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ビフィズス菌(GCL2505株)とイヌリンで認知機能改善効果

江崎グリコ「タンサ脂肪酸プロジェクト」に新データ

江崎グリコが、短鎖脂肪酸を多く生み出す※1 同社独自のビフィズス菌・GCL2505 株と水溶性食物繊維イヌリンによる認知機能の改善効果を確認した。この研究成果は 2023 年 9 月 27 日(水)に国際科学雑誌 「Nutrients」に掲載されている。同社が進める短鎖脂肪酸の研究と啓発活動、通称「タンサ脂肪酸プロジェクト」に関するエビデンスがまた1つ加わった。 (GCL2505 株=Bifidobacterium animalis subsp. lactis GCL2505

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■論文タイトル・著者名 
Effect of Continuous Ingestion of Bifidobacteria and Dietary Fiber on Improvement in Cognitive Function: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial.
Naoki Azuma, Takashi Mawatari, Yasuo Saito, Masashi Tsukamoto, Masatoshi Sampei and Yoshitaka Iwama. 
Nutrients 2023, 15(19), 4175; https://doi.org/10.3390/nu15194175


物忘れの自覚がある、または他人から物忘れを指摘されたことのある、健常な成人男女 80 名を対象 にしたヒト試験の結果、GCL2505 株とイヌリンを 12 週間摂取した群は、プラセボ群と比較して、 腸内のビフィズス菌が増え、認知機能が改善された。これは GCL2505 株とイヌリンの摂取によって腸内のビフィズス菌が増え、短鎖脂肪酸が多く生み出されたため と考えられ、GCL2505 株とイヌリンを継続的に摂取することで認知症を予防できる可能性が示唆された。 

 図 1. 認知機能検査(コグニトラックス検査)結果抜粋 *:群間で有意な差が認められた(p < 0.05)

アルツハイマー(AD)に根本治療なし
軽度認知障害(MCI)は回復が可能!

現在日本には 600 万人以上の認知症患者がいるとされ※2、これはおよそ 20 人に 1 人にあたる計算となる。世界には現在 5,500 万人の患者がおり、2030 年には 7,800 万人、2050 年には 1 億 3,900 万人に増加すると推定さる※3。認知症は世界的な社会課題であり、解決策が常に求められている。 

認知症の大多数であるアルツハイマー病(AD)は、脳細胞の減少によって脳が萎縮することで引き起こされる。AD は一度発症すると症状を改善させることが困難な病気で、現在の治療薬では病態の進行を 遅らせることしかできないため根本的な治療法がない。対策としては発症する前の予防がとても重要となる、ADの前段階にあたる状態として軽度認知障害(MCI)という状態があるが、MCI は正常な状態と認知症の中間の状態で、正常状態に回復することが可能と言われる。そのため普段の生活の中で MCI から回復させる方法、さらに MCI になることを防ぎAD 患者を増やさない対策 が求められている。 


短鎖脂肪酸の可能性~ AD 発症を予防

AD は肥満など身体の炎症と深い関係があることが最近分かってきた※4。肥満や炎症を抑えることで AD の進行を抑えることが期待されている。 同社独自のビフィズス菌である GCL2505 株は、健康な成人から分離されたプロバイオティクス株で、これまでの研究により、内臓脂肪の低減効果が明らかにされている※5。また、GCL2505 株はヒトの腸内にいる一般 的なビフィズス菌と比べて短鎖脂肪酸を多く産生することも明らかになっている※1。その短鎖脂肪酸と炎症の 関連性についても研究が進む中で、 GCL2505 株とイヌリンによる認知機能への影響を確認する研究に着手している。 

現在、専用の治療薬が国内外で承認に向かうなど、AD の解決に向けた動きが世界中で加速しているが、認知症を予防する有効な方法は未だ確立されていない。そんな中、今回の結果によって、GCL2505 株 とイヌリンの継続的な摂取は認知機能の改善につながる有効なアプローチである可能性が示唆された。つまり日常的に GCL2505 株とイヌリンを取ることで、AD 発症を予防できるということになる。 

図 2. GCL2505 株とイヌリンによる認知機能改善の推定作用機序

【ご参考】 短鎖脂肪酸とは 
短鎖脂肪酸とは、ビフィズス菌などの腸内細菌が水溶性食物繊維やオリゴ糖などをエサにして作る腸内細菌 代謝物質のことで、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがその代表。近年の研究で、体脂肪の低減、基礎代謝の向 上などの抗肥満作用をはじめ、免疫やストレス、認知機能への作用など、様々な機能を持つことが明らかになっ ている。 

【ご参考】江崎グリコの「タンサ脂肪酸プロジェクト」について 
江崎グリコは、人々の健康寿命を延伸することをひとつの使命と考え、腸の健康と腸内細菌の研究に注力してる。近年、腸と密接に結びついた様々な疾病が人々の健康課題となる中、ビフィズス菌と短鎖脂肪酸の研究と啓発活動によって健康寿命の延伸に寄与したいと考え、「タンサ脂肪酸プロジェクト」を2022 年 6 月に立ち上げた。生活者の方々への短鎖脂肪酸に関する分かりやすい情報の発信と、当社独自のビフィズス菌 である GCL2505 株のヒトへの作用に関する臨床研究等を進めている。 

タンサ脂肪酸プロジェクトサイト:https://cp.glico.com/tansa/ 
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※1  Aoki et al. Sci. Rep. 2017, 7, 43522.
※2  首相官邸、「認知症年齢別有病率の推移等について」(平成 26 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業
九州大学 二宮教授)による速報値
※3  WHO, “Global status report on the public health response to dementia Executive summary”,
2021-09
※4  Holmes et al. Neurology. 2009, 73, 768–774.
※5  Takahashi et al. Biosci. Microbiota Food Health. 2016, 35, 163–171.