昨今、膀胱炎や年齢を重ねるにつれて起こる頻尿による睡眠障害など、排尿にかかわるトラブルで悩まれる方が増加傾向にある。そうした中でマルカイコーポレーションは、2020年10月より「排尿に行くわずらわしさをやわらげる」という機能が示された機能性表示食品「機能性表示クランベリー100」を発売している。「排尿」領域では日本初となる商品で、果実そのもののチカラを活かしたことが好感され、今夏に開催された第22回JAPANドラッグストアショーの「食と健康アワード2022」で優秀賞を受賞している。先に出展した「フェムテック東京」でも関係者から高い関心が寄せられ、「食と健康」あるいは「フェムケア」市場形成の一翼を担う商品として期待されている。マルカイコーポレーションに、「機能性表示クランベリー100」が誕生した背景と、今後の「食と健康」市場への取り組みついて話を聞いた。(取材と文=八島 充)
マルカイコーポレーションは、塩干物等の輸出を目的に1938年に創業した菊屋商店が前身で、2代目オーナーで現会長の松順造氏は一時米国にも拠点を置き、ハワイや西海岸の日系人に日本食を提供してきた。
1973年に実施された為替レートの変動相場制に前後して事業の転換を進め、米国のオイルライター「ZIPPO」の総代理店となる。そこに雑貨や酒類の輸入販売を加え、現在の経営の基礎を築いている。
さて、ジュースの販売は今から30年近く前に遡る。
順造氏が子供のころ、風邪で熱を出し寝ていると、白い割烹着姿の母がりんごをすりおろして飲ませてくれた。これを信州のりんご畑の中で思い出し、「果肉たっぷりの“りんご汁”を飲みたいなぁ」と想起したことが、「順造選」のジュースづくりの始まりである。
当時のジュースの仕様は1ℓ瓶のみで、近所の施設・店舗に飛び込みで営業をしていた。ある顧客に「この商品は本物。これからの時代はこういう商品を広めていくべき」と言われ、商品の価値を確信。地道に全国行脚を展開し、その価値に共感する顧客を増やしていった。
りんごジュースで始まった同事業は後に、にんじん、桃、みかん、ザクロ、マンゴなどの種類を増やし、「順造選」と冠したブランドは直近で30以上にのぼる。「より自然のままの味にする。からだに優しい食品をつくる。」をコンセプトに、香料や着色料といった食品添加物に出来る限り頼らず、果実のそのものを活かした製品づくりを続けている。
「クランベリー」ジュースは、およそ20年前から手がけてきた。米国ではポピュラーな飲料だったが、日本での認知度はほとんどない時代だ。独特の酸味がある果実を飲みやすくするため、当初は果汁を50%とし、適量の砂糖を加えて販売していた。
果肉ごと粗搾りにして瓶詰めしたクランベリージュースは、「他にない美味しさ」とたちまち人気を得たが、一方で「100%ジュースが飲みたい」「砂糖不使用が飲みたい」という声も徐々に大きくなり、満を持して「クランベリー100」を発売した。
「クランベリー100」の販売に携わった東京営業所所長の矢野裕也氏は、「個人的に、こんなに酸っぱいジュースが売れるのか?と思いましたが(笑)、売れ行きは順調で、当社の他のジュースにはなかった数の御礼の手紙が届きました」という。
手紙の中には、「カラダに良い影響が出た」と評するものが多数あり、調べてみると、クランベリーに含まれる栄養成分「キナ酸」の存在が浮かび上がった。しかし、通常の食品では効果効能やその機能を謳うことは出来ない。「お客様の声に応えるためにも、クランベリーの機能を謳える商品を目指そうということになりました」(矢野氏)
かくして2015年、機能性表示食品の届出に向けたプロジェクトが動き始めた。排尿領域での機能性表示食品の届出は前例がなく、まったくのゼロからのスタートだった。かつ、「自然のままの味にする。」という強いこだわりのために、暗中模索の日々が続いたようである。
