さる3月7日に開催された日本チェーンドラッグストア協会(JACDS、池野隆光会長)の25周年記念セレモニーは、政治家や官僚、さらに医療・薬業の業界団体が多数参列し、JACDSとドラッグスストア業界への期待の高さが窺えた。その中で、来賓として挨拶した日本OTC医薬品協会(OTC協)の杉本雅史会長は、厚労省が年初に公表した医薬品販売検討会の取りまとめに触れ、風邪薬の販売規制の強化について、「行き過ぎた内容である」と語った。OTC協は今後、取りまとめの是正を求めると見られ、JACDSがどこまで歩調を合わせ行動できるかにも注目が集まる。
――以下はOTC協・杉本会長の発言の要旨である。
ドラッグストアがここまで目を見張るべき成長を遂げられた理由は、業界の方々の先見性の高さであり、薬機法改正への対応を含めしっかりと業界を取りまとめてきたJACDSにも心から敬意を表する。
OTC協とJACDSは、長年に渡りOTCの普及拡大とセルフメディケーション推進の環境整備を共に連携して取り組んできた。昨年に開催された医薬品の販売制度に関する検討会も、両協会から構成員を1名ずつ輩出し、さまざまな問題について議論を重ねてきた。
しかし、年明けに公表された検討会の取りまとめは、OTC 協やJACDSの活動に大きく影響を与える内容となった。その中で1点だけ、再検討の余地が高いと考える内容をお伝えさせていただく。
その内容とは、社会問題化しているオーバードーズ、風邪薬の乱用問題から派生する医薬品の販売規制についてである。今回の取りまとめは、一定の成分を含む風邪薬、SKUで言えば1500にのぼる商品群を、一律手の届かない場所に陳列するという、非常に厳しい内容となっている。
もちろん、乱用の防止は大変重要な課題だと認識している。それに対して我々は、POPやポスターの掲示等で徹底した注意喚起を行っていく。ただそれ以上に、(風邪薬の)どのブランドが、どこで、どのように乱用されているのかを、しっかりと調査し、きめ細かな対応をしていくことが重要である。
何よりこの取りまとめは、セルフメディケーションの重要性を認識し実践する、大多数の生活者の利便性を損なうことにつながる。さらにはドラッグストアや薬局・薬店といった販売者側の負担も、甚大なものになると考えられる。
乱用問題の本質は、社会との分断や孤独や貧困など、明るい将来を見渡せないと感じさせる社会が背景にある。その本質を議論せずに規制を強化しても、根本的な解決にはならないのではないか。
ましてや今後、少子高齢化の進展によって医療財政の逼迫が懸念されるほか、医療従事者においては、2040年頃に相当な不足感が出てくるという統計も出始めている。
限りある医療提供体制をしっかりと堅持し、本当に必要な方が必要な医療を受けるために、また、国民皆保険制度を将来にわたって維持していくために不可欠なものがセルフメディケーションの推進であり、問題解決の根幹だと思っている。
私どもは、今回の取りまとめを、「やや行き過ぎである」と考えている。今後も引き続き、JACDSとともにセルフメディケーション推進の環境整備を進めていくが、風邪薬における販売規制のあり方についても歩調を合わせ、連携していきたいと考えている。引き続きのご支援とご協力をお願いしたい。
関連記事@Hoitto!「JACDSが25周年記念式典開催」(https://hoitto-hc.com/10720/)