健康寿命延伸時代の到来に伴い、ヘルスケア産業の振興へ多くの企業が参画している。生活者の間に、自らの健康を自らが管理するヘルスケアニーズが高まり、健康関連商品の需要が増えてきたからだ。“未病と予防”に関連した商品開発が進み普及ルートも様々だが、近年、生活者の健康ステーションとしてのドラッグストアが、健康関連商品販売に取り組むケースが目立ってきた。そこで、市場が拡大する健康関連商品をドラッグストアへ提供する中間流通業のアルフレッサ ヘルスケア代表取締役社長の西田 誠氏と、商品開発に携わる山本漢方製薬代表取締役社長の山本 整氏に、『健康寿命延伸時代における商品開発』について語っていただいた。(司会・進行役:ヘルスケアワークスデザイン代表・佐藤健太/文:流通ジャーナリスト・山本武道)
―― 健康寿命延伸時代の到来に伴い、経済産業省ではヘルスケア産業課を設置して高まる国民の健康創造ニーズに向けたビジネス振興に力を注いでいます。企業の商品開発のキーワードは、自身の健康は自らが管理するヘルスケアですが、この言葉をどのように受け止めておられますか?
西田 ヘルスケアといいますと、当社の経営理念でも掲げており、当社は“人々の精神(こころ)と体(からだ)のトータルヘルスケア企業”として、様々なヘルスケア関連商品を、ドラッグストアや調剤薬局などの販売店さまに提供してきています。特に年2回、当社が主催する展示会(ライフサポートフェアとソリューション提案商談会)では、毎回、販売店さまの利益確保に結びつく多くの新しいヘルスケア関連商品がデビューしており、これらの商品はヘルスケア産業の振興を目指し上市されました。
ヘルスケアは、国民の健康創造ためのキーワードでもあり、産業界ではヘルスケアという領域は無視できないビジネスでもあります。ただヘルスケア領域は、OTC薬、化粧品、機能性表示食品などの健康食品、女性向けの健康商品(化粧品やフェムケアなど)、健康雑貨等々、取り扱う商品の幅が広い。当社としては、生活者のヘルスケアニーズに対応する商品に健康促進に役立つ情報を添えて販売店さまに提供するのが、ヘルスケア分野における中間流通業としての当社の役割と思い、“トータルヘルスケア”商品の普及に取り組んできました。
山本 西田社長がいわれる通り、ヘルスケアはビジネス振興のための重要なキーワードでもあります。当社は創業以来、大切にしているのが“未病と予防”であり、「病気になる前から健康管理をしましょう」という東洋医学の考え方です。
そのためにも、健康管理のために継続してヘルスケア関連商品を利用していただくことがなによりであり、①商品に価格以上の価値を提供する、②飽きのこない美味しさにこだわる、③お客さまに喜んでいただく商品の開発とサービスの三つの約束を掲げ、真摯な商品づくりに取り組んできました。
商品開発については、近年、難しい時代になったと思います。かつてテレビ番組で健康関連商品が取り上げられると、紹介された商品がたちまち売り切れるケースが続出し、製造業としては、すごく楽な時代がありました。しかし今は、モノも情報も溢れている状況下で、商品開発はそう簡単にはいきません。まして毎日、国民に向けてテレビ通販で大量の宣伝が展開されていますから、競合するような商品づくりはできませんし、お客さまが求めている商品を、求めやすい価格で提供なければなりません。これは我々としては、“永遠のテーマ”でもあります。
今や、自らの健康は自らが守るセルフケアの時代となり、通販での利便性もさることながら、専門家からきちんとした情報を入手し選ぶ時代になりました。ですから やっぱり味のいいものを作りたいという思いが強く、中でもこだわったのが原料です。添加物をいっさい使用せずに無添加で飲みやすい商品の開発に携わってきました。
西田 高齢社会の到来に伴い生活習慣病が多発し、国民総医療費は高騰を続けています。現行の医療制度を堅持するためにも、セルフメディケーション(自己治療)によるOTC薬の活用、そしてセルフプリベンション(自己予防)といった“未病・予防”を中心としたヘルスケア関連ビジネスの振興が不可欠な時代が到来していますから、こうした生活者のヘルスケアニーズに対応した健康関連商品の開発は重要です。
当社では、先ほど申し上げた年2回の展示会を通じ、ドラッグストアさまを始めとした販売店の皆さまに健康に関する多くのご提案を行っております。先月7月23日には、ドラッグストアのヒト・モノ・情報を顧客と繋げる『Connection』と題してソリューション提案商談会を開催しました。
一つ目のテーマは、Customer creation(顧客創出)〜顧客の悩み解決の売り場づくり、二つ目が、Customer health management(顧客の健康管理)〜顧客の疾病予防と健康づくり、三つ目は、Customer attracting(顧客来店目的)で、それぞれのテーマの中に商品をはめ込み、来場されたドラッグストアや調剤薬局の経営者さま、バイヤーさまが新しい気付きを得て、売り場づくりのヒントにしていただくことを目的にしました。
健康寿命延伸時代の今、取扱店さまの利益を確保できる商品と健康に関わる情報を提供することはとても重要ですから、当社の展開で行っているような、様々な悩みにまつわる課題を解決していくご提案は、生活者のニーズに応えていくヘルスケアビジネス振興には大事なことでもあります。