営業第六課の羽原徹氏は、「機能性関与成分であるキナ酸の含有量を満たすには、化学合成などで生成し添加するのが健康食品業界のセオリーです。しかし当社は、自然のままの味、からだへの優しさを考え、果実そのものの成分にこだわりました。排尿領域における機能性表示という前例のない届出と、自然由来の果実に含まれるキナ酸で機能性関与成分値を満たすという2つの方針を前に、『これらの壁を越えられなければ、お客様の声に応えられるような商品はできなくなってしまう』という不安も感じましたが、方針が揺らぐことはありませんでした」と振り返る。
着手してから約5年後の2020年4月、排尿回数の多さが気になる健康な女性を対象にした臨床試験の結果、キナ酸994mgを8週間摂取することで1日の排尿回数が有意に減少するというデータが得られ、同商品に含まれるキナ酸について「本品にはキナ酸が含まれます。キナ酸は、トイレが近いと感じている女性の日常生活における排尿に行くわずらわしさをやわらげる機能があると報告されています」という届出を行い、機能性表示食品として受理された。(※届出番号:F18)
さらに届出に合わせて、「頻尿改善」「睡眠改善」に関する特許についても取得している。(※特許第6412291号、特許第6738388号)
排尿にフォーカスした機能性表示食品は日本初で、関与成分にキナ酸を用いた届出も、同社のみである(11月1日現在)。
仕様は500ml瓶入りで、一日当たり摂取量140mlの中にキナ酸994mgを含む。砂糖や食品添加物は入っておらず、クランベリー果実そのもののチカラを搾り込んだストレート100%ジュースとなっている。
発売から今日まで、日本泌尿器科学会への製品展示や、先に開催されたフェムテック東京などの展示会にも積極的に出展し、「機能性表示クランベリー100」とキナ酸の機能を紹介する活動を進めてきた。
「予防医療に理解のあるドクターに興味を持っていただき、『患者さんに紹介したい』という声も増えました。全国を行脚してジュースの価値を伝えてきた当時のように、まずは共感いただける医療関係者様への啓発活動に努めていく所存です」(矢野氏)
販売のメインチャネルであるECサイトでも、商品の価値や開発の背景にあるストーリーをしっかりと伝えるかたちで露出をすすめている。そうした活動の延長線上で、ドラッグストアなどの販路を開拓していく考えである。
「ドクターや展示会の来場者から『どこで購入できるのか?』という質問を多くいただいており、そのニーズには応えていきたい。フェムケア市場の盛り上がりとも共存しながら、“困っている方の手元にしっかり届ける”ことを、最終目標にしています」(矢野氏)
先のフェムテック東京では、「機能性表示クランベリー100」と一緒に、クランベリーの成分を凝縮したスティックタイプの「クランベリーEX」も紹介していた。
仕様は1本(15g)×30本入で、1本にキナ酸856mg、ポリフェノール129mg、鉄0.2mgのほか、食物繊維を含んでいる。携帯性や簡便性に優れたコンパクトさが売りで、外出時も持ち運びやすく、手軽に摂取できる設計となっている。
機能性表示食品ではないが、そのこだわりは「機能性表示クランベリー100」に勝るとも劣らない。鉄やポリフェノールは果実自体が持っている栄養成分で、クランベリーの特徴である酸味も十分に感じられる。
この「クランベリーEX」は、いわゆる健康食品のカテゴリーに分類されるが、「当社のジュースづくりのコンセプトがそのまま活かされており、改めて『果物は最高のサプリメント』との思いを強くしました。これを足がかりに、サプリメント市場に新風を吹き込みたいですね」(羽原氏)
「フェムテック東京でも、『予防はしたいが薬に頼りたくない』『サプリメントに興味はあるが、食品添加物などは避けたい』という声をいただきました。果実そのものが持っているチカラが予防の習慣となり、健康な人生へと繋がる、という私たちの信念を、これら商品を通じて伝えていきたいですね」(矢野氏)
ご参考)マルカイコーポレーション㈱の物づくりの思いを込めた「順造選」のサイトはこちら
https://www.marukai-food.com