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【第9回】矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン【ポッカサッポロフード&ビバレッジ】

ポッカサッポロフード&ビバレッジ
吉川和彦氏

 矢澤一良博士(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長)が「ウェルネスフードのこれから」を探る対談企画「矢澤一良博士が行く!ウェルネスフード・キャラバン」第9回は、レモン食品市場をけん引し「ポッカレモン」ブランドでも知られるポッカサッポロフード&ビバレッジの吉川和彦マーケティング本部ブランドマネジメント部マネージャーにご登壇いただいた。ポッカサッポロは昨年、濃縮還元レモン果汁100%の「ポッカレモン100」瓶3品(120ml、300ml、450m)を機能性表示食品としてリニューアルし、「レモン」の健康価値を飛躍的に向上させた。「レモン」という天然自然の素材から「疲労感軽減」「むくみ感軽減」そして「高めの血圧(収縮期血圧)を下げる」というヘルスクレームを導きだした経緯には並々ならぬレモンへの情熱、そして生活者のQOL向上に貢献するリーディングカンパニーとしての使命感が滲む。レモンの一大産地である広島県との共同研究、そして機能性表示食品への挑戦、レモンの美味しさと健康価値の両立による「ウェルビーイング」とは――矢澤博士がポッカサッポロの〝レモン哲学〟に飛び込む。(対談内容は2024年11月時点)【記事=中西陽治】

「ポッカサッポロと言えばレモンの会社」イメージ広がる

矢澤博士:本日はポッカサッポロフード&ビバレッジのマーケティング本部ブランドマネジメント部マネージャーの吉川和彦さんにお話をお伺いします。吉川さんと私は、2002年から2014年まで東京海洋大学(旧・東京水産大学)で一緒にお仕事をさせていただき、20年来のお付き合いです。

矢澤一良博士

 ポッカサッポロフード&ビバレッジ(以下、ポッカサッポロ)さんは2013年にポッカコーポレーションとサッポロ飲料が統合して誕生しました。まずはポッカ時代を振り返っていただけますか。

吉川和彦氏(以下、吉川氏):はい。私は1990年にポッカコーポレーションに入社し、技術系社員として配属され1年目から商品開発に携わってきました。
 入社5年目ごろから商品のマーケティングに関わるようになりまして、「ポッカレモン100」のマーケティングおよび商品開発を行ってきました。2001年に東京に異動となりまして、飲料の「キレートレモン」の開発を行いました。

矢澤博士:私のイメージでは〝ポッカ〟と言えば「レモン」と「缶コーヒー」でした。

 特に昔の「レモン」はドレッシングや付け合わせなど、調理・料理に使われるイメージがありました。そこからポッカコーポレーションによって「飲料」という新しいカテゴリーが生まれてきました。今やレモンが含まれる飲料はスタンダートです。

吉川氏:矢澤先生の時代は「レモン」のイメージが強いのですね。実は〝ポッカ〟のイメージは世代ごとに異なります。
 今の50~60代にとっては缶コーヒーの「ポッカコーヒー」の印象が強く、30後半~40代には「スープ」の会社のイメージを抱いている方が多いです。

吉川和彦氏

 そんな中、2000年ごろから、改めて「レモン」の会社としてのイメージがお客様の中に広がってきました。
 これまで、食卓に並ぶ「ポッカレモン」ブランドを始まりにして、発売から長年の歴史により「ポッカレモンと言えば黄色と緑色の容器だよね」という意識が浸透していました。

 2001年に飲料の「キレートレモン」が登場したことが要因の一つとなり、「ポッカサッポロと言えばレモンの会社」というイメージが再び盛り上がったのです。

矢澤博士:吉川さんと私は、2002年から2014年まで東京海洋大学(旧・東京水産大学)で一緒にお仕事をさせていただきました。その頃、親密な打ち合わせや共同研究をしましたね。データを学生の実験に取り上げさせていただいた。

 ポッカサッポロさんは、レモンについての産学連携の共同研究を活発に行われているのでしょうか。

吉川氏:そうですね。私がレモン商品に直接かかわる研究に着手したのが1996年頃です。
 矢澤先生と直接やり取りを始めたのが2005年頃だと思い出されます。その頃、当社は産官学連携の抗疲労プロジェクトに参画しており、抗疲労のメカニズムについて矢澤先生と研究室の皆さんに様々な研究を実施いただきました。

矢澤博士:その実験はよく覚えています。
 吉川さんにはその結果をフィードバックさせていただき、研究室の学生も研究発表ができる。良い機会をいただけたと思っています。

2001年に「キレートレモン」スタート

矢澤博士:「キレートレモン」の命名者が吉川さんとうかがっています。
 私は「〝キレート〟レモン」のネーミングについて、クエン酸の「キレート効果」(※ミネラルを包み込み吸収を促進するはたらき)にちなんだものと思っていました。
 ですが「綺麗」という言葉にも掛かっている。

