株式会社ウェザーニューズが、2024年春の花粉シーズンに向け、「第一回花粉飛散傾向」(スギ・ヒノキ、北海道はシラカバ)を発表しました。2024年春の花粉の飛散量は、北日本の一部を除いた広い範囲で2023年春よりも少なくなるものの、平年(過去10年の平均)と比べると、平年並み〜平年を上回るエリアが多い予想です。花粉の飛散量は前年夏の天候と年ごとの飛散量の増減傾向をもとに予想しています。今年の夏は全国的に記録的な暑さとなり、東日本と北日本を中心に日照時間が平年を上回ったことで、雄花の生長に適した天候となりました。このため、2023年春に飛散量が多かった反動で2024年春は飛散量が少なくなる「裏年」傾向のエリアでも、平年並み〜平年を上回る飛散量を予想しているところが多くなっています。油断せずに対策をシッカリと行ってください。
◆ 2024年「第一回花粉飛散傾向」
<来春の花粉飛散量の傾向:広範囲で平年並み〜平年を上回る予想>
2024年春の花粉飛散量は、北日本の一部で2023年を大きく上回るものの、その他のエリアでは広範囲で2023年を下回る予想です。2023年の飛散量が記録的に少なかった北海道ではその反動で400%程度の飛散量になると予想しています。一方、2023年に飛散量が多かった関東や西日本では飛散量が減少し、2023年の半分程度になる地域もあるとみています。全国平均では2023年比で68%となる予想です。
平年(2014〜2023年の平均飛散量)と比べると、東日本と北日本を中心に平年をやや上回るエリアが多く、西日本では概ね平年並みのエリアが多くなっています。全国平均は平年比で126%となる予想です。
<飛散量予想の根拠:2023年夏の天候と年ごとの増減傾向>
花粉の飛散量予想は、主に前年の夏の天候と年ごとの飛散量の増減傾向を基に算出しています。2024年の飛散量予想の背景は以下の通りです。
〜東・北日本を中心に多照かつ記録的な暑さに〜
前年の夏に十分な日照があり、気温が上がるほど花粉の発生源となる雄花の生長が促される傾向があります。よく晴れた暑い夏ほど光合成が盛んになるためです。
2023年は東海や西日本が6月までに梅雨入りし、関東甲信や北陸、東北も6月上旬に梅雨入りしました。6月中は梅雨前線が本州の南の海上に停滞する日が多く、梅雨前線から遠い北日本では晴れて記録的な暑さとなりました。7月に入ると太平洋高気圧の勢力が強まり中旬から下旬にかけて梅雨明けしたエリアが多くなりました。北日本や東日本では平年に比べて気温がかなり高く、北日本では記録的な高温が続きました。8月は前線が北海道付近~日本海に停滞する日が多く、日本の南の海上には熱帯低気圧や台風が相次いで発生しました。暖かい空気とフェーン現象の影響で北日本や東日本、近畿・中国では平年に比べて気温がかなり高くなりました。西日本太平洋側では台風6・7号が接近した影響で日照時間が平年をやや下回りました。
2023年夏の天候を総合すると、暖かい空気に覆われた日が多くなったため、北日本や東日本、西日本で気温が平年に比べてかなり高くなりました。気象庁の統計開始(1946年)以降、北日本と東日本は1位、西日本では1位タイの高温となりました。太平洋高気圧の影響で晴れた日が多くなった東北や東日本では日照時間が平年を大きく上回り、雄花の生長に適した天候となりました。一方で、前線や台風の影響を受けやすかった九州や四国では気温は平年を上回ったものの、日照時間は平年並みか平年をやや下回り、雄花の生長にはやや不向きな天候となりました。
〜2024年は西・東日本を中心に飛散量の少ない「裏年」の見込み〜
花粉の飛散量は周期的に増減し、花粉の飛散が多い期間と少ない期間が交互に訪れる傾向があります。飛散量が多い年を「表年」、少ない年を「裏年」と呼びます。エリアによって増減の周期は異なり、「表年」「裏年」も異なります。夏の天候の影響で「表年」「裏年」の区別が不明確になる年もあります。
2023年は西日本と東日本を中心に飛散量が多く、「表年」となった地域が多くなりました。その反動で2024年の飛散量は前年を下回る「裏年」になると見込んでいます。一方、北海道や東北北部では2023年の飛散量が前年を下回り、「裏年」となった地域が多くなりました。2024年は「表年」となり、飛散量が2023年を上回る地域が多くなると予想しています。
