一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)はこのほど、2030年に全国ドラッグストアの総売上高13兆円を達成するための道筋を示した。人材面で薬剤師と登録販売者の育成を基本ラインとしつつ、新たに「受診勧奨GL対応スタッフ」ならびに「食と健康アドバイザー」を育成し、医療の窓口機能と疾病予防領域の機能を強化する。2025年の10兆円産業化を射程に収めた現在、地域の健康を支える「健活ステーション化」を標榜し、産業界における次の高みを目指す。
2021年度の国内ドラッグストアの店舗数は2万2,000店にのぼり、総売上高は前年比6.3%増の8兆5,408億円だったと推計される。そこで働く資格者数(JACDS正会員のみ)は薬剤師が2万1,653人、医薬品登録販売者8万3,586人、管理栄養士3,309人で、計10万人を超えるスペシャリストが、業態の成長を支えている。
JACDSが2019 年に掲げた「2025年10兆円産業化」は今後、年間5%成長の維持で実現する見込みである。ただ、日本の総人口は2022年の1億2,550万人から、2030年には888万人減の1億1,662万人となる。ここに店舗数の増加に伴う客数減を加味すると、1店舗あたりの人口は2022年の5,700人から、2030年には2,400人減の3,300人に減少するという試算になる。
こうした動態変化のなかで成長を維持するには、時代の半歩先を見据えた施策が必要となる。それを念頭に発表したのが、このほどの「健活ステーション化」構想だ。
「健活ステーション化」構成は2030年までに、全国ドラッグストア総売上高13兆円(2022年比52%増)、店舗数3万5,000店(同61%増)、従事する薬剤師4万人(同85%増)、医薬品登録販売者18万人(115%増)を基本ラインとした。特に医薬品登録販売者の数を10万人以上増やし、OTC販売の従事者を厚くする方向性を示している。
これに加え、「受診勧奨GL(ガイドライン)対応スタッフ」20万人、「食と健康アドバイザー」10万人を育成するとともに、「食と健康売場展開店舗数」ならびに「ヘルスチェックサービス対応店舗数」を各々1万8,000店に拡大し、疾病予防や未病対応の領域を広く取り込んでいく。合わせて、「プラ容器回収対応店舗」も3万店に増やす。
「受診勧奨GL対応スタッフ」はその名の通り、疾病の症状がある生活者に、医療機関への受診を勧める人材のことである。JACDSは今年8月にガイドラインの第1版(咳症状・鼻症状・下痢・腹痛)を発行、2023年度には他症状のGLを整備しながら改訂版を出す予定である。
このGLに沿って会員企業に教育研修を実施させ、来年度までに5万人の受講者を育てる。その後2024年度にJACDS監修による受診勧奨研修カリキュラムをスタートし、2030年度までにカリキュラムの受講者数20万人を目指すスケジュールだ。
「食と健康アドバイザー」は、2024年度を目標に制度化を図る。ドラッグストアの薬剤師、医薬品登録販売者、管理栄養士・栄養士、一般従事者、その他協会外から受講者を募り、2030年度までに10万人を輩出する計画となっている。
「食と健康売場展開」では、機能性表示食品・特定保健用食品・栄養機能食品を合わせた機能性を有する食品を体系化し、「食と健康アドバイザー制度」と連動して市場の確立を目指す。JACDSが既に開示した販売マニュアルも消費者庁との継続協議で内容を進化させ、メーカー団体とも歩調を合わせながら、独自のMDを開発していく。
このほか、「ヘルスチェックサービス対応」は、検査薬・検査キットのOTC化を図りながら、リアル・バーチャルの双方で生活者とのコミュニケーションスキルを磨き、一連のサービスとしてパッケージングしていくものである。
「健活ステーション化」構想の目標数値は、JACDSの大手チェーンの戦略をベースに作成されたもので、中小チェーンがどの程度構想に賛同するのかは見えてこない。
ただ、ドラッグストアには「美と健康」という普遍のニーズを取り込んで市民権を得てきた歴史があり、「健活ステーション化」で成長するという試みは、規模の大小に関わらず業態として整合性がある。
また、総人口ならびに1店あたり人口の減少も全ての小売業が直面する課題であり、その対応如何が企業個々の将来を左右するのは間違いない。JACDS正会員122社(2022年6月現在)が規模の垣根を越えてベクトルを合わせていくことが、構想実現の鍵になる。