ドラッグストアが地域で果たす役割は重要。そして薬剤師、医薬品登録販売者の職能に期待したい―国民の健康創造へ国会議員によって結成された公明党チェーンドラッグストア振興議員懇話会が、2018年4月に初会合を開催して以来、5年7か月が経過した。これまで日本チェーンドラッグストア協会とセルフメディケーション税制や消費税の軽減税率、医療費控除の特例の適用やスイッチOTC医薬品の拡大、リフィル処方箋など、業界が抱えている様々な課題を話しあってきた同懇話会。二代目会長の竹内譲衆議院議員は、「ドラッグストアの今日の隆盛は、増大する国民総医療費の抑制に結びつくセルフメディケーションやヘルスケアニーズに対応してきたからだ」として、「これからもドラッグストアに期待したい。そのためにも店頭における薬剤師と医薬品登録販売者の機能は欠かせない」と話している。竹内会長に、『国民の健康ニーズとドラッグストアの役割』について聞いた。(インタビューと文:流通ジャーナリスト・山本武道/カメラ:ヘルスケアワークスデザイン代表・八島 充)
――衆参両院の国会議員48名が参加し、国民の健康づくりに活躍されておられる公明党チェーンドラッグストア振興議員懇話会が設立されたのは、どのようなきっかけなのでしょうか?
竹内 私が2015年に厚生労働副大臣に任命されたことから、薬業界の方たち、その頃は九州を中心にドラッグストアの方々とのお付き合いが先行し、中でも日本チェーンドラッグストア協会理事のドラッグストアモリの森 信さんと親しくさせて頂いていました。
私と森さんは同年輩だったこともあって波長がとても合い、個人的にも親しくさせて頂き、交流しているうちに話が盛り上がって、公明党の国会議員とドラッグストア業界とが話し合う場として懇話会を作ろうということになったのです。ちょうど公明党でも新しい懇話会を作り、セルフメディケーションやスイッチOTC医薬品などの改革をしようとしていた時期でもありました。
日本チェーンドラッグストア協会の会長を歴任されたマツキヨの松本南海雄さん、クスリのアオキの青木桂生さん、そして現会長の池野隆光さん(ウエルシア)、副会長の根津孝一さん(ぱぱす)などにお会いさせて頂くなど、懇話会ではセルフメディケーション税制や消費税の軽減税率、医療費控除の特例の適用、セルフメディケーションの振興やスイッチOTC医薬品の拡大、リフィル処方箋など、業界が抱えている様々な課題を話し合ってきました。
――ドラッグストア市場は今日、8兆7000億円に成長しました。会長は、この業態について、どのように思われますか?
竹内 人口の高齢化とともに国民の間には、軽い疾病であればセルフメディケーションとしてOTC医薬品を活用するだけでなく、病気にかからないよう予防意識が高くなりました。ドラッグストアは、こうしたニーズに対応した店づくりに積極的に取り組んでこられたからこそ成長してきたのだと思うし、これからも発展していくでしょう。
私自身も忙しい合間に、よくドラッグストアに行き買い物をしますが、ドクターから処方箋を発行してもらいドラッグストアで薬剤師が調剤する医薬品の他にスイッチOTC医薬品も増え、サプリメント、化粧品など、国民の健康づくりのための商品が1か所の店舗で入手できるので、とにかく便利です。
実は個人的なことですが、胃腸があまり丈夫な方ではなく逆流性食道炎を発症することが多く、特に選挙活動の時期になると胃が痛くなるので、20年ほど前は、とても困っていました。そんなおりに、胃酸過多に対応する医療用医薬品がスイッチOTC化されましたので、ドラッグストアでいつでも買うことができるようになり、とても助かりました。
ドラッグストア業界の皆さんから、スイッチOTC医薬品を増やす要望がありますが、私自身の体験からも、もっと増えていってもいいと思っていますし、セルフメディケーションを実践することによって高騰する国民医療費の抑制にもつながります。それにドラッグストアでは薬剤師が処方箋調剤や在宅医療、そしてスイッチOTC医薬品の服用法を説明してもらえます。国民の皆様の間に、セルフメディケーションに対するニーズは、今後も増えていくのではないでしょうか。
―― 2009年の改正薬事法(現薬機法)で誕生した医薬品登録販売者制度ですが、薬剤師でなくてもOTC医薬品の2類、3類を販売できるようになり、国民の健康づくりに活躍されています。
竹内 ドラッグストア業界は年々成長してきましたが、その背景には店頭で日々、来店客の健康相談に対応する薬剤師だけでなく、医薬品登録販売者として活躍するスタッフの存在も大きい。近年では、ネットで医薬品を購入するケースが増えてきましたが、それはそれで時代の流れでしょうが、私自身の体験からも、やはりお客様が直接、店頭で自身の悩みを話し適切な医薬品を選んで頂けることが大切です。その意味でも、ドラッグストアに従事する薬剤師と医薬品登録販売者の職能に期待しています。
このまま国民医療費の増大が続けば医療財政は持ちませんから、現行の保険医療制度を維持しつつ、国民の間に高まるセルフメディケーション・ニーズに対して、医薬品登録販売者の位置付は、薬剤師とともに重要だと思っています。
店頭で、医薬品の正しい使用法をアドバイスし、乱用を防ぐ砦となって頂く新しい販売資格者としての医薬品登録販売者が増えることは、まさにWELL COMEですね。
――国民一人ひとりの健康保持・向上に、これからはセルフメディケーションとヘルスケアの推進が欠かせません。
竹内 その通りです。重篤な患者さんを中心に対応する保険医療制度はこれからも不可欠ですし、一方、軽い症状ならば自分で治すセルフメディケーション、あるいは予防するためのヘルスケアが重要になります。治療もさることながら保険財政がパンクしないように、国民の間にセルフメディケーションとヘルスケア意識を高めていくことが大切になるでしょう。
こうした動きに対してドラッグストアは、セルフメディケーションとヘルスケアの向上に寄与してきましたし、困ったことがあれば対応して頂ける場でもあるし、しかも利便性もあり国民の命・健康を守るための未病・予防を普及する窓口としての機能が期待されています。
今やヘルスケアの波は世界的な趨勢でもありますし、医療の流れも治療から予防へと移行しつつある中、さらに国民一人ひとりの健康保持・向上へ、セルフメディケーションとヘルスケアを推進するドラッグストアの存在は欠かせません。
―― 懇話会のこれからですが、どのようなことを考えられていますか?
