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Hoitto!新春特別対談 生活者の健康守る“予防”啓発を共に‼️ ウエルシアHD・池野会長×サラヤ・更家社長

――コロナ禍は生活者のあらゆる意識と行動を変えましたが、これをどのように受け止めて行動されてきましたか?

ウエルシアHD・池野隆光会長

池野会長 私たちの業界は20年以上前から「セルフメディケーション」すなわち、「自分の健康は自分で守る」ということを啓発してきましたが、新型コロナウイルスの流行を機に、その意識がさらに高まったと感じています。

弊社はコロナ禍に抗原検査・PCR検査を提供し、また発熱症状の緩和等で処方箋を受け付けるなど、医療の入口の役割を担ってきました。このほか自宅待機を迫られた方などには、衛生用品を含む日用品から食品までをワンストップで購入できる便利な店として、理解が進んだのではないかと思います。

緊急事態が宣言された際は、弊社店舗にマスクや手指消毒剤を求める方が大勢訪れ、一時は欠品してご迷惑をおかけしたこともありました。それら商材はコロナの終息とともに販売量は減りましたが、今でもコロナ前の量が売れています。これは「衛生」に関する消費行動が変化した現れだと言えます。

コロナが終息したとはいえ、私たちの周りには感染症のリスクが常に存在します。衛生への意識の高まりを一過性のものにせず、継続してもらうことが大切です。これからも、「自らの健康を自ら守る」ことを、啓発し続けなければなりません。

サラヤ・更家悠介社長

更家社長 ダイヤモンド・プリンセス号の乗客がコロナを発症したのが2020年2月で、その翌月から衛生用品の需要が急激に高まりました。弊社も直ちに供給能力を高め、工場の24時間創業などを行いました。ただ、工場内で感染者を出すことは絶対に許されませんので、まさに水際の活動を慎重に行なってきました。

結果的にコロナは世界的なパンデミックとなりましたが、兆候は以前からありました。2003年のSARS、2009年の新型インフルエンザ、さらにその時々のノロウイルスなど、様々な感染症が定期的に襲ってきていました。

今回のコロナ禍では、こうした経験も活かされたと思います。医療や介護の現場でマスクの着用や手指消毒が徹底され、公共の場や一般家庭でも、乳幼児や妊産婦、既往症のある方や高齢者に配慮するなどにより、被害の低減が図られました。ただ、コロナが2類から5類へ移行したことで少し油断も出てきたと感じます。池野会長の言うように、この経験を将来の備えとして活かさなければなりません。

――今回のコロナ禍で得た教訓は何でしょうか。

更家社長 弊社は、医療・介護の事業、官公庁や飲食店などの公衆衛生・食品衛生事業、そして小売等を介した消費者向けの事業を展開しています。3つの現場を知る事業者はごく少数なので、それぞれの現場で得た知見を蓄積している強みがあります。

ただコロナ初期には、日本政府の要請により医療現場などエッセンシャルワーカーの現場を最優先としたため、消費者向けの供給が出遅れました。この反省から供給設備の増強に取り組み、例えばマスクは材料工場を大阪に増設し、一日最大12万枚の製造能力を確保しています。

設備の増強には国の強靭化計画の補助金も活用しました。結果的に建設費の高騰で足は出ましたが、マスク、手袋、ガウン、そして手指消毒剤といった衛生用品の供給は、次のパンデミックに備えた体制となっています。

池野会長 来るべき高齢社会では、医療・介護の現場だけでなく、一般家庭でも手指消毒剤等の衛生商材の出番が増えると予想されます。ドラッグストアもその対応を強化しなければならないので、サラヤさんの取り組みは心強い限りです。

更家社長 介護の現場は施設から在宅へとシフトしていきますので、ウエルシアさんのように在宅の窓口を担う企業との連携は必須の活動と認識しています。

――医療と接点のあるドラッグストアも、果たすべき役割が明確になってきたのではないでしょうか。

池野会長 調剤業務の支持が高まるにつれ、ドラッグストアは医療の窓口として認知されてきましたが、医療の中でも「治療」はあくまで医師の領域であり、ドラッグストアの主たる領域は「予防」だと考えています。

