2024年5月18日(土)、19日(日)の両日、東京都千代田区の都市センターホテルにて「第8回日本老年薬学会学術大会」が開催された。大会は「つなぐ・あゆむ・まもる~未来の地域医療を描く~」をテーマに両日で計37のシンポジウム、講演やセミナーが発表され、薬剤師を始めとした医療関係者はもちろん、アカデミア、メーカー、ベンダー、行政関係者、学生が多く駆け付けた。(取材=中西陽治)
「第8回日本老年薬学会学術大会」は大会長の帝京平成大学薬学部長の亀井美和子教授を筆頭に、帝京平成大学薬学部が事務局となり、実行委員長は同学部の小原道子教授が務めた。
大会長の亀井教授は「第8回の日本老年薬学会学術大会の準備を約1年3か月前から進め、実行委員会一同が力を合わせて時間をかけて企画・準備を進めてきました。今日を迎えられたことを大変嬉しく思います。本大会では、高齢者を支える医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の医療食と介護に関わる関係者が集い、連携の在り方や思いの共有とスキルアップを図り、高齢者の薬物治療の適正化を目指していきましょう」と思いを語った。
大会では、日本老年薬学会の日本版抗コリン薬リスクスケール作成ワーキンググループによる、「日本版抗コリン薬リスクスケールの開発~日本老年薬学会の新たな挑戦~」と題したシンポジウムが開かれた。
同グループは高齢者に頻用される抗コリン薬のリスクを正確に評価し、薬物療法の適正化(ポリファーマシー対策を含む)を図ることを目的として、抗コリン薬のリスク評価に関する具体的な指標である「日本版抗コリン薬リスクスケール」を開発。シンポジウムでは「リスクスケールについての抑えるべきポイント」(演者:ワーキンググループ)をはじめ「各国の抗コリン薬リスクスケールに関する文献レビュー」(演者:藤野医科大学病院薬剤部・水野智博氏)、「抗コリン薬リスクスケールを用いた薬物有害事象評価に関するスコーピングレビュー」(演者:フラットアイアンヘルス・那須いずみ氏)、「抗コリン薬の薬理と認知機能低下に関して」(演者:愛媛大学大学院医学系研究科・茂木正樹氏)、「ポリファーマシー・抗コリン作用から生じる口腔機能障害の基本」(大阪大学大学院歯学研究科・阪井丘芳氏)、「抗コリン薬に関する薬理学的評価とリスクスケール」(演者:静岡県立大学大学院薬学研究員薬食研究推進センター・山本静雄氏と望月正栄氏、武庫川女子大学薬学部・籠田智美氏と篠塚和正氏)などが語られた。
大会では薬物療法に関わる医療連携だけにとどまらず、その担い手たる薬剤師と薬局の役割、また食によるサポートも披露された。
ランチョンセミナーでは「これからの在宅医療を支える地域薬局薬剤師の価値向上を目指して~病院薬剤師・看護師との連携を考える~」と題し、スギ薬局取締役副社長の杉浦伸哉氏が講演。
座長の日本ヘルスケア協会会長の今西信幸氏とともに、調剤併設型ドラッグストアと薬剤師の在宅医療における役割や病院・医薬学系大学との連携について披露された。
また、食によるサポートでは、榮太樓總本鋪社長の細田将己氏による「榮太樓總本鋪が取組む『和菓子で食養生』とこれから」が講演された。
同社は2024年に嚥下機能が低下した高齢者でも食べやすい「とろみのど飴」の発売を予定しており、創業200年を超える老舗和菓子メーカーとして“養生”の観点から生まれた商品の歴史を振り返った。会場では嚥下困難者のQOL維持についての質問が飛び、座長の帝京平成大学教授の小原道子氏も食品メーカーが抱くホスピタリティに共感の意を表した。
会期中は「地域医療は薬局薬剤師が担い手になる重要な領域」と垣根を超えた連携の声が多く寄せられ、会場は熱気にあふれた。
日本老年薬学会とは
日本老年薬学会は、薬物治療の適正化を研究・啓発することを目指し、ポリファーマシーをはじめとする薬物治療上の喫緊の課題に対応するべく、2016年1月に設立された。