従って、ヘルスケアビジネス振興において、近年では健康という二文字を核として「モノ」から「コト」へといわれてはいますが、私自身は逆に「コト」から「モノ」に繋げるのも重要だと考えています。これからは、この両輪の相乗効果によって、高まる生活者の健康創造に貢献するビジネスの展開は欠かせません。
ヘルスケアという概念からすると、山本漢方さまは、大麦若葉、健康茶、漢方薬、最近では、MCTオイルも取り扱っていて、テレビCMも放映され大いに生活者の関心を集められています。“美と健康”、予防ニーズに応える商品を数多く生み出し、ドラッグストアさまをはじめとした多くの販売店さま、そしてその先にいらっしゃるお客さまにも信頼されるヘルスケア企業として歩んでおられます。
山本 当社では、お客さまに喜んでいただき、「健康づくりに毎日飲まなければ…」という習慣になるような商品を作り続けております。近年では、健康産業界ではヘルスケアという言葉が定着し、多くの産業界でもヘルスケアやウエルネスをキーワードとした商品を開発し市場にデビューさせていますが、当社では、早くから国民のヘルスケ&ウエルネスニーズの高まりに対応して、とことん味にこだわり、愛用しやすく、お求めやすい価格で、それになんといっても人々の健康管理に役立つ日々の必需品として、数々のヒット商品を生み出すことに専念してきました。
“トータルヘルスケアの時代”が到来したことによって、商品開発の幅は確実に広がってきました。当社は1977年創業の原点となる商品は、漢方の民間薬でしたが、数々の健康茶を開発し、そして2000年には大麦若葉の新芽を水に溶けやすい超微粉末にし“おいしい青汁”として開発したのが『大麦若葉粉末』でした。
この商品が市場にデビューしてから24年が経過した現在では、ドラッグストアさまの店頭での売れ行きも毎年上昇して、15年連続青汁売上げメーカーNO.1商品に成長しましたが、その背景には、アルフレッサ ヘルスケアさまの絶大なご支援があったからに他なりません。
西田 日々の食生活に、いつでもどこでも気軽に愛用できる商品はロングランで売れているケースは多いです。実は私自身も山本漢方さまの青汁を、当社の専売商品でもある『薬剤師おすすめのアルカリ天然水』に入れて、まず朝起きたら飲み、昼も夜も食事の際には欠かさず継続して愛飲しています。
青汁は、まさにドラッグストアさまの店頭からお客さまに推奨していただきたい商品の一つです。続けて飲んでいただくことによって、“明日の健康に繋がる”商品といえますが、これを、お客さまにどう伝えていくか。SNSであったり、POP広告であったり、CMであったり、DMであったり、デジタルサイネージであったり…。いろいろな方法があります。特に山本漢方さまがテレビで放映されているCMはユニークですね。
当社は、創業以来、培ったノウハウを駆使して、ヘルスケア産業の活性化とお客さまのヘルスケアリテラシーを上げていくことが、当社のヘルスケア企業としての重要な使命の一つだと思っています。当社の商談会には、毎回多くの販売店の方々にご来場いただいていますが、あのような場でいろいろな商品と情報に出会い、気付きを得ることによって、店頭におけるヘルスケアの役割に対する意識が、今まで以上に向上していくことを願っております。
高齢者人口が増大し健康寿命延伸時代の到来に伴い、「自分の健康は自分で守る」ためのモノ(商品)と情報、そしてサービス(心)を提供する場が、ドラッグストアさまの店頭であり、ヘルスケアステーションでもあります。そういう意味では、ヘルスケア産業に携わる製造企業さま、販売店の皆さま、当社も含めて生活者の健康創造へ取り組まなければなりませんね。
山本 その通りですね。『大麦若葉粉末』は、多くの皆さまのご協力をいただき、15年連続で青汁売上げメーカーNO.1として評価されましたが、今まで飲んでおられない方々にも愛用していただくためにも、その良さをさらに知っていただくよう、宣伝活動を強化したいと考えています。そのために、これまでテレビCMを放映してきましたが、日清オイリオさまと共同で開発した、BMIが高め方の方のウエスト周囲径の減少、体脂肪+内臓脂肪を減らす機能性表示食品『MCT大麦若葉粉末』のテレビCMも始まりました。
CMは、できるだけ多くの国民の皆さまに、自らの健康管理のサポート役としての商品であるという気付きであったり、お取り扱いをいただいておりますドラッグストアさまや調剤主力型薬局さまの推奨販売に結びつけていただければと放映しておりますが、これからも積極的な展開を考えています。
西田 商品開発は、生活に密着するようなものであること、そして生活者の皆さまの日々の健康創造に役立つことは必須条件ですが、すでに市場には数多くの商品が出回っておりますから、難しいなとは思います。どこにヒントがあるかもわかりませんから…。ですが、当社には数々の専売商品があります。これらは自社で独自に製造しているものではなく、山本漢方さまをはじめ多くの企業の皆さまのご支援をいただき取り扱うことができるようになりました。
こういう商品は面白いな!と思うことはたびたびありますが、山本漢方さまは乳酸菌やMCTオイルとのコラボ商品など、市場のニーズに対応し、いつもタイミングよく新しい商品を出していますね。その際には、事前に調査をされて商品を開発されているのですか?