生活者が病気にならないように情報を発信し、予防が間に合わない方には医師を紹介する。そして、医師の治療が完了したらまた、予防情報の提供に努める――。このスタンスを明確にしていくことが大切です。

もちろん、予防の延長線上にある介護の窓口も私たちの機能となります。予防と介護の間を行ったり来たりするような仕事が、これからのドラッグストアの役割だと考えています。


――サラヤさんのモノづくりも一貫して「予防」をテーマにしていますね。

更家社長 コロナ禍で国は医療機関に莫大な予算を計上しましたが、マクロ的な観点から、薬剤費を含む医療費の抑制は大きな課題です。その解決策が「予防」であることは明白で、弊社にとっても最重要のテーマです。

例えば当社のカロリーゼロ甘味料「ラカントS」は、最近はダイエット目的の使用で好評を得ていますが、もともとは糖尿病のリスクを回避する、予防を目的とした商品です。糖尿病患者の生活の質の向上と予備軍を啓発し、将来の医療費の抑制に貢献したいと考えて約30年前に開発しました。

池野会長 どうやったら糖尿病を予防できるのか、その情報提供は私たちにとっても大事な活動です。たとえ良い商品でも特徴を理解してもらえなければ、お客様は手に取ってくれません。陳列の場所や訴求方法をしっかりと考えて、予防を啓発していく必要がありますね。

更家社長 弊社では、食事・睡眠・運動など、「生活シーン」に応じた予防を提案しています。食事のシーンでは、「糖質オフ」のほか、「ビタミン・ミネラル強化」「プロテイン強化」「腸内フローラ改善」などの切り口を考えており、今後もそれら解決方法を示す製品をどんどん発売していきます。

池野会長 とかくドラッグストアのバイヤーはカテゴリー単位で棚を作りがちで、単価の異なるものを並べる技術が足りていません。サラヤさんの言うように、生活に寄り添った、「暮らしの中の分類」を考慮した売場づくりは、予防の啓発に有効だと思います。

――高齢化に加え地域の過疎化も問題となる中、ウエルシアは移動販売車を用いた生活支援に乗り出しました。

池野会長 元々は処方箋をお持ちになれない方に薬を届ける目的で、移動調剤室つまり「モバイルファーマシー」を走らせる構想でした。しかし現行の法律は所在の定まらない薬局に許可が降りないので、この構想が先送りとなった経緯があります。

その後も行政と協議を重ね、「限界集落」に限って移動調剤が認められましたが、その限界集落は街の中心から30kmも離れた「ポツンと一軒家」状態でした。一軒のために車を走らせるのはさすがにコストが合わない。ならば、商品を届ける「移動販売車」はどうだろうと考えました。

実は店舗のない地域に商品を配達する実験は10年以上前から行っていました。当初は各家庭に端末を配りボタン1つで注文できるシステムを提供したのですが、3ヶ月もすると注文がゼロになりました。その後電話注文の方式に変更するとポツポツと注文が入り、噂を聞きつけた近隣の自治体から「うちもやって欲しい」と言われるようになったのです。

その実験は対象を高齢者と障害を持つ方に限定したため、やはりコストは合いませんでしたが、確実にニーズがあることは理解できました。検討の末、「車に一定数量の商品を積んで運べばコストを吸収できるのでは?」となり、現行の移動販売車「うえたん号」が誕生したという訳です。

昨春に「うえたん号」の第1号を静岡県島田市の山間部で運行したのを皮切りに、佐渡島や東北の買い物難民地域へと実験地域を拡大し、現在まで7自治体・8台目を走らせています(23年12月1日現在)。

この実験を通じて、事業化の鍵は自治体との連携であるとの確信を得ました。現在は車載モニター越しに弊社薬剤師のほか、行政の総務課ともつながるようになっています。さらに今後は、医療施設との連携にも取り組んでいきたいと考えています。

更家社長 素晴らしい活動です!

