大塚製薬株式会社(井上眞社長)と米国・Click Therapeutics, Inc.(David Benshoof Klein社長、クリック社)は先ごろ、、両社が共同開発したうつ病治療のためのデジタル治療アプリ「Rejoyn®(以下、「リジョイン」)」の販売を英国で開始した。すでにリジョインは米・FDA(米国食品医薬品局)より認可を受けた世界初の大うつ病(MDD)のデジタル治療アプリとして、2024年8月に販売を開始している。英国での発売は、米国に続く展開で欧州では初導入となる。
リジョインは、患者のうつ病に対する通常の治療と併用することを前提とし、うつ病患者さんおよび医療従事者に新しい治療を提供する。すでに臨床的に効果が実証されている
①様々な感情を表す顔の表情を用いた認知機能のトレーニング、
②アプリによる認知行動療法のレッスン、
という2つの治療法を組み合わせた6週間の治療セッションを通じ、患者のうつ症状を改善するように設計された。一般に流通しているウェルネスアプリとは異なり、治療アプリであるリジョインは、臨床試験で有効性と安全性が確認された医療機器であり、医療従事者の処方が必要となる。
臨床試験において、リジョインの治療を受けた患者は、ベースラインからうつ症状の重症度が改善されており1、この症状の改善は、Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)、Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)、Clinical Global Impression – Severity(CGI-S)など、複数の評価尺度において一貫した改善効果が確認されている。一方でリジョインに関連すると評価された有害事象は確認されず、治療中止に至った有害事象や死亡例は報告され邸内た1。
大塚ファーマシューティカル(U.K.)Ltd.のマネージングディレクター・Ryan Gynne氏は、「デジタル治療を通じて、メンタルヘルスケアの未来を築く取り組みに貢献できることを誇りに思います。新しいテクノロジーであるリジョインが、既存の治療を補完します。リジョインを必要とする患者さんが適切にアクセスできるよう、私たちは今後も、全国のNHSトラストと緊密に連携していきます」と述べている。
リジョインについて
リジョインは、リNHS(英国国民保健サービス)のデジタル技術評価基準(DTAC)認証を取得した、UKCAマーク付きの医療機器。うつ病エピソードを経験している患者のためのデジタル治療アプリで、スマートフォンで利用が可能。使用にあたっては、医療従事者からの処方が必要で、うつ病に対する通常治療と併用して使用されている。6週間のプログラムを通じてうつ症状を軽減することを目的とした、以下の3つの主要要素を組み合わせている。
1) 科学的根拠に基づいた「EFMT:Emotional Faces Memory Task」による脳トレーニング
様々な感情を表す顔の表情を用いた認知機能のトレーニング
2) 認知行動療法(CBT)に基づく心理療法のレッスン
患者さんが重要な認知的・感情的スキルを学び、実践できるよう支援します。
3) テキストメッセージやアプリ内通知
患者さんが計画通りに治療を継続できるよう促します。
MIRAI臨床試験について
MIRAI臨床試験は、大うつ病(MDD)と診断され、うつ病治療のために抗うつ薬を服用している成人を対象に、13週間にわたって実施された主要な多施設共同、遠隔、二重盲検、無作為化比較試験。(MDDは英国では一般的に「うつ病」とされています。)有効性の主要評価項目は、ベースラインから6週目までのMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)総スコアの変化だった。さらに、Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)とClinical Global Impression – Severity(CGI-S)を用いて有効性の評価が行われている1。
本試験では、合計386名の参加者がリジョインを使用する群(194名)と、自身のスマートフォン上に搭載されたシャム(偽)アプリを使用する対照群(192名)に無作為に割り付けられた。被験者は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)の基準に基づき、MDDと診断されていり、現在服用中の抗うつ薬に対して十分な治療効果が得られていない(現在のうつ病エピソードにおいて症状の重症度の改善が50%未満である)と報告した22歳から64歳までの患者。本試験は、3週間のスクリーニング期間、6週間の治療期間、4週間の延長期間で構成された1。
1Rothman B et al. Presented at Psych Congress 2024. October 29-November 02, 2024; Boston, MA, USA. Poster 185.