生活者の価値観やライフスタイルが多様化する中で、小売業も新たな売場づくりへの挑戦を始めている。その挑戦を卸売業として支えてきたピップの展示会「ウエルネスフェスタ2023」が、7月12−13の両日に東京流通センター(TRC)で開催される。今回は、ポストコロナの生活者に寄り添った商品・サービスを結集し、小売業の店頭実現を全力でサポートする、「より実践的な展示会」を標榜している。以下に見どころを紹介するが、百聞は一見にしかず。関係する小売業の幹部・バイヤーはぜひ現地に足を運び、「こんな切り口があったのか!」という新たな発見をしていただきたい。
生活者にとってピップは、「エレキバン」や「スリムウォーク」などのブランドを擁するメーカーの印象が強いが、事業の本流は卸売業である。その歴史は古く、医療用品の卸売を目的に、1908年に大阪で起業した藤本眞次商店から始まっている。
現在の卸売事業は1,000社にのぼる仕入先を有し、ドラッグストアほかの幅広いチャネルに商品を提供している。扱うカテゴリーの柱は「HBC+S」つまり、ヘルス、ベビー、コンフォート、シニアの大きく4つ。他の卸売業とは角度の異なる商品を、顧客目線で陳列・演出する売場づくり、マーチャンダイジング(MD)が、得意先の小売業から高く評価され現在に至る。
このMDを得意先に披露する場が、年に1回東京で開催する「ウエルネスフェスタ」となる。同フェスタはコロナ禍もWEBや入場制限付きで実施していたが、コロナの第5類移行後初となる今回は、3年ぶりに各種制限を設けずに開催する運びである。
マスコミを集めた同フェアの事前説明会で松浦由治社長は、「コロナ禍の商談はリモートを活用するなど工夫もしたが、それだけでは当社の思いが十分に伝わらないと感じてきた。得意先様とリアルでお会いし、商品を手に取っていただけるこの機会を活かし、来場者全員に満足していただき、持ち帰った情報を売場づくりに役立ててもらえるよう準備を進めている」という。
「ウエルネスフェスタ2023」のテーマは、「FIT YOUR LIFE〜一人ひとりの理想を創造」。様々な悩みを持つ生活者を起点として、得意先である小売業、出展メーカー、そして主催するピップが、それぞれの立場を超えて共感できる場を目指している。
会場はTRC第一展示場の全フロアを使用する。入口すぐに同フェスタの概要を動画で紹介する大型モニターがあり、そこから右回りに、新商品コーナー、出展社124社によるメーカーコーナー、商品開発事業本部コーナー(ピップブランド)、MD提案コーナーとなっている。
MD提案コーナーは、ヘルス、ベビー、コンフォート、シニアのカテゴリーごとに部屋を区切り、その中でメーカー商品とピップの専売品を一体化させて提案するなど、カテゴリーごとの狙いを強く発信している。
「当社のカテゴリー政策に基づいたMD提案をしっかりとお伝えし、生活者(の悩み)に寄り添った売場づくりの重要性をご理解いただくのが狙いだ」(卸事業本部MD企画推進部・吉野俊文部長)としている。
リアル会場ならではの企画として、各カテゴリーに「体験ブース」を設けた。展示パネルやモニターの台数も増やし、盛りだくさんの提案を限られた時間で効率よく回れるよう配慮してある。
カテゴリーごとの注目ポイントを紹介しよう。
同社の強みであるベビーは、テーマに「パパ」を加えた「ママパパのミカタ」を掲げ、夫婦の育児応援を提案する。「国が進める異次元の少子化対策もベビー売場復権のチャンスと捉え、カテゴリーの骨子を組み立てた」(吉野部長)という。
体験コーナーは男性の育児参加を念頭に、調乳体験(カネソン、江崎グリコ)、おむつ替え体験(ユニ・チャーム)のほか、妊婦ベストを着用して日常生活の不便さを感じる妊婦体験(ピジョン)を用意した。
ヘルスは、中分類が多岐に渡るためコーナー面積は4カテゴリー中で最大となる。
今回は特に「通信で繋がる未来の健康管理」をテーマに、健康測定機器関連の提案を強化する。体験コーナーでは、血圧や心電、体重体組成、活動量、体温、SPO2などのバイタルデータを簡単に記録・管理できるオムロンのスマートフォンアプリ「オムロンコネクト」のほか、脈波計や野菜摂取量測定機などを試すことができる。
国や民間企業も注目している「フェムテック」では、市場が伸びている「デリケートゾーン」に焦点を当てた提案をおこなう。
合わせて「メンテック」も独自の視点で提案しており、新規に口座を開設したメディクス・ワンの自慰グッズ(専売品)なども注目を集めそうだ。「一定回数の射精は前立腺の健康に良いほか、精子の質を高め妊活にもプラスとなる。このほか更年期やED、AGAなど、ヘルスケアを軸にしたメンテックは市場の拡大が期待でき、引き続き強化していく領域となる」(吉野部長)
シニアは、売上アップに貢献する商品をSOOのデータを用いて紹介するほか、「シニア世代の男女の一日」と称したパーソナルデータを事例に、フレイル予防を提案する。ゴンドラ4本を用いた介護用品(介護栄養調整食品、食事用品、排泄ケア用品、入浴用品)の陳列事例も、見応えのあるものとなっている。
コンフォートでは、日常生活において「無理のない備蓄」「避難持ち出し品」をテーマに掲げ、防災用のテントなども会場に設置し、災害時に必要な対策の情報と商品を提案する。
商品開発事業本部コーナー(ピップブランド)は今回、ピップエレキバンとスリムウォークの新製品もお披露目する予定である。松浦社長は、「エレキバンは久々の大型商品になると期待しているので、こちらもぜひ会場でご確認いただきたい」と語っている。
またメーカーコーナーとピップ開発部コーナーでは、「〇〇の 〇〇の悩みは 〇〇〇〇で解決!」という統一POP(右の画像)を使用した商品紹介を展開していく。POPのワードを頼りに会場を回遊するのも一興である。
なお今回から、WEB上で事前情報を入力する入場方法に変更している。入力完了後に発券されるQRコードを予め印刷しておけば、当日の入場もスムーズにおこなえる。
主要得意先のオーナーや責任者には別室を用意し、ピップの提案内容を 個々の企業・店舗に落とし込むオプションも用意した。福井淳雄常務は、「2018年に宣言した“より実践的な展示会”が、コロナ禍を経てようやく形になってきた。得意先様の店頭実現に本気で挑む今回の展示会に、一人でも多くの方が来場されることを願っている」という。
当フェスタと並行して、「ピップウエルネスフェスタ2023 Autumn on WEB」も公開される。こちらの会期は7月5日〜8月31日までとなる。当日の予習や事後の復習などに活用していただきたい。(文責=八島充)