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味の素とダノン、酪農由来の温室効果ガス削減へグローバル協業開始

味の素(藤江太郎社長)は、フランスのDanone (Antoine de SaintAffrique CEO、以下ダノン)と、同社の生乳サプライチェーンから排出される温室効果ガス(以下GHG※1)を削減するためのグローバルでの戦略的パートナーシップを開始した。牛用アミノ酸リジン製剤のトップブランドである味の素の「AjiPro®-L」を活用し、飼料中のアミノ酸を乳牛が効率的に吸収することで、飼料コストを大幅に削減しながら、乳牛の生育に関わる幅広いGHGの排出量削減を実現するもの。ダノンの「パートナー・フォー・グロース」プログラムの一環として両社で協働していく。

※1)Greenhouse Gasの略


「AjiPro®-L」の特長

世界的な人口増に伴い、たんぱく質の需要が高まる中、たんぱく源としての生乳・牛肉の持続可能な生産が注目されている。牛の糞尿やげっぷに含まれるメタン、一酸化二窒素など、牛の生育に関わるGHG排出量は全世界のGHG排出量の約9.5%※2を占め、地球温暖化の原因の一つとして解決すべき喫緊の課題となっている。また、昨今の世界的な飼料高騰などによって酪農家の経営が圧迫される中、GHG排出量の削減を推進しつつも、飼料コストを軽減させるソリューションが必要となってきた。

※2)出典: Food and Agriculture Organization「Livestock solutions for climate change」 https://www.fao.org/3/I8098EN/i8098en.pdf


今回、ダノンは「AjiPro®-L」を活用したソリューションを採用し、酪農におけるGHG排出量削減を目指す。「AjiPro®-L」は味の素独自の製造技術により、通常では牛の小腸まで届きにくい必須アミノ酸のリジンを栄養として体内に効果的に届けることができる。酪農家の飼料コストを削減しながら、乳牛の生育に関わる様々なGHG排出量を削減する上で重要な役割を果たす。

一般的に牛の飼料として使用される大豆粕は高たんぱくながら高価格で余分なアミノ酸を多く含むが、「AjiPro®-L」を使用することで大豆粕などの飼料を減らしながら不足するアミノ酸を補い、飼料中のアミノ酸バランスを整えることができる。その結果、生乳の生産量を維持しながら飼料コストを削減すると同時に、大豆粕などのたんぱく源となる飼料の栽培・調達時に発生する二酸化炭素(CO2)を約20%※3、糞尿から発生する余剰な窒素由来の一酸化窒素一酸化二窒素(*2024年9月20日訂正)(N2O)を約25%※3削減することが可能となる。

さらに味の素は、in-vitro(インビトロ)試験により、げっぷに含まれるメタン(CH4)を抑制するメタン削減製剤の削減効果が、「AjiPro®-L」でアミノ酸バランスを整えた飼料と組み合わせて用いることで30%程度※4増幅することを確認しており、「AjiPro®-L」の活用は、げっぷ中のメタン排出量削減への貢献も期待できる。

※3)年間牛1頭あたり、当社算定。農家の飼料設計等により削減量は変化。
※4)代表的なメタン削減製剤を使用した場合。当社算定。


味の素の執行役常務 バイオ&ファインケミカル事業本部長 前田 純男氏は、「当社は、アミノ酸に関する専門知識を活かし、ダノンをはじめとするパートナー企業、酪農・畜産業界全体の飼料コストとGHG排出量の削減に貢献するため、『AjiPro®-L』を活用したソリューションを開発しました。私たちは、『アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する』というパーパスに沿った戦略を通じてネガティブインパクトを緩和し、ポジティブインパクトの拡大に貢献していきます」とコメント。

またダノンのChief Procurement OfficerであるJean-Yves Krummenacher氏は、「私たちは、味の素㈱のようなパートナーと協働し、酪農家に対してGHG排出量の削減と利益の改善という二重の効果をもたらすソリューションを増やしていきます。その結果、酪農家のレジリエンスが高まります」とコメントしている。

すでに両社はグローバル戦略パートナーシップに関する覚書(MoU)を締結しており、スペイン、ブラジル、米国にあるダノン契約農家や、エジプト、モロッコにあるダノン自社農家での導入に向けた取り組みを進めている。また味の素は、「AjiPro®-L」ソリューションのGHG排出削減量を定量化するツールの組み込みなどにおいてもダノンとの協働を進めるとしている。

■「AjiPro®-L」について
味の素が2011年より販売している牛用アミノ酸リジン製剤。通常、牛の第一胃(ルーメン)でリジン(必須アミノ酸の一つ)は分解されてしまうため、栄養として吸収されることが難しいところ、当社独自の製造技術によってリジンを栄養として吸収可能な小腸まで効率良く届けることができる。科学的知見に裏付けられた生産性の向上と飼料効率の改善をもたらす「AjiPro®-L」は、牛用アミノ酸リジン製剤で世界1位の市場シェア(当社調べ)を有している。

詳しくは、 http://www.ahs.ajinomoto.com/products/feed/ajipro-L.html をご覧ください。