ヘルスケア情報サイト「Hoitto! ヘルスケアビジネス」(ヘルスケアワークスデザイン株式会社)

第一三共HC、ブルーライトによる皮膚の光老化促進とトラネキサム酸による抑制作用を確認

第一三共ヘルスケア株式会社が、ブルーライト照射による肌の光老化促進と、それに対するトラネキサム酸の抑制作用について、11月18日に開催された第5回日本フォトダーマトロジー学会学術大会にて発表した。トラネキサム酸は親会社の第一三共株式会社が開発した抗プラスミン剤で、医療用医薬品として豊富な使用実績を有する。第一三共ヘルスケアはトラネキサム酸に関する豊富な知見を生かし、トラネキサム酸を有効成分として配合した薬用化粧品「トランシーノ薬用スキンケアシリーズ」を2010年から展開している。

第一三共ヘルスケアが、近年、目に及ぼす影響が注目されているブルーライトにより、肌の表皮角化細胞から免疫細胞の一種である好中球を誘導する炎症性因子(IL-8)が産生されることを見出し、さらに、ブルーライトは炎症反応を引き起こし好中球の細胞死(ネトーシス)を誘発することを発見した。また、ブルーライトが、シミの原因となるメラニン産生促進因子(α-MSH)の増加と、肌に弾力や潤いを与えるコラーゲン量の低下を引き起こすことを発見し、肌の光老化促進の一因となることを明らかにした。

さらに、これらブルーライトによる光老化促進の一因である、「炎症性因子(IL-8)の産生」「細胞死(ネトーシス)」「メラニン産生促進因子(α-MSH)の増加」「コラーゲン量の低下」をトラネキサム酸が抑制することを見出した。





研究の背景


肌の光老化の予防にはサンスクリーン剤を主とした紫外線防御が重要であるといわれています。特に紫外線の中でもUV-Bより波長の長いUV-Aは、肌の真皮層まで到達し慢性傷害を引き起こすことで光老化を誘発することが知られている。そこで当社はUV-Aよりもさらに波長の長いブルーライトに着目し、一般的なサンスクリーン剤では防御しきれないブルーライトによる肌への影響について評価した。





試験方法と成果


ヒトの肌におけるブルーライトの影響を調べ、そのダメージを抑制する成分を探索するために、ヒト皮膚細胞および、細菌侵入時等に働く免疫細胞である好中球を用いてブルーライトの作用を検証し、その作用に対するトラネキサム酸の有用性を評価した。

1.ブルーライトにより表皮に炎症が生じ、好中球の細胞死(ネトーシス)を誘導。

ブルーライトをヒト表皮細胞に照射後、トラネキサム酸を添加し24時間後に培養上清の炎症性因子を測定したところ、ブルーライトにより好中球を誘導する炎症性因子(IL-8)の産生が増加することと、トラネキサム酸による抑制作用を確認した【図1】。

また、好中球にトラネキサム酸を添加し、ブルーライト照射後の細胞死(ネトーシス)の発生率を経時で測定したところ、ブルーライトの照射により好中球の細胞死(ネトーシス)が生じた一方、トラネキサム酸により細胞死(ネトーシス)の発生が抑制されたことを確認した【図2】。





2.ブルーライトは、肌のコラーゲン量減少やメラニン産生促進因子の増加による光老化を引き起こす。

ブルーライトを、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった真皮の成分を作り出すヒト真皮線維芽細胞に照射後、トラネキサム酸を添加し24時間後にコラーゲンの発現量を測定したところ、ブルーライト照射によりコラーゲン量が減少し、トラネキサム酸がコラーゲン量を増加させることが確認できた。この結果から、ブルーライトは皮膚の「シワ形成」を促進する可能性があり、トラネキサム酸がそれらの作用を抑制することが示唆された【図3】。

また、ブルーライトをヒト表皮細胞に照射後、トラネキサム酸を添加し24時間後にメラニン産生促進因子(α-MSH)の発現量を測定したところ、ブルーライト照射によりメラニン産生促進因子(α-MSH)が増加し、トラネキサム酸がメラニン産生促進因子(α-MSH)の発現増加を抑制した。ブルーライトは皮膚の「シミ形成」を促進する可能性があり、トラネキサム酸がその作用を抑制することが示唆された【図4】。





今後の展望



本研究により、肌の光老化には従来指摘されていた紫外線のみならず、ブルーライトもその一因となることが明らかとなった。また、ブルーライトは、照射された皮膚の表皮角化細胞・真皮線維芽細胞だけでなく、全身に存在する好中球にまでも作用して光老化を促進することを見出し、さらに、トラネキサム酸がそのいずれにも抑制作用を有することが明らかになった。今後、第一三共ヘルスケアは本研究で得られた成果を活用し、より健やかな肌を実現するための製品開発につなげていく方針。