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ジャーナリスト・山本武道の交流録
キリン堂HDの寺西忠幸さんへ。100歳薬剤師を目指して…

キリン堂ホールディングスの創業者で代表取締役会長の寺西忠幸さんが退任され、相談役に就任する。寺西さんは1929年3月生まれの94歳。ドラッグストア業界では最長老かもしれない。

来月末に相談役になる寺西忠幸さん

顧みれば、寺西さんとの出会いは、VC グループAJDの会合だった。当時、チェーン大会は各地で開催されていて、翌日は新業態開発のセミナーが行われていた。その主宰者の一人が寺西さんで、米国流通視察の最新情報や、これからのドラッグストアが目指す方向性等々、事務局に無理を言って参加させていただいた私は、夢中で講義に聞き入ったことを思いだす。

寺西さんは、AJD10代目の社長、1999年に設立されたJACDS(日本チェーンドラッグストア協会)の2代目会長にも就任、活躍されている。

私の手元に、当時在籍していた新聞社で『ドラッグストア今昔物語』を連載した中で、キリン堂のストーリーを紹介させていただいた取材の際に、寺西さんからプレゼントされた一冊の書がある。キリン堂の創業60周年の記念誌だ。日付は2021年1月14日。書には、「自分が自分を教育しつつ、次々と目標のハードルを越えて成果を実現する」と寺西さん自筆の文章が綴られ、そして巻頭で次のように述べている。

「改めて創業の頃を振り返りますと、夕刻の市電が停留所に留まり、お客様がお店に向かって歩いてこられる姿を観た時の胸躍る喜び…疲れた表情で来店されても、お帰りの際に笑顔を見せてくださった時のさらなる喜び…夜遅い最後のお客様の後ろ姿に手を合わせたことも幾度となくありました。ただただ夢中で何ものかに突き動かされるように、店頭に立っていた時のことが鮮明に思い出されます」

1955年5月10日、寺西さんは大阪市内に15坪の調剤室のある薬局を開局した。1日に1万円の売上げを目指して、早朝から夜の11時まで営業し薬局製剤を中心に推奨し、やがて、他店との差別化へ未病対策を主体に店頭で相談にのる一方、健康食品の製造・販売にも取り組んできた。

新しい業態を開発し、 “未病と予防”をキーワードとして地域住民のヘルスケアニーズに対応してきたキリン堂。創業者・寺西さんのフィロソフィーは次世代にバトンタッチされ、新しいビジネス創造に向けてさらなるチャレンジが始まる。人生100年時代。寺西さんも、ぜひ100歳薬剤師を目指してほしい。