一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は2月に都内で定例合同記者会を開催した。記者会では先般取りまとめられた2024年度調剤報酬改定に関する見解が伝えられた。
日本チェーンドラッグストア協会では、昨年1月に調剤報酬専門委員会(関口周吉委員長)を立ち上げ、同年5月に「2024年診療報酬に向けた要望」を、その後12月には「特別調剤基本料の薬局を有する開設者の体制評価(イメージ)に対する意見」を取りまとめ、国に提出(同時に公表)している。
今般、2024年度調剤報酬改定に関する中央社会保険医療協議会の答申が示されたところ(2月14日)、これまでの協会要望も踏まえた当協会の見解は次の通り。
(敷地内薬局問題)
1.敷地内薬局がひとつでもあればグループ薬局全ての調剤基本料が一律に引き下げる制度の導入が見送られたが、これについては歓迎する。
(在宅の評価、連携強化加算の増額)
2.また、在宅推進のための適切な評価や連携強化加算の増額など当協会要望の数多くが実現したが、これについては歓迎する。ただし、連携強化加算については、災害時に果たす重大な役割に鑑みなお一層の評価が必要である。
(地域支援体制加算への一律減額への疑問)
3.一方、地域支援体制加算について要件の厳格化に加え一律大幅な減額措置が講じられたことは、国が推進する地域包括ケアシステムの構築に逆行するものであり、まことに遺憾である。
今回の措置は加算取得率の高いチェーン薬局への打撃となることは間違いなく、他の薬局に先駆けて意欲的に地域支援体制の構築に取り組んできた立場からは、到底納得できないものである。また、地域医療連携に不可欠な、在宅の推進を始めとする高機能薬局の今後の展開・普及に深刻なマイナスの影響が予想され、政策的にも得策とは考えられない。
(賃上げ原資に対する不公平な取扱い)
4.また、地域支援体制加算の減額分が(7点)は賃上げ原資とされる調剤基本料の増額分を上回るため、地域支援体制の構築に取り組んできた薬局にとっては、賃上げ原資の補填がない結果となっている。薬剤師等への賃上げが国の方針として示されていることからみて、このような結果は公平性の観点からは看過しえないものである。
(グループ規模による差別的評価の取扱い)
5.そもそも薬局は個別に機能に応じて評価されるべきであり、当協会ではグループの規模による差別的な取扱いと、これに関連する調剤基本料の区分と地域支援体制加算の連動の廃止を昨年来要望してきた。いまだに実現していないばかりか、中央社会保険医療協議会で議論もされていないことは、まことに遺憾である。特に地域支援体制加算については、早急に調剤基本料の区分に関係のない一元的な要件とする必要がある。
(医療経済実態調査の集計バイアス)
6.上記5にも関係するが、当協会では、先の意見において「医療経済実態調査の調査対象薬局は1/25の無作為抽出で行われる一方で、専門医療機関連携薬局は全数が調査対象となっているにもかかわらず、集計分析において補正の形跡はない。このため、グループ規模別の平均値等においてバイアスのある集計となっていることが懸念される」旨を指摘した。しかしながら、これまでのところ何の説明もない。薬局を対象とする医療経済実態調査とその集計分析は調剤報酬の議論の前提となるものであり、その透明性と公平性の担保を強く求めるものである。
(決定プロセスへの疑問)
7.いずれにしても、このような問題が出てくる根本原因は中央社会保険医療協議会の決定プロセスからチェーン展開する薬局事業者が排除されていることにある。早急な是正を求めるものである。
記者会に立った調剤報酬専門委員会委員長の関口周吉氏(龍生堂本店社長)は調剤報酬改定に対し「地域支援体制加算について、われわれチェーンが取り組みに尽力しているのになぜ下がるのか」と疑問を呈し、会長の池野隆光氏(ウエルシアHD会長)は「地域支援体制加算は利益が出にくい。だからこそ加算は下げるべきではないだろう」と話した。
関口氏は今回の改定を振り返り「賃上げに直結する点があるので、令和7年に向けてあげていくことが盛り込まれていると考えると今回の減額分と増額分の差はかなり厳しい。連携強化加算など算定されている点はやるべきことはやっていると評価されていると感じる。個人の見解としては今回の調剤報酬改定はトータルでマイナスと捉えている」と述べた。