風邪薬が品薄傾向にある」と話した。またこれから感染症シーズンを迎える中、需要は引き続き伸長していくという予測も共通している。(記事・写真=中西陽治)

池野会長

 新型コロナとインフルエンザのウイルス同時流行が続き、医療用医薬品の咳止め薬と去痰薬が不足している。秋冬の感染症シーズンを迎え、より一層の需要の増加が予想される。これを受けて厚生労働省は18日、主要製薬企業に増産を要請した。

 医療用医薬品の不足と、厚労省による増産呼びかけが大きく報道されることにより、OTC医薬品の鎮咳去痰薬の需要も増大することが見込まれる。その現状についてドラッグストア企業のトップに聞いた。

 JACDS会長の池野隆光氏(ウエルシアHD会長)は「ウエルシアにおいてOTC医薬品の風邪薬や鎮痛薬が売れている。おそらくインフルエンザが夏から流行しだしているからだろう。当然、秋冬の感染症シーズンは更なる需要増が見込まれる」と現状を示した。

江黒副会長

 副会長の江黒純一氏(クスリのマルエ会長)は「OTC薬でも咳止め薬が不足気味になっているが、医療用医薬品は本当に足りない状況。併設する調剤薬局でも10錠単位で近隣店舗間でフォローしあっている。風邪薬、鎮痛薬も不足しているが、特に咳止め薬の不足感はひときわ大きい」と話す。

 医師からは『なぜOTC医薬品は店頭に並んでいるのに医療用医薬品は不足しているのか』と不満を漏らされることもあるという。特に医療用医薬品は一度に提供する錠数が多いため、不足を招きやすくなっている。

根津副会長

 同じく副会長の根津孝一氏(ぱぱす会長)は「OTC医薬品の風邪薬が割り当て式になっている。確保するのが大変な状態だ。薬全体が足りない、と調剤部門からも声が上がっている」と危機感を滲ませた。

ウイルス感染症と風邪症状の対策が混在しているため、OTC医薬品の風邪薬に手が伸びている現状もあるようだ。

需要に応じつつ薬物濫用防止にも対応

田中事務総長

風邪薬をはじめとしたOTC医薬品の需要が高まると、薬物濫用との線引きが難しくなってくる。池野会長は「現在、ウエルシアではOTC医薬品を異常な数を購入する現場は見受けられない。しかし需要が伸びると同時にそういった風邪薬や鎮痛薬がどういった使われ方をされているか、販売者も注視しなければならないだろう」と薬物濫用防止に注意を促した。

 事務総長の田中浩幸氏は「今後の動向次第では、OTC医薬品の適正使用に向けたメッセージを出す必要がある」と話した。

 多くの店舗が調剤併設型のドラッグストアである大手チェーンにおいて、医療用医薬品とOTC医薬品の安定的な在庫確保は大きな課題だ。特に店頭では、昨今問題視されているOTC医薬品を用いた薬物濫用を防ぎつつ、適切な供給も求められる。

 新型コロナが第5類に移行されて初めての冬を迎える。先般の医療用医薬品不足のニュースが、消費者意識にあらぬ混乱を引き起こし、OTC医薬品の供給に余波が及ばないよう、冷静な判断が必要だ。

都内で開催された第186回定例合同記者会の模様