ウエルシア薬局株式会社が9月18日(木)に長野県松本市の「ウエルシア松本渚店」をリニューアルし、29日(月)にメディア公開した。ウエルシア松本渚店はヘルスケアサービス拡充型店舗で、包括的な健康支援サービスを提供する店舗として「Care Capsule」(ケアカプセル)を提供する2店舗目となる。同店はリニューアルに際し、これまで分離していた物販エリアと併設する調剤エリアを融合させ、サービスが一体に行えるよう共通のカウンターを設けている。これにより薬剤師と登録販売者、管理栄養士・栄養士が相互連携し、機能的に生活者の健康に関わる相談および薬の提供を行える体制を構築している。(レポート・中西陽治)
JR松本駅から徒歩10分ほど、国宝・松本城のお膝元に店舗を構える「ウエルシア松本渚店」は、ウエルシア薬局が今年3月に「ウエルシア イオンタウン幕張西店」でスタートした有料/無料のヘルスケアサービス「ケアカプセル」を実装した2店舗目。ロードサイドに位置する複合型商業施設「なぎさライフサイト」の一角にリニューアルオープンした。
最大の特徴は、これまでドラッグストア店舗と調剤薬局が別個の施設であったものを、一つの店舗として集約したことだ。
メディア対応に立った経営企画本部ヘルスケア事業推進部長の遠藤隆博氏は「昨今のスイッチOTC医薬品の拡大、OTC類似薬の保険適用外の検討、指定乱用防止医薬品の販売規制強化を踏まえ、今後は薬剤師が積極的にOTC医薬品に関わるスキームが必要になる」と背景を示し、「ウエルシア松本渚店は全面を薬局申請し営業中は必ず薬剤師が常駐する店舗にした」と語る。
営業時間は9時~21時までで、日祝も調剤窓口が開いている。当然、要指導医薬品や第1類医薬品の提供にも応需する。
現在の主な調剤併設型ドラッグストアは、ドラッグストア運営に係る店舗管理者、薬局運営に係る管理薬剤師による2つの申請を行っている。そのため全面薬局申請を行ったウエルシア松本渚店は、表向きはドラッグストア然としているが、申請上では巨大な調剤薬局だと言える。
そしてもう一つの特徴が、有料の栄養相談サービスと検査サービス、無料の健康測定を設けた「ケアカプセル」だ。管理栄養士による食事指導やカウンセリング(税込1,100円/月)やエクオール検査(税込5,500円/回)、口腔衛生状態検査(税込1,100円/回)、ナトカリ比検査(税込2,200円/回)、認知機能検査(税込1,100円)、検体測定などを提供。管理栄養士・栄養士の一部不在時間はあるものの、基本的には毎日常駐し、有料/無料の「ケアカプセル」サービスに対応する。
この二つの特徴を有機的に発揮すべく、調剤カウンターとOTC医薬品販売、そして「ケアカプセル」に一気通貫で応需できるよう、共通カウンターを設けた。
およそドラッグストアが対応可能な健康サービスを、開放的な窓口でシームレスに応需するカウンター上部には「『薬と栄養の専門家』がお客様の健康な暮らしをサポートします」とメッセージが掲げられている。
遠藤部長は「ウエルシア松本渚店は共通カウンターにより未病・予防・治療を面でフォローできる店舗」とその取り組みに胸を張る。
この先進的なドラッグストアをなぜ長野県松本市で行うことになったのか。遠藤氏は「ウエルシア松本渚店は、もともとウエルシアグループの一員であった寺島薬局として地域の皆様に長年愛されてきた店舗。その中で、OTC医薬品の売上がトップクラスで、処方箋応需枚数も高い水準にあった。セルフケア・セルフメディケーション意向の高い立地であり、『ケアカプセル』と融合した包括的なヘルスケアサービスがニーズに合致すると考えている」と説明する。
営業時間中は日祝も含め、常に薬剤師が対応できるドラッグストアはまれだ。遠藤氏は「多くの企業が薬剤師主体のドラッグストア店舗にチャレンジしてきたが、薬剤師の人件費や物販スキルの問題でなかなか実現できていない。ヘルスケアニーズと調剤ニーズの高い松本渚でウエルシアは新しい店舗フォーマットに挑む」と本気の姿勢を見せている。
店舗に在籍する専門家は、薬剤師7人(うち社員4人)、調剤事務4人、管理栄養士1人、栄養士1人で、幅広いフォロー体制を敷いている。
ウエルシア松本渚店の店長で薬剤師の本宗貴氏は今回の新フォーマット運営に対する心構えについて「薬剤師が調剤だけでなく、時にはOTC提案をしていくためには、物販のスキルが欠かせない。自分はドラッグストアの店長経験もあり、調剤と物販の両方の良いところをお客様に伝えていきたい」と使命感を燃やす。その姿勢を示すかのごとく、ウエルシア内では若い薬剤師を中心に物販スキルの習得に興味を持つ社員が増えているという。
もう一つの専門性。「ケアカプセル」に係る管理栄養士と栄養士の役割について、同店の管理栄養士で登録販売者でもある山口流菜氏は「リニューアルでの『ケアカプセル』導入と同時に、店舗規模も1.5倍の250坪へと拡大しています。特に介護食が大きくフェースを広げています」と語る。実は複合型商業施設「なぎさライフサイト」の中核をになう地場SMが現在改築工事中で、ウエルシア松本渚店は近郊の食品ニーズの受け皿になっている面がある。そのため、卵やアルコール飲料など、これまで扱ってこなかった食品カテゴリーを強化している。SMが新オープンすれば、商業施設内での食品ニーズが底上げされ、ウエルシアの管理栄養士の役割にも相乗効果をもたらすだろう。
「ケアカプセル」のニーズについて山口氏は「無料のセルフチェックを体験されたお客様に健康相談のご案内をしています。特に『エクオール検査』は40 ~50代の女性、『認知機能検査』は高齢者に人気です。『エクオール検査』の結果から女性向け医薬品、サプリメント、さらには大豆食品のニーズが伸びています」と手ごたえを語る。
ドラッグストア業界が課題としている〝健康相談・検査サービスのマネタイズ〟について聞くと、「調剤カウンターが『ケアカプセル』の隣にあることで、相談や検査に対する信頼感・安心感が増しているように感じます。待合室にいらっしゃる患者様や、無料チェック機器を体験されているお客様に、しっかりと段階を踏んでご説明しご相談に応じています。店舗にある食品、レシピ提案、薬の悩みから栄養相談へのつながりなどが有機的に機能していると思います。40分ほど時間をかけて食事指導やカウンセリングを行っており、お客様の潜在的な栄養・健康ニーズに応えられていると感じます」と手ごたえを語ってくれた。
取材中に調剤待合室で処方薬を待つ高齢女性は、買い物を終えると「ケアカプセル」を体験していた。話をうかがうと「いつもは隣のSMで買い物をしている間にお薬ができるのを待っていたの。薬の情報は少し難しいけれど、食事や健康チェックは分かりやすいので、楽しいし、またやってみたい」と〝薬と栄養の専門家〟が提案するサービスに期待を寄せていた。