ヘルスケア情報サイト「Hoitto! ヘルスケアビジネス」(ヘルスケアワークスデザイン株式会社)

JACDS「市販薬販売ルール徹底」呼びかけ

「濫用薬」適正販売率低下を受け

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は9月22日、都内で記者会を開催。2022年度医薬品販売制度実施調査結果を受け、JACDSから加盟企業に向けて市販薬の販売ルールの遵守徹底を呼び掛けたことを明らかにした。(取材・記事:中西陽治)

改善傾向一転し8割下回る

 厚生労働省が9月に公表した「2022年度医薬品販売制度実態把握調査」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34966.html)によると、ドラッグストア(店舗販売業)の成績は前回(2021年度)と比較し低下した。

 調査結果のうち、改善傾向にあった「濫用等のおそれのある医薬品」の適正販売比率が低下。前回81.9%に対し76.9%と5ポイント減となった。今年度(2023年度)の調査から「濫用等のおそれのある医薬品」に風邪薬が調査対象となることから、一層の対策強化が求められる。

 また、第一類医薬品の「情報提供された内容を理解したかどうか等の確認」が、前回83.5%より63.9%(19.6ポイント減)と大幅に低下。一方で「情報提供を行ったうち、文書を用いた情報提供」は71.6%から88.9%(17.3ポイント増)と大幅に改善している。

調査項目  2018年度  2019年度  2020年度  2021年度  2022年度
要指導医薬品●文書を用いた情報提供80.1%76.6%85.2%85.6%92.0%
第一類医薬品●情報提供のうち、文書による情報提供68.0%70.2%68.1%71.6%88.9%
第一類医薬品●情報提供された内容の理解の確認67.7%72.1%75.1%83.5%63.9%
濫用薬●販売方法が適切であった51.9%69.1%73.4%81.9%76.9%
医薬品販売制度実態把握調査結果より抜粋

 JACDSでは上記の2点を重点対象として、販売ルールの遵守徹底に取り組むこととし、今年度の実態調査(2023年11月~2024年2月)に向け、JACDS会員企業のトップに向け市販薬販売ルールの遵守徹底を呼び掛けた。

          重点対象         対応のポイント
●「濫用等のおそれのある医薬品」の適正販売
→目標は「質問されずに複数個購入できた」の根絶
■「原則一包装しか販売しない」ことを徹底
■二包装以上の購入希望者には必ず理由を確認する
●第一類医薬品「理解したかどうかの確認」
→文書による情報提供した後も確認が必要
■薬剤師に対し遵守を徹底する
■情報提供したときは一言必ず確認する
JACDS 今年度重点対象2項目

年末コロナ対応で現場負担増が影響か

中澤専務

 会見に臨んだJACDS専務理事の中澤一隆氏は「ドラッグストアの市販薬販売に関わる調査結果が前回より低下していることは大変ショッキングだ。特に『濫用等のおそれのある医薬品』の適正販売については、2018年度の51.9%から3年で81.9%と大幅な改善傾向にあった。今回の結果を深刻に受け止めている」と語った。

池野会長

 第一類医薬品の販売について「理解したかどうかの確認」が低下したことについては、「『情報提供された内容を理解したかどうか等の確認』が低下した一方で、『情報提供のうち文書による情報提供』は改善している。文書を用いて情報提供したうえで、内容を理解したかどうかまでの確認が必要か、という感覚でおろそかになってしまったのではないか。一言でいいので確認を徹底していただきたい」(中澤専務)と分析した。

 例年行われている調査は年末(11月~2月)にかけて実施されており、2022年度の調査時期は新型コロナウイルス流行の第8次期にあたるため、検査キットの不足・解熱鎮痛剤の需要増も相まって販売現場では負担が増加したものと考えられる。

 JACDS会長の池野隆光氏(ウエルシアHD会長)は「商品の性格上、販売者がコントロールできるものとそうでないものがある。また、協会に加盟していない企業でも販売方法に違いがあるだろう。今回の調査結果を受け、JACDSでは共通の認識を持って取り組んでいただきたい。正しい販売方法を行わなければ国民にとってプラスにならないだろう」と話した。

根津副会長「企業の遵守徹底意識が重要」

根津副会長

 一方で、新型コロナウイルスが感染症法上の位置付けが5類感染症に移行して初めての冬を迎える。調査が行われる年末はインフルエンザウイルスとの同時流行、風邪薬や解熱鎮痛剤によるセルフケアの需要が高まり、店頭における人的負担も増加することが予想され、市販薬の販売ルールの遵守徹底はより難しくなるのでは、という向きもある。

 これに対し副会長の根津孝一氏(ぱぱす会長)からは「厚労省による調査はJACDS非会員企業も含まれており、企業コンプライアンスの差がある。販売ルールの遵守徹底に向け、JACDS加盟企業は意識をもって是正していかなければならない。状況によっては企業ごとの調査結果を公表してもよいのでは」と厳しい意見が飛んだ。

 厚生労働省による「医薬品販売制度実態把握調査」は11月~2月に実施され、翌年度の9月に公表される。