山本 別に調査はしておりませんが、いろいろと入手した情報、例えば書籍を読んでいて、人が気付かないようなことでも、自身、「えっ!」と気付く部分があったりするんですよね。そして、そのキーワードは「常に国民の健康創造に役立つこと」です。私自身、スーパーやドラッグストアに買い物に行くことは多いのですが、仕事柄といいましょうか、いつも店内を2周回まわるようにしています。それは、1周目に回った際に気付かなかったことが、2周目なると新しい気付きがあるからです。
ある日、大型スーパーに買い物に行った時に、ふと目についたのが山積みされていたMCTオイルでした。「これは売れている商品」だと思い、さっそく買いましたが、いざMCTオイル飲もうと思ったところオイルでしょう、そのまま飲むわけにはいかず、そこで、どうやって日々の食生活に使用できるかを考えました。
サラダにかけるといっても、私自身、サラダは毎日食べていませんから、ならば毎日愛用するのには、いったいどうしたらいいのだろうと思って、試しに当社の青汁とともに飲みました。
それが、なかなか組み合わせがよくて、「これいいな」と思っているうちに、偶然ですが日清オイリオさんから連絡がきました。そこで担当の方にお会いして、機能のあるMCTオイルの説明をお聞きし、「これは面白い」と思ったのが、日清オイリオさんのMCT(中鎖脂肪酸油)と当社の大麦若葉をコラボさせた機能性表示食品『MCT大麦若葉粉末』を商品化するきっかけでした。
商品の開発は、数年をかけて商品化を計画しても、私が期待する商品作りはなかなか進まないことが多いのですが、日清オイリオさんとコラボさせていただいた『MCT+大麦若葉粉末』は、まさに阿吽の呼吸で、「これやってみよう」となって、とんとん拍子に共同開発の話がまとまりました。
西田 確かに、長い年月を費やして開発しヒットする商品もあるでしょうが、どちらにせよ作る難しさもあるし売る難しさもある。先ほどの山本漢方さまのお話のように、市場のニーズを先取りして開発していただいた差別化商品を、当社でいかに育てていくか。その商品を、日々の営業活動や年2回の展示会を通じ、広く販売店さまにお届けし、ともに普及させていくのが当社の役目です。
山本漢方さまは、15年連続青汁売上メーカーNO.1の座を守り続けています。しかし15年ともなると、料理で例えるならば、ずっと同じレシピだと消費者にとって飽きがくることもあるかもしれません。そこで何かスパイスを工夫するとか、15年続いているということは、何か秘訣があるのでしょうか?
