普段私たちが購入している商品がどのように流通しているのか、ビジネスパーソンなら大概は理解しているはずだ。しかし、消費の拡大やチェーンストアの成長と共に高度化する受発注において、不可欠な企業がいることを、どれだけの方がご存知だろう。その名は「プラネット」。我が国の流通システムを40年近く支えてきた企業である。同社が創設された目的と意義、さらに将来を見据えた活動の軌跡を、一問一答形式で紹介する。(記事・構成=八島)
流通業界のインフラとして存在価値高まる
Q1.プラネットは何をおこなう会社なの?
A1.当社が提供するサービスは、企業間のデータ交換サービスです。例えば、企業Aが100社と取引を行う場合、100通りのシステムに対応させる作業が必要になります。しかし中立化である機関(つまりプラネット)を取引の間に入れることで、100通りのシステム対応をする必要がなくなります。(図参照)
Q2.名前の由来は?「惑星」と関係あるの?
A2.惑星を意味するプラネットのネットと、ネットワークのネットとを関連づけるとともに、広い宇宙を回遊する惑星のイメージが、多くの企業をつなぐ経営理念とマッチすると考え、「プラネット」と命名しました。
Q3.発足の目的とその時代背景(当時の流通業の状況と課題など)を教えて!
A3.業界の流通機構の体質強化を目的に、本邦初のVAN運営会社として1985 年に発足しました。以来、ITの進展に合わせてシステムの革新を進めるとともに、メーカー・卸売業間の商取引に関わる20 種類に及ぶデータ通信の標準化と、小売店や卸売業拠点への共通コードの付番・管理に努めてきました。
近年は多くのユーザーにおいて自動発注・自動受注をはじめ、請求と回収の自動化と伝票レス化が進み、流通業界のインフラとしての存在価値が高まってきました。
こうした現状を踏まえ、どのような災害が起きてもEDIサービスを提供し続けることが社会的な使命と認識し、EDIのシステムに強固な安全対策を講じるなど、事業継続計画(BCP)に積極的に取り組んでおります。(下方に「プラネットの歩み」掲載)
発注・受注双方にコスト削減と効率化もたらす
Q4.EDIってなあに?
A4.EDIとは「Electronic Data Interchange」の略で、「電子データ交換」を意味します。企業間取引で発生する受発注書や請求書等の帳票のやり取りを、通信回線やインターネットを用いて電子的におこなえるシステムのことです。
Q5. EDIの導入で(製配販各層は)何が変わったの?
A5. 定型業務の自動化が行われるようになりました。
――発注業務を例にとると…
①電話やFAX(発注書)など人手による煩雑な発注作業が軽減される
②複数の取引先に対して、データ送信先がプラネットだけで済み、発注のスピード化につながる
③在庫管理システムと連携し、自動的に発注情報を作成することが可能になる
④受注側の企業から送られる「仕入れデータ」と照合することで、入荷管理及び買掛計上処理に連動することが可能になる
⑤FAX発注システムの利用により、すべての取引先とオンライン発注が可能になる
…といった「発注データ」の利用により、発注側企業にはコスト削減、作業の効率化などのメリットが生まれます。発注にかかる時間と人手を省力化でき、それにより利用可能となった時間と人手を質の高い管理に振り分けることで、発注側企業の管理レベルの向上につながります。
受注側企業に関しても同じことが言えます。
Q6.さらなる効率化に向けた努力、取引の安全性・継続性への取り組みを教えて!
A6.近年、世界レベルでの感染症や大規模な自然災害が頻発するようになり、在宅ニーズの高まりと被災地の復興支援などで、各地に滞りなく商品を供給する流通業の社会的役割がますます高まっています。
当社は環境がどんなに変化してもサービスを継続し続けることが社会的使命であると認識し、EDIやデータベースの処理を行うデータセンターを太平洋側と日本海側の2拠点に分散して常時稼働させる他、お客様の運用支援を行うコールセンターも2拠点で運用するなどして、緊急時も普段通りのサービスを安心してご利用いただけるよう取り組んでいます。
Q7.ECに注目した理由とその背景(調査報告書「インターネットは日用品流通をどう変えるか」発行の狙い)を教えて!
