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へルスケアレポート

地域住民の健康創造に向けて走り続ける
総年商2兆円に躍進した創設53年目のAJD

「選ばれる店、また来たくなるドラッグストアづくり」を目指す


「ドラッグストア業界の成長には協業グループの存在は大きかった」―日本チェーンドラッグストア協会の初代事務総長として活躍された宗像守氏(故人)は、こう語っていた。ドラッグストアの創世記に誕生した協業グループの一つに、AJDがある。創設53年後の今、加盟企業総年商は2兆円を超しドラッグストア市場8兆5000億円の24%を占有するまでに成長したバックボーンは、年2回の商品フェアを通じ提供される商品にカウンセリング機能を付加させた共同販売機構であり、その傍ら「選ばれる店、また来たくなるドラッグストア」を目指し、現場で活躍する加盟企業スタッフによる販売成功ノウハウを提供してきたことだ。競合が激化する中、2年後、創設55年のAJDは、生活者のための健康創造に向けて走り続けている。(ヘルスケアジャーナリスト・山本武道)


■ディスカウントからヘルスケア・ステーションへ変身したドラッグストア業界


1999年6月、各地で激戦を繰り広げていたドラッグストアが結集し、JACDS(日本チェンドラッグストア協会)が旗揚げし産業とし位置づけられてから、まもなく創設24年になる。今や市場は8兆5000億円に達し、2025年には年率5%台の成長率を維持すれば10兆円市場の達成は間違いないだろう。

多くの創業者たちによって受け継がれてきたキーワードは、「地域住民が、また来たくなるドラッグストアづくり」である。そのためにドラッグストア業界では、医療機関と調剤薬局を併設した店舗を増やし在宅医療分野に参画し、ショッピングセンター、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ホームセンターなどとのコラボレーションし、生鮮食品もあるワンストップショッピング機能を生かした店づくりに取り組んできた。

かつてのディスカウントショップは、今やヘルスケア関連商品を採用し生活者の健康創造をサポートするヘルスケアステーションへと変身してしつつあり、10兆円市場を通過点として、さらに市場を拡大させ2030年には13兆円産業化達成可能が予想されるまでになっている。


■医療介護大会で注目集めた店頭最前線からの研究成果


話さない患者の服薬フォローアップなどが報告された医療介護全国大会

ドラッグストアの創世記に果たしたAJDの隆盛に大きく貢献した取扱商品は、医薬品、化粧品、健康食品、医療衛材、家庭雑貨など1400アイテム。こうした商品の販売には、加盟企業の成功事例を紹介したこと、加えて近年ではAJD躍進に貢献しているのが、平野健二AJD本部長(サンキュードラッグ代表取締役)が提唱する『ID-POS』である。

来店客の潜在ニーズを掘り起こして、一人ひとりのニーズにマッチした商品を分析し提案するONE TO ONEマーケティング手法の一つ。『ID-POS』を採用し加盟会員企業や賛助会員が採用し、他グループとの差別化への武器として成果を上げてきた。

AJD躍進には、差別化商品を開発し加盟企業に販売ノウハウを添えて提供するだけでなく、地域住民から選ばれる店作りの成功例を共有し提供していることが挙げられるが、先ごろ行われた医療介護全国大会では、“選ばれるためのラストチャンス”と題して、現場で活躍する加盟企業のスタッフによる接客事例が披露された。

「私たちの危機感は、薬局の選ばれ方が変わることにある」として、病状が安定している患者に対して一定の定められた期間内に使用できるREFILL処方箋、電子処方箋の解禁など、「激変する環境変化のなかで、自分達に関係のある未来を見定めて、加盟企業の戦略構築、明日から使える戦術の支援へ、一人ではできないことをメーカー、取引先を含めた皆なの力で実現したい」が企画の趣旨。

会場には、各地から駆けつけた企業のトップや最前線に立つ加盟企業のスタッフたち約200名が参加。『選ばれる薬局づくり』『選ばれる対人業務』『薬局のデジタル化・DX』『地域医療課題への貢献』のテーマで研究成果に耳を傾けた。


■注目された報告『話さない患者の服薬フォローアップハガキ活用術』


大会の事例報告で優秀賞を受賞した新生堂薬局の野口涼介薬剤師

参加者から注目を集めたのが、『話さない患者〜服薬フォローアップハガキ活用術』。報告したのは、1978年、九州の福岡市に創業した新生堂薬局に勤務する薬剤師の野口涼介さん。

「薬剤師は、患者さんが安全・安心に薬剤を使用するため、患者さん個々の特性や疾病の特性、使用薬剤の特徴に合わせて適切にフォローする必要があります。しかし、精神疾患をわずらっている患者さんは、自身の症状を医師や薬剤師にうまく伝えことができない方も多いので、すべての患者さんに適切なフォローができているとは言えない状況にあります」として、野口さんは、診察室や薬局の窓口であまり話さない患者さんに対するツールの一つとして、ハガキを服薬中のフォロ―アップに活用し改善できた事例を紹介した。

野口薬剤師によれば、2021年1月から7月に来局した門前にある心療内科にかかる患者の中から、あまり話さない患者に対して服薬指導時にハガキを渡し、返信内容をもとに問題点を抽出した結果、薬剤を飲み足元がフラフラして歩行が不安定だったことや、生活リズムが不安定で、毎食後、就寝前の用法では飲み方がわからず混乱していた問題点が判明し処方医に連絡したことを報告。

「我々が話さないと感じていた患者さんは、話さないではなく、話したいことがあっても話せない患者さんであったのではないか。今後はツールに捉われずにメールやSNS,電話も取り入れていきたい」と話していた。

大会では、歯周病予防啓発を通じた健康寿命延伸の推進、栄養指導、LINEビデオを利用した服薬フォロー、患者の不安を取り除き再来局の処方箋獲得を目指したSNSによるフォロー等々、患者のためのケアについて12名の薬剤師が詳述。現場からの事例報告は、AJD加盟企業のスタッフたちに共有され地域住民の健康創造に役立てられるに違いない。


■6月9日のチェーン大会で新しい戦略を公表



1970年4月、石橋幸路初代本部長を中心に、齋藤茂昭氏(千葉薬品創業者)、石田健二氏(ハックイシダ創業者)、杉山貞男氏(スギヤマ薬品創業者)、平野清治氏(サンキュードラッグ創業者)ら53社(560店舗、総年商520億円)によって旗揚げし53年後の今、総年商2兆円、医薬品小売業最大の協業グループに躍進しているAJD。物販だけでなく患者宅への訪問活動、無菌調剤室を設置してHIT(Home Infusion Therapy=家庭における輸液療法)処方箋を応需するなど在宅医療・介護分野にもチャレンジする会員企業が目立つ。

6月9日には、『未来を我が手に核心・確信・革新〜生活と医療の担い手として結集こそ力』をテーマに、都内港区のグランドニッコー東京台場でチェーン全国大会を開催し、「加盟社と取引企業が一堂に会し、新時代の課題を共有しVCの原点である“結集こそ力”の意義を再確認し発展し続けたい」として、2年後の創設55年へ向けて“布石”となる新しい戦略が、平野健二本部長から明らかにされる。

生活者に支持され愛され、そして「選ばれる店、また来たくなるドラッグストア」を目指し、53年前に結集し全力を注いできたAJDは、売上げランキング上位10社で市場の68%を占めるドラッグストア業界にあって、相次いで押し寄せる競合の荒波に、どのように対応していくのだろうか。AJDの今後に注視したい。