山本 そうですね。商品は開発すれば即売れるという時代ではなくなっていますし、ブーム品っていうのは上がるのは早いけど落ちるのも早かったり…。商品開発は本当に難しく何度か失敗はしていますが、せっかく開発してもどのようにして販売していくか難しさもあります。当社では青汁売上げメーカーNO.1商品の座を維持するためにも、カスタマーファーストじゃないけど、時代の移り変わりが激しい昨今、お客さまがどんなことを求められているのか常に考えてきました。
当社では、テレビCMの放映とともに、当社が長年にわたり取り組んできた販促活動を実施しています。これは、製品パッケージ内にチラシとサンプルを封入し、いつも当社製品を購入し愛用していただいているお客さまに向けて行っているものでして、購買に結びつくケースは少なくありません。こうした地道な努力がモノ作りには不可欠だと思っております。
西田 そういった意味でも、当社の経営理念でもある“人々の精神(こころ)と身体(からだ)のトータルヘルスケア”が、これからは重要なキーワードとなります。ドラッグストアさまは、幅広い“トータルヘルスケア”に関わる様々なモノ・コトを提供するステーションですから、地域住民の健康創造へ、さらに高まるヘルスケアニーズに貢献していただきたいですね。
すでにドラッグストアさまは、健康意識の高い方々の日常生活には欠かせないインフラ機能のある業態として支持されています。広い店内には健康と美、セルフメディケーションやセルフプリベンションニーズに対応した多くのヘルスケア商品があり、食品の取り扱いも増え、さらに処方箋調剤機能もある、まさに地域に住む人々の日常生活に欠かせないヘルスケアステーションです。
その証拠に現在、総人口の30%近くを占める65歳以上の高齢者をターゲットとした店づくりが加速し、従来の郊外型の出店から近年では商店街や駅近、繁華街、そして住宅街にあっては高齢者の方も歩いていける場所に出店するケースが相次いでいます。健康寿命延伸時代の到来に伴い、ドラッグストアさまに対する期待は非常に大きいです。
その中で、メーカーさまが作られた美と健康、予防の“トータルヘルスケア”商品群を、いかにドラッグストアさまにご提案し扱っていただいていくか。生活者の消費意識が、単に商品やサービスを入手するだけでなく、商品を購入したことで得られる健康という価値の創造へ変革しています。当社では、生活者の間に、“自分の健康は自らが守る意識”が芽生え、さらに高まっていることを踏まえ、これからも商品の付加価値創造を続けていきたいと考えています。
山本 ヘルスケア関連商品を普及する場の一つとして、オンラインが急増していますが、むろんそうした販売ルートは無視できません。ですが日々、健康に不安を抱えている人々が行く先は、より健康になるための情報を添えて商品を提供する場であるリアル店舗でしょう。私自身も、しばしばドラッグストアさまに行き、買い物の楽しさを体験しています。
西田社長が、よくおっしゃられていますが、セルフメディケーション、セルフプリベンションは、国民生活に重要な言葉です。日々、多くの国民の期待に応えられるよう、私もドラッグストアさまの機能に期待しております。商品開発にあたっては、原料にもこだわり、自社工場で製造しヘルスケアニーズに対応した新しい商品作りに、毎年チャレンジしてきました。例えばMCTオイルと大麦若葉、乳酸菌と大麦若葉といった商品開発は、自社だけではできません。そこはコラボレーションですね。
西田 企業では、中期3年計画や5年計画を策定して、その目標に向かってチャレンジしますが、こと自身については、10年後の自分がどのようになっているかは正直なところ分かりません。しかし10年後に自身が健康であるためにも、今から自身の健康を管理する必要はあります。体に良いものを愛用することで、10年後の健康に繋がる。青汁であったり、サプリメントであったり…将来に向けての投資ですね。
山本 ドラッグストアさまは、健康相談に対応していただける場でもあります。お客さんが、「また、あの店に行きたい」といわれるような店であり、たくさんの商品が取り揃えられてはいますが、ヘルスケアスーションとして活躍してほしいと願っています。そのためにも、当社では地域に住む人々の健康管理をサポートする商品の開発へさらに全力を注ぎます。
<取材を終えて>
国民総医療費が相変わらず高騰し、介護分野も含めると50兆円を超している。その対策のキーワードがヘルスケアだ。ではなぜ今、ヘルスケアなのか。経済産業省にヘルスケア産業課が誕生し、企業もヘルスケアビジネス振興への取り組みを強化するようになった。現行の医療保険制度を維持しつつ、自らの健康は自らが管理する時代の到来によって、国も企業も、流通業、小売業なども、協働してヘルスケア産業の振興が不可欠になったからだ。
対談の中心は、国民の健康創造をサポートする商品開発だっただけに、話は尽きなかった。営業に携わり現場を熟知し商品開発にも期待している西田社長、買い物に行く店舗でも新しい商品開発のヒントを得る、モノ作り一筋の山本社長との共通点は“国民の健康創造”にあった。
その健康創造をサポートする商品に情報を添えて、来店客に提供するドラッグストアは、今や9兆2000億円市場を形成するまでに成長した。その背景には、健康ステーションとして、地域住民のヘルスケアニーズに対応してきたことが挙げられる。創業当社は30㎡だった小さな薬局が、やがて上場企業として大きく飛躍したのも、すべては“地域住民の健康創造”だった。
西田、山本両社長の共通点も“国民の健康創造”。国が産業を振興するヘルスケアビジネス。経済産業省によれば、健康保持・増進を中心としたヘルスケア産業市場は、2030年に30兆円と見込まれているだけに関係企業の期待は大きい。ヘルスケア産業は、“健康”の二文字を横軸にしたビジネスで潜在需要も大きい。アルフレッサ ヘルスケアと山本漢方製薬のこれからの活躍に期待したい。