総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済が、バランスの良い食生活や適度な運動などによって腸内環境を整える腸活に関連する食品に関して、原料成分(乳酸菌、ビフィズス菌など)から最終商品(プロバイオティクス、プレバイオティクスなど)の市場について調査した。その結果を「腸活関連市場における最新トレンドと将来展望」にまとめた。この調査では、腸活に関する食品の原料成分6品目(乳酸菌、ビフィズス菌、食物繊維、オリゴ糖、エクオール、その他)と最終商品4品目(プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクス、ポストバイオティクス)の市場について現状を明らかにするとともに将来を展望した。
乳酸菌は、整腸効果が期待される成分として広く認知されているほか、積極的な研究・開発によって表示可能な訴求領域が広がっている。2022年の市場は、機能性表示食品での採用増加や健康意識の高まりによって前年比9.1%増となった。
死菌と生菌に分けられるが、死菌はプレバイオティクス作用や免疫賦活作用などが期待できハンドリングが良いため参入企業が多く、サプリメントから一般食品まで幅広く採用が進んでいる。生菌も‘生きて腸に届く’などのフレーズから健康イメージの訴求力が強く、需要が安定していることから、今後も堅調に伸びるとみられる。
食物繊維は、定番の健康成分として安定した需要を獲得しており、2022年は難消化性デキストリンやイヌリン、イソマルトデキストリンがけん引し、市場は前年比3.1%増となった。
健康意識の高まりが追い風となり、分かりやすい健康成分の代表として採用が増加している。複数のヘルスクレームへの対応が可能な点も評価されており、2023年も市場は拡大するとみられる。
食物繊維や乳酸菌(死菌)などを含有し、それら成分を訴求している食品、ドリンク類、サプリメントを対象とする。また、乳酸菌を含有する場合も対象とする。
2022年は、種類別では、シリアルフーズやこんにゃくゼリーなどと、乳酸菌飲料や炭酸飲料、茶系飲料などドリンク類で9割弱を占めている。訴求効能別では6割弱が整腸効果を訴求し、腸活ブームを背景に善玉菌の増殖や活性化といった機能に関心が集まっており、コロナ禍に一時苦戦したドリンク類も伸びていることから、市場は前年比5.3%増となった。
2023年は、食品、ドリンク類、サプリメントのいずれも続伸している。機能性表示食品の積極的な商品展開によって、整腸効果だけでなく、腸活を通じた脂肪・コレステロール値改善やストレス緩和、免疫対策なども訴求することから、新規需要の開拓が進んでおり、市場は前年比2.7%増が見込まれる。
腸内細菌による代謝産物を訴求するドリンク類とサプリメントを対象とする。微生物細胞については、プロバイオティクスとの重複を避けるため対象外とした。
2022年は、全体の9割強を占めるエクオールを含有するサプリメントがけん引し、前年比二桁増となった。エクオールは更年期症状の改善や骨粗しょう症予防などが期待されるため、主に30~50代の女性向けに商品展開が進んでいる。
プロバイオティクスやプレバイオティクスが個人の腸内細菌によって作用の差が出るのに対し、ポストバイオティクスは腸内細菌の代謝産物を直接摂取することができる点が強みであり、今後は機能や魅力の発信による認知度向上で市場拡大が期待される。現状はエクオールと乳酸菌代謝産物が成分の中心であるが、ウロリチンAやHMPA、HYAなど新規成分が登場しており、腸活を通じたオートファジーやエイジングケアなど抗酸化・抗老化も訴求する商品や、脂肪対策を訴求した機能性表示食品の届出がみられるなど、新規需要の開拓や認知度向上に向けた取り組みも進んでいることから、2023年の市場も前年比二桁増が見込まれる。
外販される腸活に関連する食品用途の原料成分を対象とする。自社内で、研究・開発した菌株は対象外とした。
各品目とも急激な需要変動は見られないが、健康意識の高まりを受け市場は拡大しており、2022年の市場は464億円となった。
2023年は、規模の大きい食物繊維が機能性表示食品での採用増加で伸びているほか、新たな腸活に関連する成分やヘルスクレームの登場によって、市場は前年比3.4%増が見込まれる。今後も、食物繊維の伸びが市場拡大に貢献するほか、エクオールはフェムケア意識の向上を背景に大きく伸長するとみられる。
健康需要の高まりを背景とした腸活ブームによって、2022年の市場は1兆724億円となった。プロバイオティクスの市場規模が大きく、ヨーグルトなどを中心に一部の定番商品は伸び悩んでいるものの、「Yakult1000」「Y1000」(ヤクルト本社)のヒットにより伸びている。また、善玉菌の増殖や活性化を促進する機能面の認知が広まったプレバイオティクスも大きく伸長した。
2023年は、前年に比べ伸びが鈍化するものの、引き続き機能性表示食品をなどの新規投入が市場を底上げしているため、2023年も市場は拡大するとみられる。