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プリメディカ・富永朋代表取締役社長兼CEOインタビュー
多くの方たちの疾患リスクを測定することで
予防に繋げ病気にならない体づくりに貢献したい

ヘルスケアINTERVIEW
新たな予防医療の実現を目指すプリメディカの富永朋代表取締役社長兼CEOに聞く
『健康寿命延伸時代におけるセルフプリベンションの武器』


多くの方たちの疾患リスクを測定することで
予防に繋げ病気にならない体づくりに貢献したい


健康寿命延伸への武器は“未病と予防”。自分の健康は自らが守る時代が到来した今、ますます国民の意識は、セルフケア、セルフプリベンション(自己予防)に移行しつつある。こうした中、「病気のリスク検査から始まる予防医療を広く世の中に浸透させたい」として2012年に誕生した企業が、11年目、新たな航海に向けて船出した。ノーリツ鋼機のグループのプリメディカだ。ゼロから予防医療ビジネスの創出に取り組み10年が経過した、同社の富永朋代表取締役社長兼CEOに、これまでの歩みと今、これからを聞いた。記事=ヘルスケアジャーナリスト 瀬戸 寛(せと かん)


富永社長が予防医療ビジネスに関与する前について教えてください。


富永朋代表取締役社長兼CEO

2012年に、当社は予防医療事業を開始しましたが、それまでは私は外資系のコンサルティング会社で10年ほど勤務していました。企業再生やM&A、成長戦略の立案など、さまざまなプロジェクトに従事してきましたが、経営コンサルティングは基本的には戦略を練って実行支援するまでで、実際に事業を動かすのはクライアント企業ですので、やがて、そちら側の経験を積みたいと思うようになりました。

もともと私自身、35歳までに経営者になることを目指していまして、事業会社での経験を積むために転職活動を行い、いくつかの企業からオファーがありましたが、すべてお断りをして最終的に選択した企業が、当社の親会社であるノーリツ鋼機でした。  

その理由は当時、新たなビジネスに挑戦しようとして子会社を作り、同時にバイオベンチャーとの業務提携をきっかけに予防医療ビジネスへの参入を計画していたノーリツ鋼機が、事業を推進する人材が不足していて、「今、入社してもらえればすべて任せる」とのことでしたので、即決して入社し現在に至っています。


では、なぜ予防医療ビジネスに取り組んだのか、そのきっかけは?


ノーリツ鋼機では、いくつかの医療事業への参入を模索した中でバイオマーカーに目を付けました。重大疾患について、これまでの検査よりも、早期にその発症リスクがわかるバイオマーカーがあれば、そこから生活習慣を改善していくことで予防に繋がる、我々が取り組むべきは、まさにコレだと思いました。

実は私事ではありますが、小学5年生の時に父を心筋梗塞で亡くしています。直前の健康診断では何も問題なかったのですが、突然自宅で倒れ救急車で運ばれ、そのまま帰ってきませんでした。考えて見れば、お酒も結構飲み、タバコもかなり吸っていましたから、それなりにリスクを抱えていたと思います。

父が亡くなってからは生活が一転して大変でしたが、周囲の方々に助けられて、なんとか苦しい時期を乗り越え、そして大学にも進学できたことは、自分は運がよかったなと思うようになりました。学生時代に、これからの社会人人生で何がしたいかを考えたことは、『今の自分があるのは、周囲の方々の支援や社会保障のおかげでもあるので、経験を積んでいつか広く社会に恩返しがしたい」でした。

そして、コンサルティング会社に就職して9年経って、転職活動をしていた2011年当時、ノーリツ鋼機が業務提携をしたバイオベンチャーが持っていた数あるシーズの一つが脳梗塞・心筋梗塞リスク検査(後のLOX-index検査)で、これがもしも20年以上前に存在し、父が受診していたら助かっていた可能性があるのではないかと思い、「これは絶対に事業化して世の中に広めるべきだ」と確信しました。

また、働き盛り世代の死因の1位は心疾患であり、私がそうであったように、親を突然亡くして悲しんでいる子供たちも多く存在していること。そして心疾患だけではなく、さまざまな疾患リスクがわかる検査を世の中に広められれば、多くの人々が病気のリスクに気づき予防することができるようになるのでは、との思いから、2012年にゼロから予防医療の検査事業をスタートさせました。まずはLOX-index検査で全国の医療機関販路を開拓し、そこに、さまざまな大学・研究機関との協業で開発した新しいリスク検査も展開することで、その普及に全力を注いでいます。


事業の開始から10年が経過しましたが、どのような検査に取り組んでいますか?


