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【詳報】日本医薬品登録販売者会 記者会見

規制強化反対とスイッチOTCの第2類移行を提言


【左より】横田専務理事、横山会長、内藤副会長


一般社団法人日本医薬品登録販売者協会(日登協)は6月14日(金)に都内で記者会見を開いた。同日開催された第18期定期社員総会を開き、団体名を「日本医薬品登録販売者会」(日登会)へと改め、理事および監事を刷新。会見には横山英昭新会長と内藤隆副会長、横田敏専務理事が出席し、今後の方針および登録販売者の職能発揮の道筋を示した。(参考記事:【速報】日登会新会長に横山英昭氏(コスモス薬品社長)が就任


会見に立った横山会長は、まず登録販売者が関与すべきセルフメディケーション推進に関する問題として、「一般用医薬品販売に関する規制強化の問題」「スイッチOTCに関する問題」を上げた。

「一般用医薬品販売に関する規制強化の問題」は、2024年1月12日に「とりまとめ」が公表された「医薬品の販売制度に関する検討会」ならびに、2025年度薬機法改正を見据えた「厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会」において議論されており、日登会としてセルフメディケーション推進に逆行する問題として捉えている。

横山会長は「これら規制強化は一般用医薬品のオーバードーズが問題となっている背景がある。オーバードーズは重大な問題であり、登録販売者がしっかりと関与し販売していく。しかし不合理な過剰規制により登録販売者が作業に追われ、忙殺されることがあってはならない」と冷静な判断を呼び掛けた。


記者会見で語る横山会長


横山会長「ほとんどの人が適正使用しており、過剰規制で登販が忙殺されるのは合理性に欠く」


「一般用医薬品販売に関する規制強化の問題」では、風邪薬、鎮咳(ちんがい)薬、鼻炎薬、解熱鎮痛薬等の一般に広く使用される一般用医薬品について「購入者の個人情報の記録・保管」や「直接購入者の手の届く場所に陳列しないこと」を求める規制強化の法改正がされようとしている。

〝手に届かないところに陳列〟とはすなわち空箱陳列を指す。これによる生活者と店頭現場の利便性低下を指摘。空箱陳列は生活者が一般用医薬品を手にする心理的ハードルが上がり、これが一般用医薬品の適正使用を阻害することになる、と示した。

横山会長は「一般用医薬品ユーザーの99.9%が正しく薬を使っている方々であり、この方々の利便性を防ぐことになる。また、たとえ1店舗で販売規制をしたとしても、隣のドラッグストアや薬局、ネット販売で購入できてしまうため、規制の意味をなさない」と強く反対の意思を示した。そして「99.9%の適正使用者のアクセスを阻害する一方で、買い回りによる頻回購入を防止する実行性が低い規制となっており、目的達成のための手段と効果のバランスが悪い」と指摘した。

「購入者の個人情報の記録・保管」については「購入者に個人情報を提示してもらい、氏名・年齢等を確認することは行う」としながらも「店頭で重大な個人情報を記録・保管することは現実的ではない。濫用等のおそれのある医薬品の購入については登録販売者が適切に情報を提供し、氏名・年齢等を写真付き身分証明書等により確認を行うことで、濫用等を目的とした購入に対する抑止効果は十分高まる」とし、個人情報の確認は行うが、その情報の記録・保管は現場の負担が大きすぎる、とした。

その理由として「個人情報の記録や保管に追われ、本来の専門職である医薬品の適正な情報提供が行えない。また、保管した情報を管理するうえで、年間1万3,000件のサイバー攻撃を無視できない。これらに対応する設備投資の負担。また設備投資したとしても、サイバー攻撃に耐えうるとは限らない」とし「またほとんどが適切に使用されている一般用医薬品の販売に、過剰な規制を課すことで適正使用者からのクレームやカスタマーハラスメントのリスクが増大し、本来の業務に加わることで登録販売が疲弊する」と危惧している。


2024年1月12日 医薬品の販売制度に関する検討会とりまとめ概要資料より


安全性確保されたスイッチOTCを緩和し生活者の利便性に寄与すべき


「スイッチOTCに関する問題」については、スイッチOTC化が一行に進まない「スイッチラグ」を指摘。さらにスイッチ後も、安全性が確認された第1類医薬品が第2類医薬品以下に移行しないことで、効果の高い医薬品が広く国民に使用されないことと、スイッチ承認に要する期間が長すぎることを問題視した。

