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【記者の目】“分業元年”から50年後の処方箋調剤市場は今


厚労省が完全分業を指示した1997年から急速に進展し
処方箋受取率は30%から80%時代に突入


“分業元年”の1974年9月から今年9月に50年になる処方箋調剤市場。僅か0.6%だった医薬分業率(処方箋受取率)は、厚生労働省が37のモデル国立病院に対し完全分業(院外処方箋受取率70%以上)を指示してから推進スピードに拍車がかかった1998年から26年後の今、分業率は30%から50%増えて80%となり、処方箋枚数が4億枚から倍増の8億5630万枚、調剤報酬も1兆8900億円から7兆9300億円と4倍アップしている。リアル店舗とバーチャル店舗に7億人が来店する現状を踏まえ、“100分業”へ残る20%あまり。ドラッグストア、調剤主力型薬局チェーン、個店薬局、異業種企業に加えてAmazonの参入がどうなるか。ますます競合化が激化する処方箋調剤市場。その行方に注目が集まっている。(流通ジャーナリスト◎山本武道)


■ 調剤報酬額8兆円市場へ当確、地区別でトップは東京の918億円


日薬(日本薬剤師会)が公表した2023年度の保険調剤の動向(全保険:社保+国保+後期高齢者―基金統計月報・国保連合会審査支払業務統計)によれば、1974年9月の“分業元年”から50年後の今、2023年度の処方箋調剤市場は、処方箋受取率が前年度比3.7%増加し80.3%、処方箋枚数8億5630万枚、調剤報酬額7兆9272億円、それぞれ7.1%、6%とアップしている。分業率の伸長率3%台は2007年以来、16年振り、枚数も4年振りに8億台に回復、調剤報酬は8兆円市場形成が確実になった。(DATA1) 



分業率を地区別で見ると、1都、1道、2府(大阪・京都)、43県のすべてが軒並み上昇し、92.4%の秋田をはじめ90%台が青森と新潟の3地区、大半が80%台となった一方、17地区が70%台、60%台は5地区(福井・京都・和歌山・徳島・愛媛)で最も低いのが福井の62.6%だ。

処方箋枚数は、東京都の1億375万枚(前年度比9.2%増)、2位:神奈川の6621万枚(同7.8%増)、3位:大阪5810万枚(同7.5%増)が上位スリー。枚数の伸長率では、全国平均7%台が埼玉(7.9%増)、東京(7.5%増)、徳島(7.3%増)、岐阜(7%増)の4地区。6%台は滋賀(6.9%)をはじめ11地区、最下位は2.9%の秋田だった。

調剤報酬額も、全国平均(成長率6%)を超した地区は7%台が愛知の7.9%を筆頭に東京、徳島(7.3%)、埼玉(7.1%)、岐阜(7%)の5地区。実額のトップは前年同期比7.5%増の918億4700万円となった東京、2位に神奈川の594億8400万円(同6.6%増)、3位は大阪545億321万円(同6.6%増)。最下位は、鳥取の363億円(前年同期比4.7%増)である。


■ 処方箋を持参する患者へ期待されるドラッグストアのヘルスケア機能


医薬分業が再び上昇気流に乗った背景には、コロナ禍によって医療機関への受診が抑制されていたが、患者が大幅に減少し受診頻度が回復したことに加えて、国民が体験した医療機関のオンライン診療やFAX処方箋による調剤といった、これまでにないメリットを受け止めたことが考えられる。

国が主導する医療DX推進によってマイナーバーカードに保険証のみならず医師の診療記録、薬歴、食品アレルギー情報、健康食品や機能性表食品情報情報なども入力すれば、医療機関では即患者情報を把握することができ、ドラッグストアや薬局でも医薬品の重複投与の確認や相互作用の防止に結びつくこと、さらにリアル店舗とバーチャル店舗でDX化が本格的に稼働すれば、相乗効果によって、さらに医薬分業の推進が期待できるだろう。

100%分業達成へ残る20%あまり。今後、ますます激しくなる競合化にどう対応していくか。現行の医療保険制度を維持しつつ、増え続く国民総医療費にブレーキをかけ健康寿命延伸の武器として高まる“未病&予防”ニーズにどう対応していくか。処方箋を持参する患者(ロイヤルカスタマー:優良顧客)へ、より健康になるための武器を提供するヘルス・ステーションでもあるドラッグストアの機能に期待したい。