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洗濯槽に入れるだけで「ファインバブル」が発生⁉️

サラヤの新発見
発酵由来の天然界面活性成分=「ソホロ」が凄い!

環境や人体への影響に配慮した自然由来の洗濯用洗剤が注目されている。その1つ、サラヤの「ハッピーエレファント ランドリーパウダー」は、植物油と糖分を原料に、酵母が発酵によって生産する天然の界面活性成分「ソホロ」と、食品成分のみで作られる環境にも肌に優しい製品で、洗浄力も一般的な合成洗剤に引けを取らない。「天然成分と食品成分だけの洗剤が何故、合成洗剤に劣らぬ洗浄力を発揮するのか?」その疑問に対して先頃同社は、洗浄能力について驚きの事実を公表した。同製品を水の中に入れるだけで、微細な泡、「ウルトラファインバブル」が発生するという(特許出願中)のだ。「ウルトラファインバブル」を発見した経緯・背景と共に、同社が生み出した天然界面活性成分「ソホロ」の凄さについて解説する。(取材と文=八島 充)

日本発の技術「ファインバブル」

一般的に、液体中に空気などを送り込むと気泡が発生する。国際標準化機構(ISO)はそれら気泡を直径で分類しており、100μm以上が非ファインバブル、100μm未満がファインバブルとなる。

微細な気泡を散気することで養殖カキの生育を促進させた事例が1998年に発表された

非ファインバブルが浮上して水面で破裂するのに対し、ファンバブルはゆっくり浮上しながら収縮して消えるか、浮上せずに水中にとどまる性質がある。前者(直径1〜100μm未満)を「マイクロバブル」、後者(直径1μm未満)を「ウルトラファインバブル」と呼ぶ。

飲料や洗剤など、気泡を活用した製品は古くからあるが、日本では1998年に微細な気泡を送り込んで牡蠣の育成を促した成果が「マイクロバブル」の名称とともに発表され、以降、様々な産業で応用され普及が進められている。

実はこの技術、日本が最も進んでいるという。特に洗浄領域での実用化事例は多く、トイレの洗浄にファインバブル水を用いたことで洗浄効果がアップし清掃時間と使用水量の削減に成功したとの報告がある。近年では洗浄と節水の効果がある洗濯機やシャワーヘッドなども発売され、市場を形成している。

生分解性と安全性が高いソホロ

 「ファインバブル」の生成には機械を用いることが多いが、サラヤは、洗浄剤を水に溶かすだけで「ファインバブル」を生成する技術の確立を目的に研究を続けてきた。

同社のバイオケミカル研究所 MDRグループに所属する謝花喜史課長補佐は、洗濯用洗剤「ハッピーエレファント ランドリーパウダー」の開発時、水に投入した際に、やけに白濁するのを見て、「もしかしたらこれは『ファインバブル』ではないか?」と直感したという。

 サラヤ・バイオケミカル研究所 MDRグループ課長補佐の謝花 喜史 氏

その「ハッピーエレファント ランドリーパウダー」に使用される洗浄成分は「ソホロ」と呼ばれる自然由来の界面活性成分で、植物油と糖分をある酵母に与え、発酵させることで生み出される「バイオサーファクタント」の1つである。合成界面活性剤を使用した一般的な洗剤に劣らぬ洗浄力でありながら、高い生分解性を持ち、自然由来のため安全性が高いのが特徴だ。

「バイオサーファクタント」にいち早く着目したサラヤは、世界で初めて独自の技術で「ソホロ」の大量生産を実現し、2001年に日本初の環境配慮型洗剤を製品化している(第1号は食器洗い機用洗剤)。このほか同技術を応用した化粧品や、医療器具用洗浄剤、細胞保存液など、家庭用から医療用向け製品まで幅広く開発している。

28兆個の気泡で汚れを落とす

話を「ファインバブル」の研究に戻す。

前出の謝花氏はまず、「ファインバブル」の存在を確認するために、同社の「ソホロ」を含む9種類の界面活性剤と、気泡発生成分を組み合わせたものを水に溶かして比較した。その結果、発生した気泡の粒子径が「ウルトラファインバブル」に相当するのは、同社の「ソホロ」のみであることが判明。以後、同社の「ソホロ」が生成する気泡を「ソホロファインバブル」と呼ぶ。

次の試験では、汚染布を用いた攪拌洗浄をおこなっている。結果は、水道水、炭酸塩と比較して、「ソホロファインバブル」が最も洗浄力が高く、最も再汚染しなかった。

かくして、同社の「ソホロ」は、水に溶かすだけで洗浄効果の高い「ファインバブル」を生成するということが立証された(特許出願中)。なお「ハッピーエレファント ランドリーパウダー」で洗濯した場合に生成される「ソホロファインバブル」は1mlあたり約6億個、洗濯機に用いる水量45lあたりで約28兆個にのぼる。

日本古来の発酵技術が活きる

今回のサラヤの研究成果は、「環境にやさしい洗剤は洗浄効果が低い」というマイナスイメージを払拭する根拠となっただけでなく、洗浄力を求め進化してきた洗剤に新たな選択肢を提供するものになっている。

また、天然界面活性成分「ソホロ」が、環境と人権に配慮して生産された認証植物油を使用していることや、化学的な製造工程を用いず、味噌や醤油と同じ日本古来の発酵技術によってつくられたことなど、現代のSDGsの概念に合致している点も興味深い。

さらに「ハッピーエレファント」シリーズは、売上の1%を原料生産地のひとつであるマレーシア・ボルネオ島の環境保全活動に充てており、持続可能な商品開発を実現している。

今回は同社の「ソホロ」の洗浄機能に焦点を当てて紹介したが、「ソホロ」には他にも「美容成分を肌の角質層に届ける」「石鹸特有の きしみ感の緩和」など、様々な働きが確認されている。

謝花氏に今後の研究課題を聞くと、「『ソホロファインバブル』という新たな価値をさらに追求し、既存品の改良や新製品の開発を念頭にした基礎研究を進めていきたいです。 “衛生・環境・健康”というテーマで商品を開発する当社にとっても、『ファインバブル』はまだ見ぬ可能性に溢れています。生活者に貢献できるエビデンスを発表できるよう、努力を続けて参ります」と語ってくれた。(了)

ハッピーエレファント 洗たくパウダーの製品情報はこちら(https://www.happyelephant.jp/