 これは一般の方は「キレートレモン」に「綺麗」すなわち美容のイメージを抱いていたからでしょうか。

吉川氏:はい。「キレートレモン」は、2001年にレモンが持つ健康感を体感できる飲料として発売しましたが、カルシウムを溶けやすい形に変えるクエン酸の働きである「キレート作用」が名前の由来です。その頃、「レモン健康機能研究プレスセミナー」開始するなど、レモンの価値発信に努めていました。

 その時に直面したのが〝レモンを使う理由をどうやってお客様にお届けするか〟という課題です。

 その答えの一例が、「焼き魚にレモンをかけるのには意味がある。レモンの力でミネラルを吸収しやすくなる」というメッセージです。これを〝キレート作用〟と言い、「レモンにはキレート作用がある」というプロモーションを行ったのです。

 ソテーした魚にレモンをかけるなど、各国で焼き魚の形は違えど、レモンが使われてきたのは明らかです。
 そこで「なぜ焼き魚にレモンをかけるのだろう」という素朴な疑問に、意味と答えを示すべきだと考えたのです。

 このような経緯を踏まえて「キレートレモン」はクエン酸がもたらす“キレート作用”、そして美をイメージできるネーミングで発売となったのです。

〝富の象徴〟でもあったレモンの機能

矢澤博士:おっしゃる通り、世界各国でレモンは食されていますね。火山の噴火で沈んだポンペイの遺跡にレモンが食されていた形跡がある、と聞いたことがあります。
 太古からレモンには何かの意味があって用いられていたという証でしょう。

吉川氏:私も2000年にイタリアのポンペイ遺跡に調査にいったことがあります。そこで太古の昔のポンペイ遺跡にある、大きな庄屋さんの家の壁にレモンの絵があったのです。当時、レモンはどうやら富の象徴としても重用されていたようなのです。

矢澤博士:なるほど。レモンイエローは富を意味する花でもありますね。

 もうひとつ、レモンの機能を紐解くと、疫病の時代に用いられてきた歴史があると思います。
 ビタミンC欠乏症である壊血病は、人間が外海に出る時代にあって、非常に大きな脅威でした。この、ある種の薬として用いられてきたレモンの機能についてお伺いします。

吉川氏: 大航海時代、長期の海上生活では新鮮な食料が不足し、ビタミンCの欠乏による壊血病が船員たちを苦しめたと言われています。それを機に1700年代半ば、イギリス海軍の外科医であったジェームス・リンドによりレモンやオレンジなどの柑橘類が壊血病の治療に有効であることが示され、のちにビタミンCと呼ばれる成分が壊血病の予防に役立つことが分かりました。

 しかしながらレモンに含まれる最大の機能性成分はビタミンCではなくクエン酸で、レモン果実全体の約6%を占めます。レモンの酸っぱさはビタミンCが先にイメージされますが、酸味の大半はクエン酸がもたらすものです。

 さらにレモンピールつまり〝果皮〟にはポリフェノールが豊富に含まれており、レモン全体の機能を考えると、ポリフェノールも見逃せない成分です。

ポッカサッポロが進めるレモンを通じた地域活性

矢澤博士:国内でもレモンの栽培が盛んになっていますが、まだレモンは輸入品がメイン、という印象が強いでしょう。レモン全体の消費や生産はどのような現況でしょうか。

吉川氏:レモン果汁の輸入量は年々増加し、レモンサワーやドレッシングに使われるなど、日本におけるレモン果汁の消費量は拡大していると見ています。

 日本国内のレモン生産は年間7~8,000トンほどで、その大半が広島県の瀬戸内産です。日本は国土が狭いうえ、生産者の高齢化が進んでいるため、劇的に生産量が増えるというのは難しいでしょう。ただレモン栽培に転作される農家さんもおり、少しずつ国内の栽培面積が広がりつつあるのかな、と思っています。

矢澤博士:ポッカサッポロさんでは、広島県でレモン摂取による調査を行っている、ということを聞きました。これはどのような調査なのでしょうか。

吉川氏:はい。レモンの一大産地である広島県とポッカサッポロは2013年にパートナーシップ協定を結び、2016年に広島県豊田郡大崎上島町とレモンの生産振興などに関する包括協定を締結しました。

 大崎上島町には約8,000人が住んでおり、その町のボランティアの方々、成人男女541名に約5年間、1日1個分のレモン果汁(約30ml)を摂っていただき、その結果を調べるという大規模な調査でした。(詳細は以下リリースをご参照ください:https://www.pokkasapporo-fb.jp/company/news/release/240725_01.html

レモンに秘められた「疲労感軽減」「むくみ感/むくみの軽減」「血圧」機能

矢澤博士:レモンの抗疲労機能についてお伺いします。
 レモンをはじめ、柑橘類の畑というのは急こう配のところが多く、かなり過酷な作業になると思われます。作業つまり運動量が多いと、活性酸素が出てきます。
 その点においてレモンに含まれるビタミンC(アスコルビン酸)は代表的な抗酸化成分です。そしてクエン酸はクエン酸サイクルと言われるエネルギー生成する代謝経路となります。また、レモンピールのポリフェノールも活性酸素を消去する。

