生活者の多種多様な潜在ニーズを発掘し、美と健康と快適な生活領域で需要創造型の新しい中間流通業の実現を目指す大木ヘルスケアホールディングス。このほど開催された「2023 OHKI 秋冬用カテゴリー提案商談会」でひと際目を引いたのは、女性の健康課題解決を訴求する「フェムケア」ゾーンだ。過去2回の提案会での期待を受け、市場の認知度を上げる時期ととらえ満を持した形で企画された今回。政府の「女性版骨太の方針2023」と重なって、いよいよドラッグストアをはじめとしたヘルスケア市場での活性化が期待できそうだ。
女性版骨太の方針2023、フェムテック活用を推進
6月13日に発表された「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」では、生涯にわたる健康支援の中で、働く女性の健診の問診に月経困難症や更年期症状を追加、フェムテック活用による企業・医療機関・自治体等が連携して行う実証事業への支援継続と効果測定の公表、などが記されるとともに、「女性の健康支援に取り組む企業が社会において評価される仕組みづくりをより一層進める」と明記された。
これに先駆けて、日本航空(JAL)が公表したフェムテックの実証実験では、半年のオンライン診療で月経・更年期の不調が軽減したことが示されている。2022年5月~10月に同社内で実施されたもので、月経や更年期といった女性の悩みに応じたオンライン相談・診療、そして薬の処方などで女性社員の不調が軽減されて、仕事のパフォーマンスが向上したという(出典:日経クロステック)。
同ゾーンでは、JALをはじめ、フェムテック・フェムケアを取り入れた企業の事例をパネルで紹介。また、毎年3月8日の「国際女性デー」のイベントも広がりつつあることから、日常的な啓蒙とイベントに合わせた売り場提案も訴求していた。
女性スタッフの多いドラッグストア業界から
今回の「フェムケア」ゾーン拡充について、同社の松井秀正社長は「市場の半分を支えているのは女性ですし、働いている女性、特にドラッグストア業界は半数以上が女性スタッフですから、ここにアプローチしていくことからビジネスが広がっていくのでは」と述べている。また、板本敦志実行委員長は「過去2回の提案会でもフェムケアカテゴリーへの期待は大きく、今回はブラッシュアップして、1つのカテゴリーとしてゾーンを作りました」と市場形成への手ごたえを感じている。
新会社設立、女性キャラクター通じて情報発信
ただ、現状では「フェムケア」「フェムテック」の認知度は低い。フェムテックという言葉を聞いたことがある人は20代で21.9%、60代で15.6%(矢野経済研究所調べ)。同社では「小売りでフェムケアを担当するチームを作っている企業が少なく、消費者に(情報が)届きにくい状況にある」と分析している。
そんな中、同社では今春、「美・癒・フェムケア」の情報発信と市場創造を事業内容とする新会社LAUGHBASE(東京都豊島区)を設立。⼼⾝の様々な問題や悩みを持つ⼥性キャラクター「miguちゃん」を通じて、SNSによる情報発信を行っている。
同社代表取締役の市川恭子氏は「キャラクターを通じて情報発信することでフェムテック・フェムケアにより馴染みやすくなるのではと思います。スタートしたばかりですが、ドラッグストアのフェムテック市場を、今後3年間のスケジュールで作っていきたいと思います」と意気込みを語っている。
会場では、「フェムケア導入のファーストステップは解熱鎮痛剤の陳列がカギに!」「クロスMDでフェムエンドをつくる! ~月経中のお風呂編~」「PMSのお守りケアで女性に寄り添う売り場へ」「更年期には隠れ症状が! フェムケアカテゴライズで気づき提案」「え? これも更年期不調? 不眠と更年期不調の意外な関係」の5つのフェイズで関連商品が展示され、店頭情報発信型のフェムケアゾーンに来場者の注目が集まっていた。
「推し活」にもヘルスケアの新たな市場性あり
今回の提案会ではフェムケアとともに「推し活」市場にも注目。アイドルやアーティストのライブが多い日はブルーベリーサプリのPOSが5倍以上になったデータ(SOO調べ)があるなど、ヘルスケア視点から推し活の新しい市場性を潜在需要としてとらえ、育てていく構えだ。(石川 良昭)