ウェザーニューズが、2023年春の花粉シーズンに向け、「第一回花粉飛散傾向」(スギ・ヒノキ、北海道はシラカバ)を発表した。2023年春の花粉の飛散量は、関東から西のエリアでは2022年よりも多くなる予想で、2022年比で3倍以上の飛散量になる地域もある。一方、2022年に飛散量が多かった北日本や北陸エリアでは飛散量が減少し、2022年の50%を下回る地域もありそうだ。
<来春の花粉飛散量の傾向:関東以西は前年を上回る予想>
2023年春の花粉飛散量は北日本や北陸で2022年より少なくなるものの、関東や東海、西日本では多くなる予想です。西日本では2022年の1.7倍程度で、3倍以上の飛散量になる地域もあります。一方、2022年に飛散量が多かった北日本や北陸エリアでは飛散量が減少し、2022年の50%を下回る地域もあると見ています。
平年比(2013〜2022年の飛散量平均との比較)でも西日本はやや多く、北日本はやや少ない予想です。東日本は概ね平年並で、全国平均では約112%となる予想です。
<飛散量予想の根拠:2022年夏の天候と年ごとの増減傾向>
花粉の飛散量予想は、主に前年の夏の天候と年ごとの飛散量の増減傾向を基に算出しています。2023年の飛散量予想の背景は以下の通りです。
〜西日本は高温多照で雄花の生育に適した夏に〜
前年の夏に十分な日照があり、気温が上がるほど花粉の発生源となる雄花の生育が活発になる傾向があります。よく晴れた暑い夏ほど光合成が盛んになるためです。
2022年6月は梅雨前線が本州の南の海上に停滞する日が多く、西・東日本を中心に日照時間が平年を上回りました。下旬になると太平洋高気圧が張り出して梅雨前線が北日本周辺まで北上し、西・東日本では記録的な猛暑となり、平均気温も高くなりました。7月に入ると西・東日本は低気圧や前線の影響を受ける日が多くなり、日照時間は平年並にとどまりました。一方、北陸や北日本では高気圧に覆われる日が多く、日照時間は平年を上回りました。暖かい空気に覆われる日が多く、平均気温は全国的に高く、特に北日本ではかなり高くなりました。8月は低気圧や前線、台風の影響を受け、北日本や東日本で曇りや雨の日が多くなりました。日照時間は平年を下回った一方、気温は平年並でした。西日本では日本海側で日照時間が少なかったものの、太平洋側を中心に晴れる日が多くなり、日照時間は平年並~平年より多くなりました。西日本では平均気温も平年を上回りました。
2022年夏の天候を総合すると、暖かい空気に覆われた日が多くなったため、平均気温は全国的に平年を上回りました。北日本では日照時間が平年をやや下回り、雄花の生長にはやや不向きな天候となりました。東日本の日照時間は概ね平年並でした。西日本では太平洋側を中心に日照時間が平年を上回り、雄花の生長には適した天候となりました。
〜2023年は西日本を中心に花粉の飛散が多い「表年」に〜
花粉の飛散量は周期的に増減し、花粉の飛散が多い期間と少ない期間が交互に訪れる傾向があります。飛散量が多い年を「表年」、少ない年を「裏年」と呼びます。エリアによって増減の周期は異なり、「表年」「裏年」も異なります。夏の天候の影響で「表年」「裏年」の区別が不明確になる年もあります。
2022年は北日本や北陸で飛散量が多くなり、特に東北北部では記録的な大量飛散となりました。その反動で2023年の飛散量は前年を下回り、「裏年」になると見込んでいます。一方、西日本では2022年の飛散量が前年を下回り、「裏年」となった地域が多くなりました。2023年は「表年」となり、飛散量が2022年の水準を上回る地域が多くなると予想しています。
◆ エリア別の2023年花粉飛散傾向
北海道:雄花の生育にやや不向きな夏 前年比で飛散量減
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年よりも高くなりました。ただ、前線や低気圧の影響で曇りや雨の日が多くなり、日照時間は平年を下回りました。2022年の飛散量は前年を上回りました。
2023年のシラカバ花粉の飛散量は平年の70%、2022年の77%程度になる予想です。総飛散量が減少しても晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することがあるので、油断せずに対策をするようにしてください。
東北北部:記録的な大量飛散の反動 飛散量は前年比で大幅減
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年よりも高くなりました。ただ、前線や低気圧の影響で曇りや雨の日が多くなり、日照時間は平年をやや下回りました。2022年は記録的な大量飛散となりましたが、その反動で2023年の飛散量は大幅に減少すると見ています。2023年の飛散量は平年の72%、2022年の29%程度になる予想です。総飛散量は大幅に減少するものの、晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することがあるので、油断せずに対策をするようにしてください。なお、東北北部ではスギ花粉の飛散が中心となり、ヒノキ花粉はほとんど飛散しません。
東北南部:多かった前シーズンの反動 前年比で飛散量は大幅減
