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資生堂の新循環プロジェクト、ポーラに加えシャネル、ファンケルが新たに参画

プラスチック製化粧品容器から再生エタノール化への実証試験に成功、再生ポリオレフィン化の工程へ移行

株式会社資生堂は、株式会社ポーラ・オルビスホールディングスと共に推進する、プラスチック製容器を収集し、再びプラスチック製容器へ再生する循環型プロジェクト「BeauRing(ビューリング)※1」に、2025年10月1日より、新たにシャネル合同会社(フレデリック・ボキヨン代表)、株式会社ファンケル(三橋英記社長)が参画してプロジェクトを拡大する。これにより10月1日以降順次、プラスチック製化粧品容器の収集場所が、現在の横浜市内20箇所から41箇所に拡大し、より生活者の身近な場所に使用済みプラスチック製化粧品容器を収集するBeauRing BOX(図1)が設置される。

同プロジェクトは、収集したプラスチック製化粧品容器のリサイクル処理を、すでに積水化学工業株式会社と住友化学株式会社との3社協業によるプラスチック製容器の循環モデル※2にて検証を進めており(図2)、これまでに積水バイオリファイナリー株式会社※3の実証プラントにて、使用済みプラスチック製化粧品容器を再生エタノール化することに成功している。今後、積水バイオリファイナリーでのエタノール追加生産を経て、住友化学にて再生エタノールから、従来の化石資源を原料としたポリオレフィン※4と同等の品質を持つ再生ポリオレフィンの製造試験に移行する。


※1 資生堂、プラスチック製容器の新循環モデル「BeauRing」の実証試験を開始(2023年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003558
※2 三社協業によるプラスチック製化粧品容器の新たな循環モデル構築に向けた取り組みを開始(2022年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003437
※3 積水化学工業株式会社の関係会社
※4 ポリエチレンやポリプロピレンなどの総称でプラスチック(合成樹脂)の一種

図1: BeauRing BOX
図2: 化粧品容器のリサイクルを検証した3社協業によるプラスチック製容器の循環モデル

BeauRing公式サイト (2025年10月1日公開)

BeauRing収集状況検証

資生堂は、使用済みプラスチック製容器を収集し、プラスチック製容器に再生する循環型プロジェクトBeauRingを2023年2月に立ち上げ、同年4月より、株式会社ポーラ・オルビスホールディングスが参画し、共に使用済みプラスチック製化粧品容器の収集における実証試験を行ってきた。横浜市内のデパートや化粧品専門店、横浜みなとみらい21地区にある資生堂グローバルイノベーションセンターの計20拠点にBeauRing BOXを設置し、生活者へ案内した通りの収集物が得られているのか、収集量がどれくらいか、収集における生活者の声などを分析・検証をおこなってきた。この結果、BeauRingの認知が広まると共に収集量も順調に増え、リサイクルのための行動の習慣化の可能性が分かっている(図3)。

図3: 使用済みプラスチック製化粧品容器収集量推移(6ヵ月移動平均)

再生エタノール化の検証

BeauRingにおける収集容器のリサイクル処理は、積水バイオリファイナリーによって再生エタノール化の検証がされ、可燃ごみとして供給された使用済みプラスチック製化粧品容器とその中に残った内容物が再生エタノールに生まれ変わることが確認された。さらにこの再生エタノールが従来品と同等の品質であることも確認している。
 
なお同技術は、積水バイオリファイナリーが所有するBRエタノール技術※5(図4)を活用することで実現しもので、使用済みプラスチック製化粧品容器をガス化し、エタノールに転換するため、二酸化炭素の排出の抑制にも貢献する。使用済み化粧品容器を循環させるだけでなく、その過程においても地球環境への負荷軽減に取り組むBeauRingの活動と、自然と共生調和するBRエタノール技術の連携により実現している。

図4: 積水バイオリファイナリーのBRエタノール技術

※5 積水化学と米国企業ランザテックが共同開発した、微生物触媒を活用して可燃ごみをエタノールに変換する技術

資生堂が取り組む容器開発におけるサステナビリティとBeauRingの今後の展望

資生堂は、化粧品容器から化粧品容器へ再生するという業界の課題に積極的に取り組んでいる。化粧品容器は、中身の保護、使いやすさ、デザイン性が重視されるため、多種多様なプラスチックで作られており、分別が難しいことがリサイクルの障壁となっていた。この課題に対応するため同社は、容器の素材選びにおいて複数種のプラスチックを使用せず、単一素材で設計することや、パーツを減らすなど、基礎研究や製品開発の各段階で地球環境への負荷軽減を意識した取り組みを進めている。

循環型プロジェクト「BeauRing」も、この課題を解決するための取り組みの一環となる。今後は参画企業と連携し、店頭を通じて生活者にリサイクルへの理解を促す取り組みを進めるとともに、収集拠点の拡大やさらなる企業・自治体の参画を呼びかけ、化粧品業界で資源循環の輪が広がり、サステナブルな社会に貢献していくことを目指すという。(図5)

図5: BeauRingが描く未来