キャッシュレス決済サービスと情報プロセシングを推進する株式会社トランザクション・メディア・ネットワークス(以下TMN)と、医療系AIベンチャーの株式会社mediLab(以下 mediLab)が、業務提携を行い、調剤薬局向けDXサービス「RXクラウド」の提供を開始した。
医療費の増大が社会問題化する中、厚生労働省は、2015年に提示した「患者のための薬局ビジョン」において、医療費の適正化などを目的に、2025年までにすべての薬局を“かかりつけ薬局”にすることを目標に掲げている。
しかし、市中薬局にとって患者がかかる全ての医療機関の処方箋を受け付け、OTC市薬品*1も含めた患者の服薬情報を一元的・継続的に管理し、健康相談等にも対応することは容易ではなく、調剤作業の効率化や適正薬剤管理、患者情報管理の強化がかかりつけ薬局化を推進する上での課題となっている。
こうした状況下において、TMNとmediLabは、TMNの年間20億件の決済処理実績や小売店向けのDXサービスの展開により蓄積された膨大なデータ処理に関する技術と、mediLabの処方箋等医療情報のAI解析技術を活用することで、調剤薬局が大掛かりなシステムや専門人材に対する投資することなく、薬局業務をアシストするDX化が可能と考えサービス開発に至った。
「RXクラウド」は、「患者中心の丁寧なサービス」を基本コンセプトに、調剤薬局の現場業務に携わってきた両社のメンバーが、薬剤師・薬局事務員の目線で作業の効率化と安全性を両立する機能を考案し、クラウドサービスで提供するもの。まずは、以下の三つの機能からスタートする。
処方箋データ化機能:処方箋をスキャンしクラウド上でデータ化する。一様でない処方記載方法や医師の記法の癖に対応してAIが補正する。
AIリスク検知機能:AIが処方内容や用法用量の表記等をチェックし、要確認事項の通知や相互作用等のリスクを検知する。
ピッキングアシスト機能:確定した処方内容でピッキングリストを生成し、ピッキング作業をアシストするとともに、レセコン*2へデータ連携が可能な二次元コードを表示する。
この三つの機能を一括して提供することで、全ての処方箋を二次元コード付処方箋に変え、レセコンに入力する作業負荷と、調剤過誤やヒヤリハットの発生リスクを低減すると共に、患者の待ち時間を大幅に削減することが期待できる。
「RXクラウド」では、上記の機能に加えて薬局の付加価値向上を支援する様々な機能を準備している。「対物業務」の効率化を図る「画像認識薬剤鑑査支援機能」、「適正在庫管理機能」等、「対人業務」の強化に寄与する「重複投与や飲み合わせと言った処方内容のチェック及び処方提案機能」、「交付後薬剤の副作用・服用状況チェック及びフィードバック機能」、更には「OTC医薬品の販売アシスト機能」等の開発を検討している。
TMNが推進する情報プロセシングは、あらゆる業界の垣根を超え、あらゆるデジタルデータのゲートウェイとなることをグランドデザインとして描いており、現在の主戦場となっている流通領域に加え、モビリティや、コロナ禍によりデジタル化の遅れが浮き彫りになった医療領域へと事業領域を拡大してきている。今後も、TMNは情報プロセシングにより、業界特有の課題や社会課題の解決および生活者の利便性向上に資する取り組みを続けていく構え。
*1:薬局やドラッグストアなどで、患者自身が選択して購入できる医薬品
*2:診療報酬明細書(レセプト)を作成するコンピュータや専用のソフトウェア、システムのこと