竹内 マイナンバーカード制度が導入され、登録する国民が増えていますが、私はドラッグストア業界でも、これを契機としてDX化をもっと推進すべきだと考えています。健康保険証として使用できるようにはなりましたが、例えばお薬手帳の薬歴をヒモづけるべきだと考えています。
全国どこのドラッグストアに行っても、今飲んでいる薬がわかるようになれば、服用している医薬品の重複・過剰投与を防ぎ、残薬の確認もできます。しかもドラッグストアで購入したOTC医薬品やスイッチ医薬品の購入履歴もデータ化されれば、薬剤師と医薬品登録販売者も、「医薬品の使い過ぎではないだろうか」といったこともわかるじゃないですか。
コロナ禍がきっかけでスタートした医療機関のオンライン診療ですが、ドクターから発行された処方箋がFAXやメールでドラッグストアに送信され、薬剤師が調剤して患者宅にデリバリーすることは、人口の高齢化や身障者、何らかの理由で自宅から外出できない方々のためにも必要です。
さらにマイナンバーカードは、医療費控除やセルフメディケーション税制など確定申告の際にも使用できる等々、様々なデータをヒモづけることによって活用価値も大きくなり、ドラッグストアにとってもDX化は健康サポート拠点としての機能の拡大に結びつく上に、国民の健康づくりに大きく寄与する“切り札”となるのではないでしょうか。
チェーンドラッグストア振興議員懇話会会長の竹内譲衆院議員との出会いは、今年8月18日の夕刻、東京ビッグサイトで開催されたJAPANドラッグストアショーのレセプションパーティ。「医療費控除の特例の適用やスイッチOTC医薬品の拡大に全力で取り組む」と述べ降壇した竹内議員のもとに駆け寄り、ぶしつけな依頼であることは重々承知していたが、直接、取材を申し込ませていただきインタビューが実現した。
取材時間は、およそ40分を確保していただいたが、ドラッグストアがなぜ成長したのか。竹内議員ご自身、何度もドラッグストアに行き買い物をした体験から、1か所で健康になるための商品を入手できる利便性と店頭に立つ薬剤師と医薬品登録販売者の職能を高く評価されていた。
内村鑑三著『代表的日本人』を愛読する竹内議員は1958年6月、京都に生まれた。京都市内の洛星中学・高校を卒後、京都大学法学部へ。「弁護士になるといった目的があったわけではなかったのですが、ただ将来は国民のためになることをやりたいとは思っていました」と話す竹内議員。
幅広い業種の人財との交流ができると思い立ち、1983年3月に同大学を卒業し三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入社、銀行マンとして活躍。10年ほど勤務していた1992年、34歳の時に、「公明党から突然、京都一区で衆院議員への出馬を依頼された」という。
そして1993年7月の選挙で初当選。だが「国民のための政治に無我夢中で全力を注ぎましたが、長い間の人生、良いことも悪いこともあるのが常…」と話す竹内議員は、自身2度目の選挙で落選。その後、2年半の浪人生活を経て京都市会議員を2期勤め、2009年8月の衆院議員選挙で再び当選し、2021年には6度目の当選を果たした。
趣味はボーカルと囲碁に野球。特に野球は中学から高校まで硬式野球部に所属。野球に明け暮れる生活を送っていた。「猛練習の連続で、特に高校時代には地方予選で準々決勝まで行きましたが、残念ながら甲子園への夢は叶いませんでした」―そんな経験もあってか、話が大好きな野球におよぶと、WBCでの選手の活躍に加えて日本シリーズのオリックスバッファローズと阪神タイガース戦の話では、身振り手振りでボールの投げ方、打ち方等々、話は尽きなかった。
「ゆくゆくは、地元の少年野球の監督になろうと思ったことは?」とお聞きしたところ、「そうね〜」と、まんざらではなさそうだった。衆議院議員として忙しい間は無理だろうが、いつの日か、どこかの少年野球チームでの竹内監督の姿が見られるかも知れない。
近著に『Turbulent Times for Japanese Politics 激動 日本の政治』がある。「激動の時代を取り巻く政治的、経済的、社会的な状況を説明するとともに、この間に生起した重要な問題についての考えを表明する」ことが発行の目的。2020年から2022年まで年代順に、エッセイ集として海外に向けて英語で執筆されたものだが、「当時の出来事や課題について、日本の読者が思い起こすことができるように…」と日本語にも翻訳し、中央公論事業出版社から2023年8月に発行された。