医療の流れは治療から予防へとシフトしつつあり、予防の重要性が指摘され、自分で自分の健康を守る風潮が強まり、企業でも健康経営を実践し、働くスタッフの健康を守ることの必要性も指摘されています。

当社は、病気のリスク検査から始まる予防医療を世の中に広く浸透させ、疾患の発症を減らして医療費抑制と健康寿命延伸に結びつけられればと考えております。

将来発症するかもしれないさまざまな疾患のリスクを把握し予防することで、病気にならない体作りへ。具体的には、脳梗塞・心筋梗塞、アルツハイマ―型認知症、膵臓がん、大腸がん、慢性腎臓病といった疾患リスク検査の展開に取り組んでおります。

当社の疾患リスク検査を導入いただいている医療機関は現在全国に3,300あまり。検体を回収する物流網も重要ですので、全国の臨床検査会社と提携して小さな診療所の依頼であっても対応できるようになっております。


これからは、国民一人ひとりのセルフケア、セルフプリベンション意識の向上が不可欠ですが、医療機関以外に地域住民のヘルスケアニーズに対応するドラッグストアや調剤薬局におけるリスク検査の普及については?


『Flora Scan®』

今のところ当社の検査サービスは、医療機関を通じて普及していますが、ドラッグストアや調剤薬局店頭では、既に他社の尿や便の検査が、物販として取り扱われていますから、当社としても関心のある普及ル―トの一つと考えています。こうしたルートへご紹介したいのが、創設10年目の昨年12月に上市した腸内フローラ検査サービス『Flora Scan®』です。

当社が提供する腸内フローラ検査サービスは、NHKテレビ『あさイチ』でも紹介されました。番組内では「増やそう!育てよう!腸内細菌」をテーマに、日本人特有の腸内フローラタイプ(エンテロタイプ)と食との関連性についての特集で、『Flora Scan®』を監修いただいている京都府立医科大学の内藤裕二先生、摂南大学の井上亮先生も出演され、腸内フローラタイプ、腸内環境を整える食事について解説されましたので、すごい反響でした。


具体的には、どのような検査ですか?


最新の研究で、腸内フローラが我々の健康だけでなくさまざまな疾患にも関与していることがわかってきました。この検査サービスは、自宅で便を専用容器に採取して封筒に入れて送っていただけば、日本人特有の腸内フローラタイプが把握でき、また、さまざまな疾患との関連性を調べられるのが特徴です。

日本人1,803名を対象とした研究から、腸内フローラをタイプA:タンパク・脂肪、タイプB:バランス食、タイプC:アンバラス食、タイプD:タンパク・脂肪・糖、タイプE:ヘルシー食の五つに分類し、それぞれ特徴的な菌と食事傾向を検査結果レポート並びに検査キットに添付されているアドバイス冊子を通して知ることができます。

腸内の有用菌ですが、京丹後長寿コホート研究によれば、都市部と、100歳以上の長寿者の割合が全国平均の3倍で健康長寿者が多いことで知られている京丹後市を対象に実施した腸内フローラの比較調査では、京丹後市の高齢者の腸内には、ビフィズス菌以外にファーミキューテス門と呼ばれるグループの細菌が多いことが明らかになりました。


これからはどのような展開を目指すのですか?


これまで、さまざまな大学との共同研究を進めてきましたが、これまで同様に新しいバイオマーカーを検査サービスとして事業化していくことはもちろん、企業が働く人たちのための取り組む健康経営へのサポート、長期的には予防医療に関心の高い国々への海外展開にも取り組んでいきたいと考えています。

<取材を終えて>

父親の突然の死をきっかけに、「支えていただいた多くの方々や社会に恩返しをしたい」として、ゼロから始まり今日に辿り着いた予防医療ビジネス。「当社の検査が、多くの人々にとって、日々の生活習慣改善のきっかけとなってほしいというのが我々の願いでもあります」と話す富永社長。

取材の窓口となっていただいたプリメディカのスタッフは、入社した動機について、こう話していた。

「富永さんのお父様のお話も踏まえた、この事業を世の中に広めたいという熱い思いに触れて決めました」と話すスタッフの目はとても輝いていた。

そして多忙な富永社長からは、さまざまなリスク検査がある中で腸内フローラのタイプとさまざまな疾患との関連性がチェックできるだけでなく、さらに特徴的な菌と食事傾向を紹介したアドバイス冊子も添付されている『Flora Scan®』のことも詳しくお聞きした。

健康寿命延伸時代にあって、セルフケア、セルフプリベンションが不可欠になった今、このサービスは即ヘルスケア最前線で活躍するドラッグストアや調剤薬局における腸活相談の武器としての活用に期待したい。


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