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地域創生医 桐村里紗のプラネタリーヘルス 第11回
デジタルなAIの壁を超えた人類とプラネタリーヘルス

こんにちは。プラネタリーヘルス提唱医・桐村里紗です。

chatGPTや画像生成AIの登場など、AIの飛躍的な進化が止まりません。

仕事のパートナーとして上手く使えば作業効率やパフォーマンスが圧倒的に上がり有用な反面、本当にシンギュラリティが起きてしまうのではないかなどの不安な声もあります。

改めて、人類の存在意義や価値が抜本的に問われている時代ですね。

9月3日、東京大学・伊藤謝恩ホールでシンポジウム『AIの壁を超えて〜AE時代の進化論〜』が催された

そんな時代背景を踏まえ、9月3日、東京大学の伊藤謝恩ホールで開催された特別講演会・シンポジウム『AI(人工知能)の壁を超えて〜AE(人工自我)時代の進化論〜』が開催されました。主催は、日本学ユニバーシティ・学長の出口光先生。人類の進化こそが、この時代に不可欠であり、LIFE OS 5.0へのシフトを唱えておられます。

私は、人に関わる医師であり、プラネタリーヘルスを推進する立場から「ヒューマンヘルスからプラネタリーヘルス、その先の世界へ」と題して、お話をさせて頂きました。

前提として、AI(人工知能)の壁を超えた先にあるAE(人工自我)とは、学習に基づいた論理思考を得意とするAIにはできない、感情やクリエイティブな発想をその場で創発することができる技術です。

基調講演では、AE(人工自我)の開発者である東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻道徳感情数理工学の光吉俊二特任准教授が、最新研究やレーシングカーのリアルタイムな感情を可視化する実証実験などについてお話されました。

医療やプラネタリーヘルスと、AE。一体何の関係があるのか?という疑問の声が聞こえてきそうですが、実は、AIとAEの違いに、その答えがあります。


デジタルって何?

AIは、デジタル技術に基づいています。

デジタルって、なんでしょう?電脳世界のことでしょうか?

あまり知られていませんが、デジタルとは、数学的にバラバラの数(分離数)のことを意味しています。

コンピューターは、0と1というバラバラの数の組み合わせで記述されていますね。

ある学派は、自然界も全て、0と1で記述できると唱えていますが、果たして本当にそうでしょうか?

私たちは、デジタルでは、生命の本質、この世界の本質は語れないという立場です。

0と1、白と黒とにバラバラに切り分けられた間には、グラデーションがあります。

世界は、白黒はっきりつけられないグラデーションであり、かつ常に揺らいでいる。

真実は、この動的状態があるに過ぎませんが、私たちはつい、物事をはっきりとわかりやすく理解したいがために、白黒はっきりつけてしまいがちです。


デジタル思考に基づく診断と治療

例えば、体の状態についてもそうです。

病気と病気でない状態(not病気)に切り分ける。これは、実はデジタルなものの捉え方です。

診断基準に則り、ある状態に病名の診断をつけて、切り取る。これも、デジタル思考です。

そして、その診断を元に、プロトコルに則り、局所のターゲットを切除したり、局所のターゲットを対象にした薬を投与する。

これが現代医療の一般的な思考方法です。

デジタルに診断し、過去のデータをもとにプロトコルに則り、治療方法を選択する。この診断・治療であれば、個体による能力差や日々の体調変化などもないAIの方が優秀で、医者はいらなくなってしまう未来が本当に来るかも知れません。

それに、診断基準に当てはまらない場合、一般的な医学では、「病気」と認定されず、診断がつきません。この場合、医師は診断ができないために扱うことができず、症状はあっても治療対象にならないことはしばしばあります。

しかし、実際には症状があるため、診断も治療もされず、苦しむ人は多くいます。

実は、私の母もその一人でした。

当たり前のように行われる西洋医学的な診断と治療。

デジタル思考に基づき、局所にフォーカスする部分最適化の医療行為では、本来の体と心の有機的なつながりや全体性を見失っています。


地球の病理としてのSDGs

同様に、SDGsの課題も各項目がバラバラに考えられます(図の上)。

誰かが特定の項目を満たそうとするとき、別の項目と利害関係がぶつかってしまうことはよくあります。

局所にフォーカスする部分最適化のアプローチでは、SDGsの各項目間にある有機的なつながりや全体性を見失ってしまいます。

結局、人の病理も地球の病理も、バラバラにみて局所だけを治療しようとしてもどこかに歪みが起きてしまうのではないでしょうか。

0と1、白と黒の間には、グラデーションがあります。

白黒はっきりつけられない、ただの「状態」。しかも常に揺らぎ続ける動的なグラデーションです。

SDGsも各項目をバラバラにみるのではなく、グラデーションでみてはどうでしょうか(図の下)。

このグラデーションのことをデジタル(分離数)とアナログ(連続量)を重ね合わせた「クオンタル」と呼びます。

これから私たちが、人の病理と地球の病理を解決するために必要な思考は、デジタル思考を超えたクオンタル思考ではないかと思うのです。

そして、グラデーションの変化量は、「関数」として表すことができますが、関数化すれば、工学的に制御することが可能になります。

先のシンポジウムで桐村さんは「ヒューマンヘルスからプラネタリーヘルス、その先の世界へ」と題して講演した

人においても、地球においても、病的状態を引き起こしている根本の関数を導き出す。

これを可能にするのが、デジタルを超えたクオンタル技術です。

デジタルの壁を超えたクオンタル社会は、人を含めた地球上の生きとし生けるもの、また心を持つロボットも共生するプラネタリーヘルスな状態になっていくのではないでしょうか。

クオンタルは、白黒はっきりつけられない日本人的な思考です。

これからは、失われた日本的な視座を科学と技術で裏づけていくことで、世界は真に健全な状態になっていくと思うのです。