◆ エリア別の2024年花粉飛散傾向
【北海道】高温・多照の夏 「表年」傾向で飛散量は大幅増
2023年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年に比べてかなり高くなりました。日照時間も平年を上回り、雄花の生長に適した天候となりました。また、2023年の飛散量は平年、前年を大きく下回りました。このため、2024年は飛散量が多くなる「表年」になると見込んでいます。
2024年春のシラカバ花粉の飛散量は、2023年の401%、平年の137%になる予想です。飛散量が多くなり、花粉症の症状が重くなる可能性があります。特に晴れて風が強い日には花粉が大量に飛散するため、しっかりと対策をするようにしてください。
【東北北部】高温・多照の夏 「表年」傾向で飛散量は大幅増
2023年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年に比べてかなり高くなりました。日照時間も平年を上回り、雄花の生長に適した天候となりました。また、2023年は青森県や秋田県では飛散量が平年、前年を下回った一方、岩手県では平年を上回ったものの前年より少なくなりました。このため、2024年は飛散量が多くなる「表年」になると見込んでいます。
2024年春の飛散量は、東北北部エリアで平均すると2023年の142%、平年の138%になる予想です。特に青森県や秋田県では2023年の2倍近い飛散量になる予想です。晴れて風が強い日には一段と多くの花粉が飛散するため、シッカリとした花粉症対策をするようにしてください。なお、東北北部ではスギ花粉の飛散が中心となり、ヒノキ花粉はほとんど飛散しません。
【東北南部】高温・多照の夏 「裏年」傾向も飛散量は平年を上回る
2023年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年に比べてかなり高くなりました。日照時間も平年を大きく上回り、雄花の生長に適した天候となりました。また、2023年の飛散量は平年、前年を大きく上回りました。このため、2024年は飛散量が少なくなる「裏年」になると見込んでいます。
2024年春の飛散量は2023年の61%、平年の133%になる予想です。大量飛散の翌年にあたるため2023年に比べると飛散量は少なくなるものの、夏の高温・多照が影響し平年よりはやや多くなる予想です。特に晴れて風が強い日には大量の花粉が飛散するため、シッカリとした花粉症対策をするようにしてください。なお、東北南部ではスギ花粉の飛散が中心となり、ヒノキ花粉の飛散は比較的少ない傾向にあります。
【関東・山梨】高温・多照の夏 「裏年」傾向も飛散量は平年を上回る
2023年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年に比べてかなり高くなりました。日照時間も平年を大きく上回り、雄花の生長に適した天候となりました。また、2023年の飛散量は平年、前年を大きく上回りました。このため、2024年は飛散量が少なくなる「裏年」になると見込んでいます。
2024年春の飛散量は2023年の60%、平年の118%になる予想です。大量飛散の翌年にあたるため2023年に比べると飛散量は少なくなるものの、夏の高温・多照が影響し平年に比べると同程度かやや多くなる予想です。特に晴れて風が強い日には大量の花粉が飛散するため、シッカリとした花粉症対策をするようにしてください。
【北陸・長野】高温・多照の夏 「裏年」傾向も飛散量は平年を上回る
2023年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年に比べてかなり高くなりました。日照時間も平年を大きく上回り、雄花の生長に適した天候となりました。また、2023年の飛散量は平年、前年を大きく上回りました。このため、2024年は飛散量が少なくなる「裏年」になると見込んでいます。
