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【レポート】少子化でも拡大するベビーフード市場~アサヒグループ食品「和光堂」、120周年で示す“育児インフラ”の進化~

少子化が進行する日本において、ベビーフード市場は例外的に成長を続けている。こうした中、アサヒグループ食品の和光堂は2026年、ベビー事業ブランドの120周年を迎えた。3/6にアサヒグループ本社で開催された「和光堂」ブランド新商品説明会では、市場環境の変化とともに、新商品戦略、供給体制の再構築、さらには小売・薬局に向けた売場提案まで、同社の中長期戦略が示された。 

🔳「量から質」へ変わる育児市場

現在、日本の出生数は減少の一途をたどっている。2017年に約94万人だった出生数は、2024年には約68万人まで落ち込み、約3割減となった。一見すると市場縮小が避けられない環境だが、ベビーフードおよび育児用ミルク市場はむしろ拡大傾向にある。ベビーフード市場は2017年比で約120%、育児用ミルクも同108%と、いずれも堅調に推移している。

この背景には、育児を取り巻く価値観の変化がある。共働き世帯の増加や女性の就業継続、さらには男性の育児参加の進展により、家庭内の育児スタイルは大きく変化した。かつては「手作りが当たり前」とされていた離乳食も、現在では市販品を取り入れることが「合理的な選択」として受け入れられている。

同社はこうした変化を「量から質への転換」と位置付ける。単に子どもの数に依存するのではなく、一人ひとりの育児の質を高めるための商品・サービスへの需要が市場を支えているという見方だ。

一方で、2025年には同社にとって大きな試練もあった。サイバー攻撃を起点としたシステム障害により、ベビーフードや育児用ミルクの供給が一時的に滞り、店頭で欠品が発生したのである。この出来事は、ベビーフードが単なる加工食品ではなく、生活に不可欠な「育児インフラ」であることを改めて浮き彫りにした。特に育児用ミルクは代替が難しく、供給停止はそのまま家庭の不安に直結する。同社は「商品の品質に加え、安定供給そのものが価値」と位置付け、供給体制の強化を最重要課題として掲げる。2026年はまず供給正常化を最優先とし、前年実績の回復を目標とする方針だ。店頭への供給については、春先までに概ね正常化する見通しとしている。

🔳プレキッズ領域が次の成長の鍵に

今後の成長戦略として同社が注力するのが、1歳半以降の「プレキッズ」領域だ。従来のベビーフードは離乳期を中心とした商品構成であったが、近年はその後の食生活を支える商品へのニーズが顕在化している。

調査によると、シリアルなどのベビー向け食品は1歳半から2歳頃に「子どもが食べなくなる」という課題がある。これは味付けが幼児の嗜好に対して物足りなくなることが要因と分析されている。一方で、一般的な子ども向け食品は味が濃すぎると感じる保護者も多く、適切な移行先が不足している。このギャップを埋めるのがプレキッズ領域であり、同社は2030年までに同カテゴリーの構成比を約2割まで引き上げる構想を掲げる。人口規模が大きく、一人当たりの摂取量も増えるため、中長期的には大きな成長余地があるとみられる。2026年春の新商品は、こうした市場ニーズを踏まえ、「育児負担の軽減」と「成長段階への対応」を軸に開発された。

今回の説明会から浮かび上がるのは、ベビーフードが単なる食品ではなく、生活を支えるインフラとしての役割を強めているという点だ。薬局においては、栄養相談と連動した商品提案が重要性を増す。ドラッグストアでは、試食や比較を通じた体験型売場が差別化につながる。小売全体としても、朝食やおやつなど他カテゴリーとのクロス展開により、売場価値の向上が期待される。

少子化という構造課題の中でも、育児の質を支える市場は確実に広がっている。120周年を迎えた同社の取り組みは、ベビーフードが「選ばれる商品」から「欠かせない存在」へと進化している現状を示していると言えるのではないだろうか。