昨年6月、名称変更とともに会長が交代し新たなスタートを切った一般社団法人日本医薬品登録販売者会(日登会、横山英昭会長=コスモス薬品社長)。この1年は加熱する医薬品の販売制度議論の中で、医薬品登録販売者(登録販売者)の存在意義を訴え続けてきた。今回の薬機法改正は医薬品販売の規制の強化と緩和の2面性があるが、こと店頭においては、登録販売者の職能を世に知らしめるチャンスをもたらした。新生日登会 2 年目の活動は、そのチャンスを実効性のある施策に落とし込む作業となる。 (文責=八島 充)
⽇本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が6⽉28⽇の通常総会後に開いた記者会⾒の冒頭、塚本厚志会⻑の挨拶に続き、横⼭⽒が⽇登会会⻑として挨拶した。これは、昨今の医薬品販売制度をめぐる議論の中で、JACDS が登録販売者の存在を重視し、その職能をまとめる⽇登会の役割に期待している表れだと解釈できる。
JACDS は昨年の組織改正で政府や⾏政とのロビー活動をおこなうガバメントリレーションズを新設し、JACDS 副会⻑となった森信⽒(ドラッグストアモリ会⻑)と横⼭⽒を担当者に据えた。森⽒は JACDS、横⼭⽒は⽇登会の⽴場から、ともに登録販売者の存在を知らしめる活動をおこなってきた。
先の会⾒で横⼭⽒は、ここまでの⽇登会の活動について、以下のように語っている。
「会⻑に就任してからこの 1 年間、医薬品販売制度に対する過度な規制(の⾒直し)について、様々な⽅に意⾒を申し上げてきた。改正薬機法には『販売もしくは情報提供を⾏う場所に継続的に専⾨家を配置すべし』という内容が盛り込まれたが、登録販売者がその役割を果たすことで、乱⽤等で問題となった医薬品の適正使⽤が実現すれば、資格者としての価値が⼀層⾼まると考えている」
また、「医療の窓⼝として登録販売者ができることは何か」という質問に対し、「医薬品の販売においては、事業優先の『売らんかな』ではなく、時には販売せず医療機関を紹介するような接客が重要である」「⼀⽅では保険財政の圧迫により、適切な医療が受けられなくなる危機も迫っている。国⺠皆保険制度を守るには、⾼度医療を保険で賄いつつ、軽医療で OTC を活⽤するセルフメディケーションの推進が不可⽋だ。その窓⼝となる登録販売者の存在価値を、今後も⾼めていく所存だ」と回答した。
先の会⾒で横⼭会⻑は、 同社が経営するコスモス薬品に届いた、登録販売者に対する顧客からの感謝の⾔葉を紹介している。以下に全⽂を掲載する。
(ア)桑山店(⼭⼝県)2025 年 4 ⽉ 18 ⽇
約 1 か⽉前のことです。⽬に異常があり、眼科に予約を⼊れたのですが、診察が 2 週間先とのことで、とりあえずコスモスに⽬薬を買いに⾏きました。名札に「登録販売者」と書かれた⼥性従業員さんに話したところ、「お客様には⽬薬は売れません。医師の診断を受けていただき、その後に来てください」とはっきり⾔われました。
予約が 2 週間先だと伝えると、「私のかかりつけ眼科は予約が要りませんので、すぐに受診してください」と、 ⽬を⾒てしっかり⾔われたので、その⾔葉に従いました。 眼科医には「ブドウ膜炎」と診断され、症状が急を要するとのことで、⼤きな病院を紹介され、即⼊院となりました。
お陰様で、今はもう退院して、治療は続いていますが、改善してきています。先⽇、夜に店舗を訪ねましたが、昼勤務の⽅だそうで、感謝を伝えられずに、このようにお客様相談室に電話をしました。⽬先の売上を求めるのではなく、親⾝に応対してくださったことに感謝しております。この話を、知り合いや、会社の同僚にもしたところ、 皆⼀様に「さすがコスモス」と⾔っておりました。その節は、ありがとうございました。
