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【JACDS】医薬品販売ルール化&セルメ税制恒久化 規制に挑む勝負の年に

各理事が記者会見で責任と覚悟の姿勢示す

 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は1月30日に「2025年第1回JACDS記者会見」を開催した。JACDSからの「厚生科学審議会とりまとめによる医薬品販売方法のルール化」の結果報告、「セルフメディケーション税制の検討会に向け日本OTC医薬品協会との協業を行うこと」が主に示された。また、東京都中央区と災害時協定が結ばれたことを明らかにした。記者会見には会長および副会長を務める理事6名が参加。各理事が陣頭指揮を執る委員会の報告はもちろん、事業トップとして業界の景況感についても発言がなされた。いよいよ10兆円産業達成を迎えるドラッグストア業界。その先頭に立つ協会が責任と覚悟を示す1年のスタートとなった。(取材=中西陽治)

左より:関副会長、亀ヶ谷副会長、塚本会長、根津孝一副会長(ぱぱす会長)、貞方副会長、関口周吉副会長(龍生堂本店社長)
亀ヶ谷副会長

「医薬品販売のルール化」に向けた業界ガイドライン作成に着手

 厚生科学審議会の医薬品医療機器制度部会のとりまとめが1月10日に公表され、濫用のおそれのある医薬品の販売ルール化が記載された件について、「現在、JACDSの制度部会でリーダーの森信副会長(ドラッグストアモリ会長)の指揮の元、『業界ガイドライン』の作成に着手している。厚生労働省とも相談しながら完成を目指している」と進行の亀ヶ谷博之副会長(カメガヤ社長)と述べた。

セルメ税制推進のため日本OTC医薬品協会とタッグ

関副会長

 次に1月8日に第一回の「セルフケア・セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」の開催について触れ、JACDSから角谷真司理事(トモズ社長)が委員として出席したことを明らかにした。
 第一回では厚労量のこれまでのセルフケア・セルフメディケーションの施策の説明と、各委員会より検討会への要望が述べられた。JACDSではセルフメディケーション税制(セルメ税制)の対象範囲の拡大(対象品目に胃腸薬の追加)、差し引き金額と上限額の変更、時限制度の恒久化を目指すことを基本方針に据えている。
「ドラッグスストア機能向上委員会」の副会長で、角谷理事をサポートする関伸治副会長(セキ薬品会長)が説明を行った。
 関副会長は「日本OTC医薬品協会と協力し、セルメ税制利用者の購買動向から、どれだけの金額がOTC医薬品に充てられているかをデータから導き出し、検討会に報告を行う」とし、次回3月に予定されている検討会で、日本OTC医薬日協会とセルメ税制利用者の購買データを開示する方針を明らかにした。

東京都中央区と災害時対応協定結ぶ

 JACDS東京支部と東京都中央区が締結した「災害時等における応急物資の供給等に関する協定」について、2024年12月20日に中央区役所区長応接室で締結式が行われた。JACDSから亀ヶ谷副会長、東京都中央区から山本泰人区長らが参加。
 山本区長は「ドラッグストアには生活用品もほとんど揃っているので、OTC医薬品だけでなく衛生品やベビー用品の協力にも期待したい」と要望が出された。
 亀ヶ谷副会長は「JACDSでは昨年の能登半島沖地震において、被災地への迅速な救援物資および薬剤師・登録販売者による人的支援を行ってきた。これら災害対策のノウハウを各自治体と共有していく」と語った。
 中央区との協定は日本全国で13番目、東京都内では葛飾区に続き2番目の締結となる。

2025年最初の記者会に多くの記者が詰めかけた

【2025年ドラッグストアの景気動向】

 2025年年初の記者会見ということもあり、ドラッグストア業界を取り巻く景気動向について記者から質問が及んだ。特に、中間決算を終えたドラッグストア企業の多くが「食品カテゴリーの拡充」を示しており、関連してお米の高騰など食品を取り巻く環境変化が著しい。ドラッグストア各社は食品カテゴリーについてどう捉えているのか。

貞方副理事「『感染症再流行で医薬品、訪日需要追い風に化粧品が好調』も「食品は値上げと商習慣がネックに」

貞方副会長

 貞方宏司副会長(サンドラッグ社長CEO)は自社の傾向について「昨年の11月下旬から12月にかけ、インフルエンザ流行と並行して風邪薬の需要が増えた。その需要に引っ張られるように、これまでリバウンドを受けていたマスクの需要が上昇し、反動を補う形となっている」と消費者動向について触れた。食品カテゴリーについては「値上げがここ3年続き、お米も影響を受け単価でみると3割度上昇している」と状況を述べ「ただドラッグストアが一般的に取り扱っている医薬品や日用品と違い、お米は問屋が限られるため一種独特な仕入れ状況となっている」と話した。
 ドラッグストア企業によって違う、と前置きしながら「昔から米問屋と取引している企業は、その米問屋がお米の供給を優遇してくれるため品切れを起こさずつないでくれるが、毎年のように見積もりを取って安い米問屋から仕入れようとするとなかなかお米を回してくれないことがある」とドラッグストアが扱う食品カテゴリーでもお米は特殊な状況であることを説明した。
 貞方副会長は「前期の上期は、駅前立地ドラッグストアが中国からのインバウンドの影響により『日焼け止め』などが苦戦した。ただ10月以降は化粧品カテゴリーはインバウンドにつられて順調に進んでいる」とし、好調を維持していることを明かした。

塚本会長「セルメ意識定着でインフレ下でもDgSの長所は伸びている」

塚本会長

 塚本厚志会長(マツキヨココカラ&カンパニー副社長)は「貞方副会長が伝えたとおりJACDS加盟企業は順調な状況かと思われる」とし、「ドラッグストアの最寄り性(利便性)、とディスカウント性(お買い得感)により、現在のインフレ下でも非常に消費者から支持を受けている。食品カテゴリーも含め、最寄りでワンストップショッピングができるという点の強みが維持できている」と語った。
 また「新型コロナのパンデミックを終え、またコロナやインフルエンザが流行り始めている。そのためマスクなど関連商品を予防的に求めるニーズがあり、まずはセルフメディケーションでどこまで体調を良くできるかを試してから、病院や検査を受けるという消費動向が定着しつつあると感じる」と消費動向の変化について述べ「この専門性と利便性は引き続き消費者の心を掴んでおり、各社も冬場の来店客数増につながったと言える」と説明した。