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OTC薬協「普及啓発強化しDX化を推進」

重点テーマにスイッチOTC拡大、セルメ税制啓発盛り込む

 日本OTC医薬品協会は1月22日(月)に都内で新年会長記者会見を開催。会長の杉本雅史氏(ロート製薬社長)は2024年の重点テーマに「OTC医薬品・OTC検査薬の普及と拡大」「ヘルスリテラシー向上のための環境整備」「セルフメディケーション税制の対象拡大と金額の見直し」「OTC医薬品の品質・信頼性向上に向けた取組み」を挙げ、これら4点を「OTC医薬品情報ポータルサイト」と紐づけ、生活者に寄り添ったセルフケア・セルフメディケーションの普及課啓発を行っていくとした。(取材=中西陽治)

 日本OTC医薬品協会がこのほど開催した記者会見では2024年の重点テーマとして以下の7つの項目を掲げた。

 ①「OTC医薬品・OTC検査薬の普及と拡大」

 ②「ヘルスリテラシー向上のための環境整備」

会見の模様

 ③「セルフメディケーション税制の対象拡大と金額の見直し」

 ④「OTC医薬品の品質・信頼性向上に向けた取組み」

 ⑤「セルフメディケーションに関するDXの推進」

 ⑥「広報活動の強化」

 ⑦「OTC医薬品産業Statement2030の作成と公表」


5月に情報発信の核となるポータルサイトを公開

 ①「OTC医薬品・OTC検査薬の普及と拡大」では、スイッチOTC医薬品の承認までの審査の迅速化の実現、海外でスイッチされている医薬品の国内への早期導入を図るなど、普及に向けたスピーディな対応に力を込める。またOTC検査薬に使用できる検体種の範囲を拡大し、生活者が自身の健康に興味をもってもらうべく普及促進に努める。

 ②「ヘルスリテラシー向上のための環境整備」では、2023年に中学・高校向けに提供した医薬品に関する教材「くすり教育教材」の提供を今年4月に小学校にも拡大し、教育システムの充実を図っていく。

 ③「セルフメディケーション税制の対象拡大と金額の見直し」では、税制対象品目を全てのOTC医薬品へと拡大することを目指す。また内容に関しても下限額(1万2,000円)の引き下げと上限額(8万8,000円)の引き上げを目標とする。さらにOTC医薬品を活用しながら制度を知らない〝隠れセルメ対象者〟への認知を拡大し、対象者の掘り起こしを行うとした。

 ④「OTC医薬品の品質・信頼性向上に向けた取組み」では、製造販売業三役を中心とした法令遵守体制の整備を進め、製造管理・品質管理体制(GMP)、品質保証体制(GQP)および安全管理体制(GVP)の一層の強化を図る。

 7つの重点テーマのうち、上記の4点を

 ⑤「セルフメディケーションに関するDXの推進」と連携させるスキームを発表した。

 ⑤「セルフメディケーションに関するDXの推進」では今年5月に公開予定の「OTC医薬品情報提供のポータルサイト」を核とした情報発信を行う。ポータルサイトと上記4点の重要テーマを連携し、生活者はもちろん、OTC医薬品提供者に活用を促す。ポータルサイトではOTC医薬品はもちろん、医療用医薬品との違いなども盛り込む予定。

 DX施策では「おくすり手帳との連携」や「セルフメディケーション税制申告の支援」の環境整備にも努めていく。

ポータルサイトを核に発信の強化を図る

杉本会長「薬物濫用の根底にある社会的問題に目を向けるべき」

杉本雅史会長

 杉本会長は2023年を「新型コロナウイルス感染症の分類が5類に引き下げとなる中、新型コロナ・インフルエンザ同時検査キットのOTC化が進み、セルフケア・セルフメディケーションを取り巻く環境が大きく変化した一年だった」と振り返った。一方で2023年はOTC医薬品の濫用問題が大きく報じられる年だったことに触れ、「自分自身で健康管理が行え、軽度な病気の症状緩和に役立てられるOTC医薬品は、購入のアクセスの良さが利点でもある。しかし2022年~2023年にかけてOTC医薬品の濫用症例が6倍にも広がっているという報告もある。厚生労働省は『医薬品の販売制度に関する検討会』を通じて販売制度について議論が行われている。当協会としても薬物濫用問題は重大なテーマだ」と危機感を滲ませた。

 その対応として「実態を調査し、結果に沿った対応を行っていく必要がある。セルフメディケーションの重要性を認識し適正に使用されている生活者がほとんどであり、その利便性を担保していく必要がある。感冒薬を始めとした濫用の恐れのあるOTC医薬品は1,500品目あるが、これら全てに一律的な販売規制をかけるのではなく、現に濫用に用いられている個別の製品ごとに対応を行っていくことが重要だ。大きな課題として受け止め、孤独や貧困といった濫用問題の背景にある社会問題に目を向けて議論していくべきだ」と長期的な対応を呼び掛けた。

 杉本会長は「多くのメディアが取り上げるOTC医薬品の濫用問題は、我々メーカーはもちろん、直接提供する薬剤師、医薬品登録販売者の協力が必須だ。協会も日本チェーンドラッグストア協会と定期的な会談を行い、併発ポスターの配布などの情報提供を進めている」と示した上で「それ以上に購入者側、生活者のリテラシー向上が不可欠。〝薬物濫用に依存する根本的な社会問題〟に目を向けなければならない」と掲げた。