「スイッチラグ」について横山会長は「市販薬類似の医療用医薬品について、保険給付除外や保険給付範囲の見直しが必要」と語った。

第1類医薬品が第2類に移行しない点については、スイッチOTC化後、長年にわたり第2類以下に指定されていない現状があるとした。

例としてH2ブロッカー胃腸薬の「ガスター10」(第一三共HC)を挙げ、「1997年にスイッチOTC化し、使用実績や安全性が確保されているにも関わらず、第2類に移行されていない。安全性が確認されたのであれば、カテゴリーを第2類に緩和し、生活者の利便性に寄与すべきだ」と指摘した。

セルフメディケーション推進におけるOTC活用を自助の観点からみると、診療や調剤に係る医療費を含めた自己負担額ではOTC薬を購入した方が安くなるケースも説明。

花粉症薬(フェキソフェナジン60mg 14日分)の比較では、医療用医薬品を処方された場合の患者自己負担額が1,830~2,142円であるのに対し、OTC薬を購入した場合は565~2,075円となる。

このような市販薬類似の医療用医薬品について、保険外併用医療費制度の柔軟な活用・拡大を含め、保険給付範囲の見直しを行い、セルフメディケーションを推進することが重要であるとした。

横山会長は例に触れ「医療用医薬品の方が安い、というイメージがあるが花粉症薬や漢方の感冒薬(葛根湯など)、湿布薬、保湿剤などOTC薬で対応した方が安く済む場合がある。そのためOTC類似薬を市販薬に移行していくことが国家のためになる」と語る。


近年スイッチOTC化された医薬品


名称変更は登録販売者である横山会長の〝強い思い〟

記者会見には30人近くのメディアが集い、日登会の新たなスタートに多くの質問が飛んだ。以下は質問の一問一答(Aは横山会長)。

Q:日登協は日本チェーンドラッグストア(JACDS)の下部組織という認識のマスコミが多かったが、日登会はどのような関係を築いていくのか。
A:JACDSと日登会は別組織、別団体と明言する。われわれは〝会〟として、働いている登録販売者を支える存在として邁進していく。JACDSと共闘することはもちろんあるが、考え方が合えば、というスタンスだ。

Q:国の検討会で全薬協が指名されることが多かったが、全薬協と日登協の位置づけ、関係性はどのようなものか。協業の可能性は。
A:登録販売者の職能発揮、職域拡大がわれわれの役割であるため、協力し合える分野において門戸は開いていく。

Q:「医薬品販売制度検討会」の報告書、取りまとめに関する新会長の受け止め、行政への今後の意見具申について。
A:会見でも述べたが非常に不満に思っている。販売について日登協の理事として厚生労働省に意見具申した。登録販売者が本来の作業以外に忙殺されることがあってはいけない。

Q:薬剤師と登録販売者との関係性について。
A:もちろんドラッグで働く薬剤師を頼もしいと感じている。登録販売者はOTC薬販売の専門家およびセルフメディケーションのゲートキーパーであり、協力し合える存在だ。

Q:名称変更について。薬剤師会など職能団体のイメージに沿ったのか。
A:その通りです。私の強い思いです。

Q:横山会長は登録販売者の資格を持っているのか。
A:2008年の第一回試験で取得しています。

Q:前会長の樋口会長の任期は。また退任後、名誉会長などの役職への打診は。
A:樋口会長は6期11年務めた。名誉会長職は本人の意思として辞退した。

Q:いわゆる「紅麹問題」で、店頭への健康食品への問い合わせが多い。登録販売者の機能性表示食品など健康食品への関与は。
A:資質向上を含め、薬業研修センターと協力していく。機能性表示食品についても登録販売者が学習できる場を作っていく。

Q:いわゆる「登販不要論」について。コンビニが登録販売者について発言しているが。
A:不要論には反対する、コンビニが登録販売者を必要とするならば協業の道筋はある。登録販売者をないがしろにするような考えでは対応しない。

Q:横山会長は事業トップとして登録販売者をどのように捉えているのか。
A:私も事業のトップとして、また一人の登録販売の有資格者として、登録販売者を誇りに思っている。だからこそ、職能発揮の拡大に強い思いをもって会長に就いた。日本の登録販売者の皆さんにも誇りをもって仕事をできるよう働きかけていく。


会見に多くの記者が詰めかけた



なお、日登会の名称変更によるHPの改修やその他変更は進められており、7月には変更が完了する予定。