アサヒグループジャパン(濱田賢司社長)が、グループ独自の酵母技術を活用した、日本初となる「酵母由来非動物性ミルク」を開発した。商品名は「LIKE MILK(ライクミルク)」。今月16日から6月15日まで応援購入サービス「Makuake」でテスト販売をした後、2026年にも全国発売をする予定だ。同商品は牛乳・豆乳より栄養価が高いほか、アレルギーフリー(特定原材料等28品目不使用)であるのが大きな特徴。今回のミルクを皮切りにBtoB領域も開拓し、食市場が抱える課題の解決を目指す。
アサヒグループジャパンは、アサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品など国内事業を統括する中間持ち株会社。今回開発した「酵母由来非動物性ミルク」は、同社が新規事業の創出を目的に設置したグループ横断型の組織、「Future Creation Headquarters(FCH)」のプロジェクトから誕生した。
アサヒグループによる酵母研究の歴史は古く、「乾燥酵母」を用いた胃腸・栄養補給薬「エビオス錠」は、発売95年のロングセラーを誇る。また1966年に酵母から抽出した「酵母エキス」の活用を開始し、2000年以降は「酵母細胞壁」の活用を研究してきた。旨味成分の豊富な「酵母エキス」は減塩食品やプラントベースフードなどに用いられ、「酵母細胞壁」はプロテイン他の健康食品や飼料・肥料への応用も始まっている。ビール原料を再利用している点で他社の追随を許さず、アップサイクルの観点からも今後の展開が注目されている。
今回のプロジェクトでは酵母由来のたんぱく質に着目。世界的なたんぱく質の供給不足が危惧される中、非動物性かつアレルギー特定原材料不使用の酵母由来たんぱく質は、次世代のたんぱく質として期待され、欧米を中心に市場が拡大している。
プロジェクトメンバーである事業企画部シニアマネージャーの畠徳望博(はたともひろ)氏は、2023年開催の第一回子供アレルギー学会にて、牛乳アレルギーを克服した子供の壮絶な経験談を聞き、「この課題を解決する商品を、当社が何とかして提供したい」と考え、「LIKE MILK」の商品化に至ったという。
「LIKE MILK」は酵母から生まれた日本初の非動物性ミルクで、体質や思想、嗜好を問わず、また健康にも配慮した、「フードダイバーシティ」の実現を目指した商品。「誰もが自由に食を楽しめる社会を作りたい」という思いを込め、「〇〇のような(=LIKE)」「好き(=LIKE)になる」の言葉を掛け合わせたブランド名とした。
牛乳や豆乳と比べ食物繊維や亜鉛を豊富に含み、タンパク質やカルシウムも牛乳と同程度を摂取できる。また脂質は牛乳と比較して38%少ない。自然な甘みとまろやかな味わいで、そのまま飲用するだけでなく、コーヒー・紅茶に合わせたり、料理や菓子作りにも、牛乳と同じように活用できる。
まずは今月16日から6月15日まで、紙容器200mlを12本以上のセットにて、応援購入サービス「Makuake」でテスト販売を行う(期間中の販売目標金額は30万円)。2025年内に紙容器1000mlも投入する予定で、テスト販売で顧客属性等を精査した後、2026年をメドに全国発売を開始する。
また販促活動として、4月20日以降3地区で催される「ビーガングルメ祭り2025」のほか、5月24日に開催される「第2回こどもアレルギー学会」(大阪狭山市)に、今度は「LIKE MILK」を携えて参加する。
第1弾のミルクに続き、第2、第3の商品化も計画している。「飲料のほか食品形状も視野に入れ、食に関するさまざまな課題をBtoBを通して解決したい」(畠氏)という。BtoBでの活用を念頭に「アレルギー特定原材料等28品目不使用」のオリジナルロゴマークも作成し、様々な企業にアピールしていく考えである。