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年より高くなりました。ただ、前線や低気圧の影響で曇りや雨の日が多くなり、日照時間は平年並~平年をやや下回りました。2022年の花粉飛散量は前年を上回りました。
2023年の飛散量は2022年を大きく下回ると見ています。2023年の飛散量は平年の71%、2022年の52%程度になる予想です。総飛散量は減少するものの、晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することがあるので、油断せずに対策をするようにしてください。なお、東北南部ではスギ花粉の飛散が中心となり、ヒノキ花粉の飛散は比較的少ない傾向にあります。
関東・山梨:雄花の生育に適した夏 前年比で飛散量増
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年よりもかなり高くなりました。一方、日照時間は概ね平年並でした。2022年の花粉の飛散量は前年と概ね同様の水準でした。2023年の花粉飛散量は平年の111%、2022年の128%程度になる予想です。2022年よりも飛散量がやや増えて花粉症の症状が重くなる可能性があります。晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することもあるので、早めに対策をするようにしてください。
北陸・長野:多かった前シーズンの反動 前年比で飛散量減
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年よりもかなり高くなりました。一方、日照時間は平年並でした。2022年の花粉飛散量は北陸エリアを中心に前年を上回りました。2023年の飛散量は北陸エリアを中心に2022年を下回ると見ています。2023年の飛散量は平年の97%、2022年の82%程度。ただ長野県では2022年を上回る飛散量となる予想です。北陸エリアでは総飛散量が減少するものの、晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することがあるので、油断せずに対策をするようにしてください。なお、北陸エリアではスギ花粉の飛散が中心となり、ヒノキ花粉の飛散は比較的少ない傾向にあります。
東海:雄花の生育に適した夏 飛散量はほぼ前年並
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年よりも高くなりました。一方、日照時間は概ね平年並でした。2022年の花粉の飛散量は前年より減少した三重県を除いて概ね前年と同様の水準でした。2023年春の花粉飛散量は平年の104%、2022年の115%程度と見ています。ただ三重県では2022年を大幅に上回る飛散量となる予想です。2022年よりも飛散量が増えて花粉症の症状が重くなる可能性があります。晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することもあるので、早めに対策をするようにしてください。
近畿:雄花の生育に適した夏 「表年」傾向で飛散量は大幅増
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年よりもかなり高くなりました。一方、日照時間は概ね平年並でした。2022年の飛散量は前年を下回りました。2023年春の花粉飛散量は平年の122%、2022年の157%程度になる予想で、一部では2022年に比べて飛散量が2倍近くに増える地域もあります。飛散量が大幅に増えて花粉症の症状が重くなる可能性があります。晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することもあるので、早めに対策をするようにしてください。
中国・四国:雄花の生育に適した夏 「表年」傾向で飛散量は大幅増
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年よりもかなり高くなりました。一方、日照時間は概ね平年並でした。2022年の飛散量は前年を下回りました。2023年春の花粉飛散量は平年の151%、2022年の186%程度になる予想で、一部では2022年に比べて飛散量が3倍近くに増える地域もあります。飛散量が大幅に増えて花粉症の症状が重くなる可能性があります。晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することもあるので、早めに対策をするようにしてください。
九州:雄花の生育に適した夏 「表年」傾向で飛散量は大幅増
2022年の夏は暖かい空気に覆われる日が多く、気温は平年よりもかなり高くなりました。また高気圧に覆われて晴れる日が多く、日照時間は平年より多くなりました。2022年の飛散量は北部ではほぼ前年並でしたが、南部を中心に前年を下回りました。2023年春の花粉飛散量は平年の132%、2022年の160%程度になる予想で、南部では2022年に比べて飛散量が3倍超に増える地域もあります。飛散量が大幅に増えて花粉症の症状が重くなる可能性があります。晴れて風の強い日には花粉が大量に飛散することもあるので、早めに対策をするようにしてください。