活性酸素抑制の観点からみると、レモンは運動における疲労感を軽減できる果実だと思います。共同研究で疲労軽減の統計的有意差が出たのも、実に符合する結果だと思います。
 それが現在の機能性表示食品としてクエン酸の「疲労感軽減」につながっているのではないでしょうか。

吉川氏:おっしゃる通りです。
 2015年に機能性表示食品の制度が始まり、われわれもレモン2個分の「クエン酸」で「疲労感軽減」の届出受理をしました。

矢澤博士:レモン由来モノグルコシルヘスペリジンを関与成分とする「一時的な顔のむくみ感を軽減」「脚(ふくらはぎ)のむくみを軽減」について、取り組まれた経緯を教えてください。

吉川氏:レモン由来モノグルコシルヘスペリジンによる「顔のむくみ感/脚(ふくらはぎ)のむくみの軽減」は私がポッカサッポロからサッポロの研究機関に出向している時に始まりました。

 サッポログループは、酒類事業にも取り組んでいることもあり、お酒を飲む機会が多く、社員の方々から「飲んだ翌日に足や顔がむくんでしまう」という声を結構な頻度で聞いていたのです。私は「レモンならばお役立ちできるかもしれない」と研究をスタートしたのです。

矢澤博士そのような背景から研究を開始したのですね。
 次に「レモンと血圧」の関係性と機能性の発見についてうかがいます。具体的な経緯についてお聞かせください。

吉川氏:「レモンと血圧」に関しては20年近く調査を行ってきました。研究のきっかけは、「ポッカレモン100を使っていると調子がいい。」というお客様の声でした。

 特に高めの血圧(収縮期血圧が130mmHg以上)の方々では、優位に血圧が下がったというデータが確認されたことを受け、「これはすごいことになるかもしれない」と感じ、実際に臨床試験を行うことになったのです。臨床試験の結果、統計的に有意差が表れ、論文化され機能性届出受理を果たしました。

矢澤博士:血液の流れは循環器系において何より重要な機能であり、疲労軽減や水分の除去にもつながるでしょう。根本的なメカニズムとして、レモンが持つ成分が総合的に働いている。機能性の観点から見てもレモンは非常に優れた果実であることが分かります。

吉川氏:本当にそう思いますね。
 レモンは紀元前からある食べ物です。世の中がどんどん便利になっていっても、今でもヨーロッパではレモンは食べられています。それはレモンが美味しいだけではなく、経験的に何がしかの力をもっている、ということの証だと考えられます。

矢澤博士:なかなかレモンのような良い素材に出会うこと、というのはないのかもしれません。非常に長い研究の中で、機能を明らかにし、人々に科学的根拠をもって理解してもらう。これは安心して機能を伝えるために欠かせないことですね。

 さて、「レモンと血圧」に関する研究開発の結果、「ポッカレモン100」をリニューアルしたわけですが、ここからは具体的な商品についてお伺いします。
 「ポッカレモン」ブランドは幅広いラインアップがありますが、お客様のニーズ別や使い方の違いはありますか。

吉川氏: 当社は、1957年から「レモン」を扱ってきました。
 長年、多くのお客様に愛されてきた「ポッカレモン100」は、2024年9月に瓶3品(120ml、300ml、450ml)を「高めの血圧(収縮期血圧)を下げる機能があります」という、機能性表示食品としてリニューアルしました。リニューアル発売後「ポッカレモン100」の瓶3品は好調に推移しており、新しい価値がお客様に届いていると感じています。

「ポッカレモン100」のニーズに関しては、非常におもしろく、嗜好や使い方で明確に分かれています。お客様の用途や嗜好に合った、使い勝手の良さをイメージしてラインアップしています。

ーー「レモンをもっと身近な果実に」ーー
情報を途切れなく発信することがポッカサッポロフード&ビバレッジの役割

矢澤博士:吉川さんは何十年もレモンにこだわってこられました。
 ポッカサッポロさんのレモン商品のラインアップも拡充され、機能性も付与されました。最後に吉川さんが考える「ウェルビーイング」とは何でしょうか。どのようにレモンで「ウェルビーイング」に貢献していくお考えですか。

吉川氏:当社としては「未来の食のあたりまえの創造をする」」を理念に掲げ、そこを目指しています。
 その中での私たちのレモン事業としては、レモンのおいしさと健康価値で人々のウェルビーイングに貢献したいと考えています。レモンが日本に入ってきてまだ150年ほどしか経っていません。日本のすべての家庭にレモンが浸透していく、伸びしろがもっとあります。

 ですから、日本における〝食〟でレモンがもっと普通に、もっと身近に感じられる果実であってほしいと思います。そのためにレモンを活かした商品開発、コミュニケーション、機能といったさまざまな形でお客様にアプローチをしていきたいです。

 レモンの情報を途切れなく発信していく、ということがポッカサッポロフード&ビバレッジの役割の一つだと考えています。

 ウェルビーイングとは、「健康の方が幸せ」「健やかに幸福になる」ということです。美味しいだけでなく体にも心にもいい、という価値をお届けしていきたいと思います。

――ありがとうございました。