2024年春の飛散量は2023年の71%、平年の157%になる予想です。大量飛散の翌年にあたるため2023年に比べると飛散量は少なくなるものの、夏の高温・多照が影響し平年に比べると多くなる予想です。油断することなく、シッカリとした花粉症対策が必要になります。なお、北陸エリアではスギ花粉の飛散が中心となり、ヒノキ花粉の飛散は比較的少ない傾向にあります。
【東海】高温・多照の夏 飛散量は平年を上回る予想
2023年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年に比べて高くなりました。日照時間も平年を上回り、雄花の生長に適した天候となりました。また、2023年の飛散量は平年、前年を上回りました。そのため、2024年は「裏年」傾向となりますが、雄花の生長に適した天候となったため、飛散量の減少は限定的になるとみています。
2024年春の飛散量は2023年の96%、平年の142%になる予想です。2023年と比べると同程度ですが、夏の高温・多照が影響し平年と比べると多くなる予想です。特に晴れて風が強い日には大量の花粉が飛散するため、シッカリとした花粉症対策をするようにしてください。
【近畿】高温・多照の夏 「裏年」傾向も飛散量は平年を上回る
2023年の夏は気温・日照時間ともに平年を上回り、雄花の生長に適した天候となりました。また、2023年の飛散量は平年、前年を大きく上回りました。このため、2024年は飛散量が少なくなる「裏年」になると見込んでいます。
2024年春の飛散量は2023年の61%、平年の128%になる予想です。大量飛散の翌年にあたるため2023年に比べると飛散量は少なくなるものの、夏の高温・多照が影響し平年に比べると同程度かやや多くなる予想です。特に晴れて風が強い日には大量の花粉が飛散するため、シッカリとした花粉症対策をするようにしてください。
【中国・四国】大量飛散の反動 前年比で半減もほぼ平年並み
2023年夏は気温が平年を上回り、中国地方では日照時間も平年をやや上回りました。一方、台風などの影響で湿った空気が流れ込みやすくなった四国地方では、太平洋側を中心に日照時間が平年をやや下回りました。また、2023年の飛散量は平年、前年を大きく上回りました。このため、2024年は飛散量が少なくなる「裏年」になると見込んでいます。
2024年春の飛散量は2023年の52%、平年の107%になる予想です。大量飛散の翌年にあたるため2023年に比べると飛散量は少なくなるものの、平年と同程度となる予想です。特に晴れて風が強い日には大量の花粉が飛散するため、シッカリとした花粉症対策をするようにしてください。
【九州】大量飛散の反動 前年比減もほぼ平年並み
2023年の夏は暖かな空気が流れ込みやすくなったため気温は平年を上回りましたが、湿った空気や台風などの影響を受けたことで日照時間は北部で平年並み、南部では平年よりやや少なくなりました。また、2023年の飛散量は平年、前年を上回りました。このため、2024年は飛散量が少なくなる「裏年」になると見込んでいます。
2024年春の飛散量は2023年の72%、平年の113%になる予想です。2023年に比べると北部では概ね同程度、南部では半分程度になる予想です。平年比では概ね同程度となる地域が多くなる予想です。前年より少ない飛散量になる地域が多い予想ですが、特に晴れて風が強い日には大量の花粉が飛散するため、シッカリとした花粉症対策をするようにしてください。
◆ 参考:ウェザーニューズの花粉飛散傾向と観測網について
本プレスリリースでは、これまで「花粉プロジェクト」で蓄積してきた花粉の観測データ、年ごとの飛散量傾向、今夏の天候をもとに来シーズンの花粉飛散傾向を発表しています。また、11月に全国のウェザーニュースアプリのユーザーと花粉の雄花の生長状況を調査する「雄花調査」を実施し、その結果に応じて飛散量予想を更新する予定です。なお、「第二回花粉飛散傾向」は、飛散量予想に加えて飛散開始時期や飛散ピークについてまとめ、12月上旬に発表予定です。