ドラッグストアMD研究会(DMS)と健康食品市場創造研究会が組織する合同研究会は1月24日に都内で「第197回DMS定例会 新春政策セミナー・賀詞交歓会」を開催。セミナー後半ではDMS会員企業による「ベトナム視察・セミナー報告」が行われ、久しぶりとなった海外視察の模様と、ベトナムにおけるビジネスの現状を報告した。
報告に際して登壇したDMS推進委員の佐久間雄治氏(ウエルシアHD総務部)は「滞在中の4日間で、延べ4本の現地セミナーと7地区の店舗視察、ベトナム文化に触れる機会や懇親会もあり非常に盛沢山な内容でビジネスの観点で得るものが大きい視察となった」と伝えた。
DMS会員企業に参加を募って行われた「ベトナム視察」は、2023年11月1日~11月5日にわたって行われ、ドラッグストア業界に関わる製販配の関係者が多く参加した。コロナ後として初となる海外視察では、現地の小売のニーズや経済状況を知る機会はもとより、ベトナム進出のヒントとなるビジネスセミナーが実施され、学びと発見が大きいイベントとなった。
11月2日のベトナム現地のセミナーでは、インテージベトナムでディレクターを務める今村信人氏による「ベトナムのお宅、バーチャル訪問」が行われた。ベトナムの住環境は、一階が店舗で二階が住居のショップハウスと普通の住居の2タイプに大別されること、またコンドミニアム(マンション)とヴィラ(タワーマンション)タイプが主流であることが紹介された。
また、ベトナム国民にとって「日本は信頼できるか」の問いに、3人に一人が信頼できる、と好意的な感覚を抱いているようだ。
佐久間氏はベトナム視察を通してのヘルスアンドビューティーの傾向について「化粧品は韓国の支持が高い。使用感や耐久性では日本に軍配が上がるが、デザインで韓国が優れている。つまりメイドインジャパンの神話はもはや安泰ではないと感じた」と述べた。
続いて同日2つ目の現地セミナーでは、花王ベトナムのゼネラルマネージャー安江晋太郎氏による「ベトナム化粧品市場と花王の取組み」では、ベトナムにおける化粧品市場の現状が報告された。
ベトナムの化粧品における外資系の比率は、日本の資生堂ブランドの支持が厚く、シェアは27%と圧倒的。韓国のブランドは4位だったという。花王の「キュレル」ブランドはベトナムではまだ認知度が低いものの、使用者や認知者のロイヤリティが高く、敏感肌に悩む生活者にとって必需品になっている。佐久間氏は「経済成長が著しいベトナムでは化粧品市場の伸びしろがある」と感想を述べた。
続いて同日に行われたマツモトキヨシベトナム ジョイントストックカンパニー CEOの宮岡弘樹氏のセミナーの模様が紹介された。ベトナムのドラッグストアは「モダントレード」(いわゆるドラッグストア)と、「トラディショナルトレード」(いわゆるパパママ薬局と言われる家業薬局でベトナム国内に約5万店)の2つのタイプがあり、少し前の日本に近い状況であると伝えられた。
医薬品のレギュレーションの関係で、ベトナムで日本以外の外資系ドラッグストア(ワトソンズ、ガーディアンなど)は医薬品を取り扱っておらず、健康食品や化粧品のみを販売していると付け加えられている。
セミナーを受け佐久間氏は「同店の出店後、宮岡氏はコロナの影響で非常に苦労したと語っていました。コロナでのベトナム国内混乱で『当時は軍隊が支給する食糧を食べて過ごしていた』と言っていたのが印象的です」と振り返った。
翌日11月3日に現地で行われた「ベトナム流通業視察セミナー」が開かれ、イオン執行役 ベトナム担当 イオンベトナム取締役社長 古澤康之氏から「日本で得たショッピングモール業態の確立と日本商品の独自性を伸ばしていく。国土が南北に長いベトナムは日本と似ており、南北に物流拠点を据えた」とベトナムでの戦略が詳らかに紹介された。
同社が手掛けるショッピングモール「イオンモール タンフーセラドン」(タンフー区)は、「ショッピングモール内でカテゴリー別にテナント分けされており、日本発ならではだと思った」と参加者は語っていた。
店舗視察は現地滞在中の3日間で7つの地区を周り、ベトナム地場はもとより、日系その他外資系の店舗を視察した。
・ビンコムセンター ドンコイ(ホーチミン市1区):「マツモトキヨシ ビンコムセンター ドンコイ店」(日本DgS)ほかワトソンズ(香港DgS)、ウィンマート(ベトナムSM)など
・ビンコム メガモール(ホーチミン市2区):「マツモトキヨシ ビンコムメガモール タオディエン店」ほかメディケア(ベトナムDgS)、ウィンマートなど
・エステラ プレイス(ホーチミン市2区):ガーディアン(香港DgS)、ACEホームセンター(米HC)、安南グルメ(ベトナムSM)など
・イオンモール セラドン(タンフー区):イオン(日本GMS)、Glam Beautique(日本HBC)、コーナン(日本HC)、メディケア、ワトソンズなど
・路面店(タンフー区):Hasaki Beauty&Clinic(ベトナムHBC)、ガーディアンなど
・路面店(ゴーヴァップ区):Emart Supermarket(韓国SM)、ワトソンズ、Hasaki Beauty&Clinicなど
・サイゴンセンターモール(ホーチミン1区):ホーチミン高島屋(日本百貨店)、安南グルメ、ベンタイン市場など
視察の感想として「マツモトキヨシは近隣のワトソンズと比較しても品揃えが豊富で従業員の数も多いためカウンセリング力がある。店頭展開の『アルジェラン』ブランドが人気のようだ。ベトナムでも『マツモトキヨシ』のブランドが響いていると感じた」「レギュレーション上、日本の医薬品販売が難しいが、そのぶん健康食品売り場の比率を高くするなど店舗ごとのニーズに沿うよう工夫が感じられる」「ガーディアンやメディケアもベトナムで展開しているが、店舗視察して比較するとマツモトキヨシが一番人が多かった」とベトナム現地でしか得られない知見が挙がっている。
佐久間氏は「ベトナムの路面店で、商品を陳列しながらプライスカードが一切ない化粧品店には驚いた。どうやらスマホで店頭の商品パッケージをスキャンすると商品情報と売価が分かる仕組みになっているようだ」と語り、小売業態の変化に触れた。
11月の「ベトナム視察」は申し込み前に定員に達し、自らチケットをとり現地で落ち合う参加者もいるほど盛況で、今後DMSでも海外視察およびセミナーを活発に行う模様。なお次回の視察候補は台湾、グアム、香港を予定している。