6月14日、一般社団法人 日本医薬品登録販売者協会(日登協)が記者会見を開催し、新会長にコスモス薬品・代表取締役社長の横山英昭氏が就任したこと、団体名を「一般社団法人 日本医薬品登録販売者会(日登会=にっとうかい)」に変更したことを発表した。
日登会の会長は、日登協時代の2013年に初代会長の鎌田伊佐緒氏(故人、薬種商を経て登録販売者)から2代目会長の樋口俊一氏(ファーマライズ顧問、薬剤師)に引き継がれた。横山新会長は、登録販売者の資格を持っており(第1回目の登録販売者試験に合格)、登録販売者が日登会の会長に就任したのは、実に11年ぶりとなる。
横山新会長は、同会見で「一般社団法人 日本医薬品登録販売者会は、『すべての登録販売者の資質向上、業務支援、社会的地位の向上および登録販売者を目指す方への育成支援』を積極的に取り組む職能団体です。登録販売者は、セルフメディケーション推進の要として、国民の皆さまの健康増進のため、重要な機能を担っています。
一方で、2024年1月12日に『とりまとめ』が公表された『医薬品の販売制度に関する検討会』並びに、2025年度薬機法改正を見据えた『厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会』の議論において、セルフメディケーション推進に逆行する法改正が検討されていることに、強い懸念を感じています。登録販売者は『薬機法 第三十六条の九』を遵守し、全ての医薬品の販売シーンに関与します」と表明した。
その上で「登録販売者の役割としては、医薬品・サプリメント・医療機器等の情報提供・相談対応・販売等を通じて、セルフメディケーションを推進し、国民の保健衛生向上および医療費低減化に貢献することです。 離島・へき地を含む全国各地で従事しており、その殆どがドラッグストアで勤務しています。 ドラッグストアは年中無休で営業する店舗がほとんど。また夜間まで営業する店舗も多くあります。 登録販売者は、土日祝日・夜間を問わず、国民に医薬品を適切に提供し社会に貢献しています。
ドラッグストアによるOTC医薬品の販売金額は、市場シェア約9割を占めています(2022年度OTC市場売上高は、1兆1,771億円)。OTC医薬品の販売金額に占める第2類医薬品・第3類医薬品の割合は約95%であり、登録販売者の 果たす役割は非常に大きい。日登会は、2024年6月7日現在で会員数52,600名 (ドラッグストア勤務割合約95%)・加盟社243社となっています。活動内容は、①登録販売者の地位保全、職域拡大、職能向上を図る②登録販売者の名称を「医薬品販売士」に変更し、国民の皆さまに分かりやすい名称とする③登録販売者法(身分法)を制定し、セルフケア・セルフメディケーションの担い手としての法的位置づけを明記するように取り組んでいきたいと考えています」と、今後の重点施策を明かした。
新体制は以下。
会長(代表理事) 横山 英昭
副会長(理事) 内藤 隆
専務理事(理事)横田 敏
理事 川島 光太郎
理事 根津 孝一
理事 堀 美智子
理事 中込 和哉
理事 小部 真吾
理事 久保 聡
理事 堀 博昭(新任)
監事 佐藤 展史(新任)
OTC医薬品のオンライン販売など規制緩和が進む中、厚労省の検討会などでは極端な議論が先行し、”登録販売者不要論”が俎上にあがることがある。横山新会長を中心とした新たな体制のもと、登録販売者に対する逆風を、いかに追い風に変化させていくかーー。多くの登録販売者を雇用するドラッグストア業界からの注目度は非常に高い。
振り返ると、2009年に改正薬事法が施行されて誕生したのが登録販売者だった。当時ドラッグストア業界が抱えてきたOTC医薬品販売のグレーゾーン、つまり”薬剤師不在問題”が登録販売者によって解消され、店舗でのOTC医薬品販売が完全にホワイト化した。ドラッグストア各社は積極的に新規出店を行いながら著しく成長してきたが、法令に遵守した店舗展開・運営体制を実現できたのは、登録販売者の存在があってこそのものだった。
登録販売者が誕生して15年という長い年月が経過し、さも”存在して当たり前”かのように位置づけられがちであるが、ドラッグストア業界の成長に不可欠な資格者が登録販売者だったのは間違いない。”規制緩和”と”安全を担保した上でのOTC医薬品の供給”を見事なバランスで具現化してきたのが登録販売者なのだ。ドラッグストア業界ならびに関与するメーカー・卸売業などは、もう一度、登録販売者の重要性を認識し、業界外へ発信を強めていく必要があるだろう。このタイミングで日登会が新体制を発表したのは、こうした背景が見えてくる。
ドラッグストア勤務の登録販売者からは「超高齢社会で医療費が高騰する中、セルフメディケーションを推進していくには登録販売者は不可欠だというプライドを持って、日々仕事に取り組んでいる。新会長のもと、この資格により誇りを持てるような環境を作っていただければ」と期待する声も上がっている。(記事・佐藤健太)
*横山新会長の詳しい発言や質疑応答など、このニュースの詳報は明日以降に「Hoitto! ヘルスケアビジネス」で掲載予定。
6月17日、以下の記事を掲載
https://hoitto-hc.com/13430/
横山新会長は、2003年にコスモス薬品に入社し、店舗運営部エリア長や同上級エリア長、店舗運営部長、営業本部長などを歴任。16年に取締役、18年に代表取締役社長に就任した。現場を熟知しつつも目的意識を強く持ちながら、次世代のリーダーとしてコスモス薬品を引っ張ってきた。今年からは日本チェーンドラッグストア協会の副会長にも就任している。