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「ビール」の価値再興 17年ぶり新ブランド

 「一番搾り」&「スプリングバレー」に加わるスタンダードビール

 キリンビールは1月11日に都内で事業方針を発表し、「全員でお客様価値の創造にチャレンジ」をテーマに戦略を進める姿勢を示した。テーマの一つ「強固なブランド体系の確立」において主要ブランドの「一番搾り」に次ぐ新しいスタンダードビールを17年ぶりに発売する。また二つ目のテーマ「新価値を提供する事業・ブランドの着実な成長」ではクラフトビール事業の「SPRING VALLEY(スプリングバレー)」の顧客接点を増やし、ビールの新しい楽しみ方を深耕していく方針を示した。

 2023年のビール市場全体は経済活動の復活があったものの、5月までのコロナ禍とその後の大きな消費の変化で前年比99%程度での着地を見込んでいる。一方でビールカテゴリーの構成比は飲食店の消費回復と酒税法改正の影響により6年ぶりに50%を超えると推計した。

 同社では主力ブランド「キリン一番搾り」やクラフトビール「スプリングバレー」が好調で、ビール類計は1億1,390万箱(大瓶換算)と前年比94%と苦戦したものの、2024年はコロナ規制のない一年のスタートのため1億1,680万箱(2023年比2.6%増)を見込んでいる。

消費マインドに応じた「かしこい商品」が主要に

堀口英樹社長

 事業方針発表に登壇したキリンビール社長の堀口英樹氏は「目まぐるしい消費マインドの変化に柔軟に対応することが酒類メーカーとして大切。ビールを飲むシーンも変化しており今後は消費者の意識に対応した、いわゆる『かしこい商品』が必要になるだろう」と示した。

 そのうえで2024年の戦略テーマを「強固なブランド体系の確立」と「新価値を提供する事業・ブランドの着実な成長」の二つに据えた。

 「強固なブランド体系の確立」では、ビールの「一番搾り」ブランドの成長および、第三のビール「本麒麟」のリニューアル、RTDカテゴリー「氷結」の新商品リリースの検討を進めている。

 中でも大きなトピックとして上記3ブランドに加えて、キリンビール17年ぶりとなるスタンダードビールの新ブランドを発売することを明らかにした。

 発売時期や商品詳細などは明かされなかったが、会見に登壇した同社執行役員マーケティング部長の今村恵三氏によると「『一番搾り』に並ぶブランドに位置づけられる。昨年の酒税法改正を受け狭義のビール市場は再び活性化が見込まれ、『一番搾り』ブランドからの提案も一つの手段だと考えられるが、別の角度からの新商品上市に踏み切った」と覚悟をのぞかせた。

新たな成長エンジンにクラフトビール

 また「新価値を提供する事業・ブランドの着実な成長」ではクラフトビールの「スプリングバレー」の顧客接点を増やしていく。

2021年発売からクラフトビールをけん引している「スプリングバレー」ブランドは、2023年には前年比103%の伸長。

今村恵三部長

 一方でビール類ユーザーにおけるクラフトビール飲用実態(キリンビール調べ)では、クラフトビールを嗜んでいない層が8割におよび、その理由として「失敗したくない」「冒険したくない」といった理由で、既存の商品を選ぶ傾向にあるという。

 キリンビールではその未経験者層の取り込みを図るべく〝キリンクラフトビール専任プロジェクト〟を立ち上げ、直営店「スプリングバレーブルワリー東京」のオープンや、量販店(東急ストアなど)でクラフトビールコーナーの提案の強化を図る。また2024年前半には商品のリニューアルを予定している。

 堀口氏は「クラフトビールならではのポテンシャルは大きく、画一的なアプローチではなく身近に感じていただける施策を拡大する。量販はもちろん、例えばヤッホー社との共同での話題化や、量販店でのクラフトビールコーナーの提案を強化していく」と話す。