A7. 長引くコロナ禍により在宅時間が増え、感染を避けるために外での買い物を控えたいという意識が強くはたらく中、オンラインでの買い物が引き続き伸長したと考えられます。
このような状況下で、一般消費財の買い物に関する消費者の意識と行動、ならびにデジタルネイティブと言われる若い世代の買い物行動について調査いたしました。
Q8.インバウンド消費に注目する理由とその背景(調査報告書「日用品のインバウンド消費を拡大させる意識と行動」発表の狙い)は?
A8. アフターコロナを見据えたインバウンド消費の動向をウォッチしておくことが目的です。
インバウンド消費は、各国の政策や政治判断をより注視して対応する必要があります。
特に日用品・化粧品業界は、中国、香港、台湾の旅行者が消費を牽引してきたことから、このエリアの旅行者が戻ることが大事です。
また、円安が進行して、日本での買い物の注目度がアジア全体でより高まっています。海外旅行が解禁となれば、富裕層を中心に日本に行きたいという声は非常に多いです。
日本製品はもちろん安いですが、海外製品も世界一安く買えるのが今の日本なのです。
Q9.現在注力している活動、将来構想とその領域は?
1つは「ロジスティクスEDIの構築」です。
消費財流通業全体において、次にインフラ構築を迫られているのが物流業界です。2024年4月施行の「働き方改革関連法」では、ドライバーに時間外労働の上限規制が適用されます。すでにドライバー一人あたりの労働時間が減り、労働賃金も上昇傾向にあり、将来的にトラックが手配できずに商品が届けられない可能性もあるでしょう。
そこで当社は政府が主導するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)に採択された「スマート物流サービス」の実験に協力し、日用品・化粧品業界の製・配・販協力のもと、持続可能な商品供給を行うための物流領域のEDI実装を進めています。
長距離ドライバーの長時間労働を解消する方法として、高速道路の自動運転は早期に実用化されるでしょう。また、倉庫では無人化、AIによる需要予測や配送の最適化なども急速に進むと見ています。
トラックと人と倉庫をつなぐ情報基盤を活用して流通全体の最適化を早期に実現し、持続化していくことがポイントで、商流、物流の両方のデータ基盤の構築を通じ、新たな付加価値を創造していきたいと考得ています。
もう1つは「GS1Japan産業横断レジストリー」の構築です。
日本国内のJANコードを登録・管理するGS1Japan(流通システム開発センター)と、酒類・食品業界の商品マスターを管理するジャパン・インフォレックスとの三者間で、業界横断型商品情報レジストリーの構築を進めています。
当社の商品データベースは商品情報をメーカーが直接登録しており、常に正しいデータで管理されています。利用者はデータチェックなどに膨大な時間を使う必要もありません。将来的にGS1Japanが運営するGJDB(GS1 Japan DataBank)を経由し、小売業や卸売業が正しい情報を簡単に入手できるようになれば、商品情報の利用の幅はさらに広がると考えます。
さらにもう1つは、「POSデータクレンジングサービス」の推進です。
その一環でTrue Date社と業務提携し、両社で「POSデータクレンジングサービス」を共同開発しています。各社にとって手間がかかるPOSデータとマスタデータの整備に関わる作業を、高い品質でリーズナブルにアウトソーシングできる環境を整え、今年からサービスを提供する予定です。
Q.プラネットを大分理解できた気がします。流通のサービスプロバイダーとして進化する御社に、今後も注目していきます!
A.そう言ってもらえて嬉しいです!弊社の活動は企業サイト(https://www.planet-van.co.jp)に詳しく掲載されているので、是非ご覧になってください!
参考資料1)「インターネットは一般消費財流通をどう変えるか 2022」
URL:https://www.planet-van.co.jp/shiru/research/internet.html
参考資料2)「2022 中国の日常生活と日本製品購買に関する調査レポート 2022.03」
URL:https://www.planet-van.co.jp/pdf/research/inb_emg-report202203.pdf