池野会長 いずれ医療の形が変わり、遠隔診療や遠隔での服薬指導も進んでくるでしょう。そうした時代を見据えながら、引き続き「うえたん号」の検証を進めていく所存です。

更家社長 ドライバーも御社のスタッフなのですね?

池野会長 そうです。荷物を運ぶだけなら誰でも良い、とはなりません。バナナは「おいしいですよ」と言えば買ってもらえるでしょうが、例えば「ラカントS」は、その特徴や活用方法をしっかりと伝え購入していただくことが必要です。店頭と同様、カウンセリング機能を備えた運用が、「うえたん号」の肝になります。

――「うえたん号」の実験は将来を見据えた投資ですが、サラヤさんも予防市場の将来を見据えた投資を進めています。

更家社長 将来に向けた重要な投資の1つが歯科医の運営です。現在は医療法人サラヤ健育会を通じ、大阪市と池田市に歯科医を運営しており、今春には大阪市北区に新設される未来医療国際拠点内にも開設します。池田市では在宅診療を行なっており、また未来医療国際拠点では大阪大学と協働してエビデンスベースの研究を展開していく計画です。

これまで厚労省と日本歯科医師会は「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という8020運動を進めてきましたが、最近では「100年mouth−100年health」という標語とともに、オーラルケア、特に歯周病の予防を啓発する活動が盛んになってきました。

弊社でも、歯科医らとの研究で口内フローラを守るための情報発信を強化し、また歯周病の原因菌に直接作用する歯磨き粉も商品化しています。来春にはその新商品も発売する予定です。

池野会長 2040年までに肺炎の死亡率が35%増えるという報告がありますが、その多くは誤嚥性肺炎であると考えられます。誤嚥性肺炎は歯周病菌などの口内細菌が深く関係しており、口内フローラをどのようにコントロールしていくかは重要な課題です。

また、その予防は歯磨きから食生活まで幅広く、潜在市場も大きいと考えます。ドラッグストアと歯科医が連携すればできることも多いのですが、残念ながら現状は歯科医との接点が弱いのです。この部分でも、サラヤさんの知見を活用させていただければと思います。

更家社長 弊社は健常者のみならず要介護者向けのオーラルケアのノウハウも持っています。適切な介護によって誤嚥性肺炎は防げますが、そのことをもっと、要介護者を抱えるご家族に知っていただきたいと考えています。今後は看護大学と連携して、在宅サービスや在宅に関するエビデンスの研究に取り組んでいきます。この部分でウエルシアさんと共有できるテーマがありましたら、ぜひご一緒したいですね。

――在宅への参入はドラッグストアにとっても課題の1つです。

池野会長 弊社は薬剤師を活用して在宅領域の開拓を進めていますが、ただ単に訪問しても、その方の健康状態を見逃していたら意味はありません。服薬指導だけでなく、口内フローラを含め健康に関するあらゆる知識を習得し現場で活かす必要があります。その情報の収集とスタッフの教育も当面の課題です。

更家社長 手指消毒に関して当社は、医療レベルの情報の蓄積があります。例え高品質の製品でも、使用方法が間違っていたら効果を発揮できません。「いつ」「どのように」(手指消毒を)すべきか、また「何故必要か」というところまでをご理解いただくことが重要だと考えます。

池野会長 同感です。昔から「ご飯を食べる前に手を洗おう」と言われてきましたが、大切なのは、「何のためにそうするのか?」を理解することです。それが「予防のため」ということがしっかりと理解されれば、習慣として定着すると思います。

更家社長 「予防」を通じて生活者のQOLを高めたいと願うウエルシアさんの思いが伝わり、改めて応援したいという気持ちになりました。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。

池野会長 幅広い事業領域を持ち、医療品質の商品・サービスを提供しているサラヤさんと一緒に、「予防」の大切さ伝える活動を展開し、新たなマーケットを開拓していければいですね!


――ありがとうございました。

インタビュー後のツーショット。「ともに予防市場を盛り上げ生活者の健康に貢献していきましょう!」