ヘルスケア情報サイト「Hoitto! ヘルスケアビジネス」(ヘルスケアワークスデザイン株式会社)

地域創生医 桐村里紗のプラネタリーヘルス 第29回
/サスティナブルブランド国際会議2025「微生物」を基調セッションに

3月18-19日に開催された「サスティナブルブランドジャパン国際会議2025」の模様


3月18日19日、東京国際フォーラムで開催の「サスティナブルブランドジャパン国際会議2025」が開催されました。

SBブランドジャパン国際会議は、2010年からアメリカのカリフォルニア州サンディエゴで開催されており、日本では2017年に第1回のミーティングが開催されてから、8回目を迎えます。

グローバルで活躍するサステナビリティのリーダーが集うコミュニティ・イベントで、 持続可能性を議論し、ネットワークを広げる場として世界10か国で開催されています。

グローバル化する社会課題に対し、自然との調和の中でビジネスと社会が繁栄できるよう、ローカルレベルでの継続的な取り組みに、さらなる革新が必要とされています。


私は、第1日目の基調講演に登壇させて頂きました。

主に大企業がスポンサーのビジネス系の大型会議の基調セッションに「なんとか微生物を差し込みたい!!」という主催の強い想いを受け「発酵と再生:小さな微生物の大きな力」というテーマが設定されました。
SBプロデューサーで、企業のサスティナブル事業コンサルタント・足立直樹さんのファシリテーションで、発酵デパートメントなどを主宰されている発酵デザインラボ・小倉ヒラクさん、微生物によるバイオリサイクル・株式会社komhamの西山すのさんと対談させて頂きました。


微生物というとニッチに思われるかも知れませんが、医療・ヘルスケア業界にとっては、創薬やサプリメント、プロバイオティクス等の製造において微生物の働きは欠かせませんね。
ネイチャーポジティブ経済移行戦略を踏まえて、自然資本から産業を生み出すにあたり、生態系サービスを支える微生物は欠かせません。

非効率に思われがちですが、むしろ、生態系は非常に機能的で効率的です。
短期的な利益ではなく、中長期的視野に立てば、企業の利益及びリスクヘッジにも重要と分かります。

微生物多様性が高い土壌は自然資本を生み出す価値の高い土壌と言えますし、人の腸内においても心身の健康という価値を生み出す土壌になります。

GDPでは測ることができない、自然資本や人の心の豊かさ、ウェルビーイングなどをどうインパクトに変えて評価していくかという議論は、「Beyond GDP」として国際的にも活発に行われています。

そして、その新しい豊かさを高めていくような人の経済活動がプラネタリーヘルスの社会基盤になります。
人の大転換から科学、技術、そして社会構造ごと大転換しないことにはプラネタリーヘルスは実現しないことを踏まえて、こうした場で発言させていただける機会を頂き、とてもありがたく感じます。

発酵業界ではお馴染み、発酵を奥深く文化人類学から紐解き現代のカルチャーに昇華している小倉ヒラクさんがビジネス系のカンファレンスに登壇するという異例の状況に加えて、株式会社komhamは、生ゴミを最短1日で最大98%まで分解する能力をもつ微生物群「コムハム」を提供する、WIREDのリジェネラティブ・カンパニー・アワード2024にも選出されて注目のディープテックスタートアップで、これまで社会になかった「分解」という微生物の機能が生み出す価値を語り、そして私が医師の立場から生活者個人のヘルスケア・ウェルビーイングからプラネタリーヘルスへと大きく拡張していくという異色の組み合わせのセッションでした。

足立さんの名ファシリテーションによって、ニッチと思われる話が、未来に発展する経済性のためにも鍵になるということを無事にお伝えできたようでした。

貴重な機会とご縁をありがとうございました。

世界で注目度が高いサスティナビリティやリジェネレーションは、中長期的な事業計画に必須になります。

ぜひ、医療・ヘルスケア業界でもできることを前向きに考える機会として情報をキャッチアップしてください。

プロフィール
桐村 里紗 (Lisa Kirimura M.D.)

地域創生医/tenrai株式会社 代表取締役医師
東京大学大学院工学系研究科道徳感情数理工学講座共同研究員
日本ヘルスケア協会・プラネタリーヘルス・イニシアティブ(PHI)代表

予防医療から在宅終末期医療まで総合的に臨床経験を積み、現在は鳥取県江府町を拠点に、産官学民連携でプラネタリーヘルス地域モデル(鳥取江府モデル)構築を行う。地球環境と腸内環境を微生物で健康にするプラネタリーヘルスの理論と実践の書『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)が話題。

(次回「地域創生医 桐村里紗の プラネタリーヘルス」は4月初旬に掲載予定です)