(イ) 三重店(⼤分県) 2025 年 4 ⽉ 29 ⽇
薬を⾒ている時に、登録販売者の W さんという店員さんが声をかけてくれました。そのとき、⼀緒に紹介されたドリンク剤の説明を聞くと、「今の私にはこれがよいのかな」と思い購⼊することにしました。他に体調の気になることや、悩みを聞いてくださったので、⼿にできた出来物を⾒てもらいました。「家にあったフルコートを塗ったのに、 ⾚みが増えている」と W さんに伝えると、「帯状疱疹かもしれないので、早めに病院で診てもらってください」と、私が⾏けそうな病院を調べてくださいました。
検査の結果、やはり帯状疱疹でした。 病院の先⽣からは、 「いろんな病院に⾏って最終的に帯状疱疹とわかる⼈も多いから、 遅くなると後遺症で苦しむ⼈も多いんですよ。あなたは早く来てくれて良かった」とほめてくださいました。私が経緯を話すと、先⽣も看護師さんも「コスモスの店員さんは素晴らしい。教育や勉強の仕⽅が凄い」と、感⼼していました。
あの時、登録販売者の W さんに相談していなかったら、私は今も苦しんでいたと思います。本当に感謝しかありません。ありがとうございました。 購⼊したドリンク剤がとても良く効いていて、寝る前に飲んだら翌朝スッキリ起きられます。 疲れた時は無理せず休息をとるようにします。 どうしてもの時は、またドリンク剤を買いに⾏きますので、その時はまたよろしくお願いします。
(ウ)加納店(宮崎県) 2025 年 1 ⽉ 25 ⽇
加納店・登録販売者の店⻑さんの応対に、とても感動しました。昨年 12 ⽉に、加納店に伺った時の話です。主⼈が、その⽇のお昼頃から、腰に⼒が⼊らず⽴てなくなってしまいました。主⼈は元々⾎圧が⾼かったので、それが原因だと思い、⾃宅の⾎圧計で⾎圧を測りましたが、特に異常はありませんでした。そのため、⾎圧計が壊れていると思い、新しい⾎圧計を買いに加納店に伺いました。そこで店⻑さんに応対していただき、 経緯をお伝えすると、「⾎圧が⾼いからと⾔って、腹に⼒が⼊らず⽴てなくなることはないと思います。他の要因が考えられるので、すぐに病院を受診した⽅がいいですよ」と教えていただきました。
そのあと、すぐに主⼈を病院へ連れて⾏きました。その結果、頚椎の圧迫から、背⾻の圧迫⾻折を起こしていることがわかり、そのまま⼊院することになりました。ただ⾎圧計を売れば、お店の売上や利益になるところ、加納店の店⻑さんは、主⼈のためを思い、あえて⾎圧計を販売せずに病院をお勧めしてくださいました。このような応対に⼤変⼼を打たれ、感謝をお伝えしたく、筆をとった次第です。その節は本当にありがとうございました。
なお⽇登会は、 第 25 回 JAPAN ドラッグストアショーの初⽇(8 ⽉ 9 ⽇)に、 JACDS と共催で、「結集せよ“登録販売者”改正薬機法で登録販売者の役割はどうかわるか!」をテーマにセミナーを開催する。同セミナーでは、今回の改正薬機法に携わった⼭下雄⼤⽒(厚⽣労働省医薬局総務課課⻑補佐)が、「改正薬機法で登録販売者に期待すること」(仮題)をテーマに講演するほか、⼭下⽒を囲んで「登録販売者がセルフケア・セルフメデイケーションの受⽫となるために、どのようなことが求められるのか」を討論する、パネルディスカッションをおこなうという。
※当記事は7月1日付「ドラッグストアジャーナル」に掲載したものです。リアルタイムでの購読は会員登録=有料=が必要になります(購読申し込みURL:https://dgs-j.net/info/)
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